
近茶流宗家。1942年、先代宗家・柳原敏雄の長男として東京に生まれる。東京農業大学客員教授。儀礼文化学会常務理事。東京・赤坂にて「柳原料理教室」主宰。江戸料理への造詣が深く、江戸料理研究家としても活躍中。著書に『こだわりの鍋料理』(成美堂出版)、『柳原一成の和食指南』(NHK出版)など多数。
「おでん」は、江戸時代中期に江戸の町で屋台料理として生まれ発展した鍋料理です。その原型は、豆腐に味噌をつけて焼いた「田楽」で、豊穰を願って棒に乗って跳ねて踊る「田楽舞」と、串を刺した豆腐の形が似ていることからその名がついたといわれます。
当初は、豆腐やこんにゃくを串に刺して味噌を塗って焼いたものでしたが、江戸後期に入り、醤油の生産が盛んになるにつれて、醤油味の出汁で煮込む形に変化していきます。しっかりとした味付けは江戸料理の伝統ですが、それは江戸の水特有のクセを消すための知恵でもありました。鍋一つで簡単に作れ、手軽につまめる「おでん」は、いわば江戸っ子のファストフードで、冬場に燗酒や茶飯とセットで楽しむのが定番だったようです。
「おでん」はやがて関西にも伝わりますが、関西ではそれまでの味噌仕立てのものと区別するため「関東炊き」の名称で広まります。現在、「おでん」といえば、醤油仕立てを指すのが一般的ですが、今もこんにゃくの味噌田楽を「おでん」と呼ぶ地域もあります。
鍋料理としての「おでん」の魅力は、煮込むうちに出汁と種の旨みが絡み合った特有の美味しさにあります。そもそも日本料理というのは「水の料理」で、良質な水に恵まれたからこそ、煮る、炊く、蒸す、茹でるといった調理法が発達しました。鍋料理はその原点であり、「おでん」は出汁で煮る「煮汁鍋」のルーツといえるものです。
そして、もう一つ大きな特徴は、全国的に親しまれている料理という点です。関東は濃口醤油の甘辛い味付け、関西は薄口醤油とみりんによる薄味、名古屋は味噌を加えるなど、味付けに地域性が表れたり、使う素材にも地方色が表れるのも面白いところ(左表)。寒い夜、湯気の立つ鍋を覗きながら、珍しいおでん種の美味しさに出会ったり、あれこれ迷ったりするのも、「おでん」の楽しさでしょう。
素材のハーモニーを楽しみながら、様々な栄養を効率よく摂れる点も、鍋料理の良いところです。
「おでん」に欠かせないのは練り物。特に青魚を使ったものは、タンパク質に加えて、EPAやDHA、カルシウムが多く含まれています。また、豆腐やがんもどきなどの大豆加工品にはビタミンE、昆布にはミネラル、こんにゃくには食物繊維が豊富に含まれています。
お浸しや酢の物などの小鉢を加えれば、さらに栄養バランスも優れた料理といえるでしょう。手軽に作れ、心まで温めてくれる美味しさは、特に寒い夜にはうれしいものです。ちょっとした工夫で、味もぐっとアップしますので、この冬、ご家庭で美味しい「おでん」を作ってみませんか。
※鍋料理は“柳原式鍋物分類”で、出汁を用いず真水で炊く「水鍋」、味付けした出汁で煮る「煮汁鍋」、濃い味の割り下や味噌だれで煮る「すき鍋」の3系統に分類しています。

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出汁のよく出るつぶ貝や、たらの白子などを加える地域が多い

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小麦粉が原料のちくわぶや、軟骨入りの練り物、すじがよく入る

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青魚のすり身を使った黒はんぺんは、つみれに近い味わいで人気

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生湯葉や、海老芋、水菜などの京野菜をふんだんに使うのが特徴

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串に刺した牛すじや、鯨の皮を乾燥させたコロ、真ダコは定番

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魚を骨ごとミンチにした揚げかまぼこのじゃこ天は、欠かせない食材

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餃子を魚のすり身で包み揚げした餃子巻きや豚骨、鶏肉を入れる地域もある

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豚を無駄なく食べる沖縄らしく、豚足、ソーセージなどを一緒に煮込む

昆布とかつお節を使って作りましょう。風味が格段に良くなります。後からつぎ足しができるように、たっぷりと作るのがポイント。出汁に使った昆布は、切って結び、おでん種にします。
大根は、水が入った鍋に米粒を小さじ2ほど加え、水から煮ておきます。こうすると臭みや辛みがとれて、まろやかな味になります。さつま揚げなどの揚げ物も熱湯にくぐらせて油抜きすると、味がしみやすくなります。
なるべく大きな鍋に出汁を張り、材料を入れてとろ火でゆっくり煮込みます。長く煮ると味が落ちるはんぺんは食べる間際に加えます。 残ったおでんを翌日いただく時は、出汁を一度濾(こ)す。



