「ビタミンK」の働きとは?
役割や含まれる食品、一日の摂取量について解説

ビタミンKは、血液凝固や骨の形成に関わる重要な栄養素です。しかし、普段の食生活で必要な量が摂れているのか、よくわからない方も多いでしょう。

この記事では、ビタミンKの具体的な働きやビタミンKを多く含む食べ物、一日の摂取量について解説します。

1.ビタミンKとは

ビタミンKは、脂溶性ビタミンの一種で、自然界ではフィロキノンと呼ばれるビタミンK1と、メナキノンと呼ばれるビタミンK2の2種類が存在します。フィロキノンは海藻類や緑黄色野菜、植物油、緑茶などに含まれ、メナキノンは食べ物の他に腸内細菌によっても合成されるのが特徴です。

メナキノン類のなかでも、動物性食品に多く含まれるメナキノン-4と、納豆菌によって合成されるメナキノン-7は、栄養上で特に重要といえるでしょう。

ビタミンKは、血液凝固因子を活性化させる働きを持ち、血液の凝固を促進します。またカルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用もあり、骨密度を維持し骨折を予防するために有効ともいわれています。

2.ビタミンKのおもな働き

ビタミンKは、肝臓でプロトロンビンなどの血液凝固因子を活性化し、血液の凝固を促します。具体的には、ビタミンKが、たんぱく質にあるグルタミン酸をγ-カルボキシグルタミン酸に変換する際の補酵素として作用することで、血液凝固因子はカルシウムとの結合が可能となります。それによって、正常な血液凝固が行なわれるようになるのです。

また、骨に存在するビタミンK依存性たんぱく質のオステオカルシンを活性化し、骨の形成を調節するのもビタミンKの働きの一つです。

3.ビタミンKが不足すると生じうる症状

ビタミンKが不足すると、消化器官からの出血、鼻血、血尿、月経過多、出血が止まりにくくなるなどの症状が発生します。また、慢性的なビタミンK不足は、骨折を招きやすくなるとされるため注意が必要です。

通常の食生活でビタミンK欠乏症が発症することは非常にまれですが、以下の場合にはビタミンK不足が起こりやすくなるでしょう。

  • ・長期間にわたる抗生物質の投与によって、腸内細菌のビタミンK合成量が減少したとき

  • ・脂肪吸収不全

  • ・肝臓病 など

4.ビタミンKの一日摂取目安量

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020版)」によると、ビタミンKの摂取基準は下表のとおりとなっています。

【ビタミンKの食事摂取基準 (μg/日)】

性別 男性 女性
年齢等 目安量 (μg/日) 目安量 (μg/日)
0~5ヵ月 4 4
6~11ヵ月 7 7
1~2歳 50 60
3~5歳 60 70
6~7歳 80 90
8~9歳 90 110
10~11歳 110 140
12~14歳 140 170
15~17歳 160 150
18~29歳 150 150
30~49歳 150 150
50~64歳 150 150
65~74歳 150 150
75歳以上 150 150
妊婦 150
授乳婦 150


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2019年の国民健康・栄養調査によると、ビタミンKの平均摂取状況は男性が246μg/日、女性が235μg/日です。男女ともに、目安量を大きく上回っているため、不足を心配する必要はほぼないといって良いでしょう。

4-1.ビタミンKの過剰摂取について

ビタミンKのうち、フィロキノンとメナキノンは過剰摂取による毒性はないと報告されている安全性の高い物質です。しかし、自然界には存在しない合成品であるメナジオン(ビタミンK3)は、大量摂取すると身体に悪影響をおよぼすと考えられており、使用が認められていません。

5.ビタミンKを多く含む食べ物

自然界に存在するビタミンKは、フィロキノンとメナキノンの2種類です。
フィロキノンは海藻、緑黄色野菜などに多く含まれ、また、メナキノンにはおもに、動物性食品に分布するメナキノン-4、納豆菌により合成されるメナキノン-7があり、食べ物にはこれらが多く含まれます。

そのため、フィロキノン、メナキノン-4、メナキノン-7を合わせてビタミンKと呼ぶのが一般的です。ここで紹介する食べ物のビタミンK含有量は、フィロキノンとメナキノン-4の合計を示しています。

5-1.植物性食品

ビタミンKを多く含む植物性食品は下表のとおりです。

食品名 1食あたり の重量(g) ビタミンK(μg)
1食あたり 100gあたり
ほうれん草(ゆで) 80 256 320
小松菜(ゆで) 80 256 320
納豆 40 240 600
ブロッコリー(電子レンジ) 50 110 220
チンゲンサイ(油いため) 80 88 110
はくさい(生) 100 59 59

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

納豆は100gあたり600μgという豊富なビタミンKが含まれています。しかも、1食(40g≒1パック程度)の摂取で摂取目安量を達成できるので、その手軽さもうれしいポイントでしょう。ほうれん草(ゆで)や小松菜(ゆで)の緑黄色野菜もビタミンKが豊富で、100gあたりの含有量は320μgとなっています。

5-2.動物性食品

ビタミンKを多く含む動物性食品は下表のとおりです。

食品名 1食あたり の重量(g) ビタミンK(μg)
1食あたり 100gあたり
鶏もも肉 皮つき(ゆで) 100 47 47
鶏むね肉 皮つき(焼き) 100 44 44
鶏ひき肉(焼き) 50 21 41
焼き鳥缶詰 85 18 21
ツナ缶 35 15 44

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)
※ツナ缶:まぐろ類缶詰(油漬) 

動物性食品では、皮付き鶏もも肉(ゆで)は100gあたり47μg、皮付き鶏むね肉(焼き)は100gあたり44μgのビタミンKを含んでいます。このように鶏肉は比較的ビタミンKが豊富といえるでしょう。

活動的な毎日にビタミンKを

ビタミンKは血液の凝固を促したり、骨の形成を調節したりする重要な栄養素です。通常の食事を摂っている場合、不足することはほとんどありません。しかし、肝臓病や脂肪吸収不全などの疾患がある方、新生児、乳児などはビタミンKが不足することがあるため注意が必要です。

一方、過剰摂取による悪影響が認められたのは合成品のメナジオンのみで、自然界に存在するフィロキノン・メナキノンには認められていません。そのため、食事からビタミンKを摂取する分には、ほぼ心配ないでしょう。

ビタミンKは、植物性食品であればほうれん草や小松菜、納豆などに、動物性食品であれば皮付きの鶏もも肉や鶏むね肉などに豊富に含まれています。活動的な毎日を維持するためにも、普段の食事に積極的に取り入れましょう。

監修者情報

氏名:松繁 治(まつしげ・おさむ)
2009年から整形外科医として病院に勤務。 現在はおもに整形外科中心に外来業務・手術業務などにあたる。 専門は脊椎手術・脊椎内視鏡手術など。