咀嚼に関わる筋肉の種類やトレーニング方法について解説

「最近、表情が乏しくなった」「硬い食べ物は避けるようになった」など、以前との変化を感じていることはないでしょうか。

近年は、ファーストフードなどでやわらかい食べ物の需要が増えたことから、噛む回数が以前よりも減少傾向にあります。噛む回数が減ると、咀嚼に関わる筋肉の衰えにもつながるのです。

今回は、咀嚼に関わる筋肉の種類や鍛え方、表情筋の役割について解説します。いつまでも、イキイキとした表情でおいしく食事を楽しめるように、理解を深めていきましょう。

1.咀嚼に関わる筋肉「咀嚼筋」について

咀嚼とは、食べ物をしっかりと噛んで味わうことです。咀嚼をする際には、咀嚼筋・咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋・舌骨上筋が働いています。

これらの筋肉はどういったものなのか、見ていきましょう。

1-1.咀嚼筋

咀嚼筋とは、横紋筋からなる、下あごを動かす骨格筋の一種です。

歯で食べ物を噛んだり、すり潰したりできるのは、自分の意志によって下あごを上下左右に動かせるからです。このような咀嚼筋の動きを「あご運動」や「咀嚼運動」といいます。

1-2.咬筋

咬筋は頬と耳の間にあり、歯を嚙みしめたときに硬くなる筋肉です。食べ物を強く嚙むときや、歯を食いしばるときに働きます。

1-3.側頭筋

側頭筋は、こめかみ辺りにある扇の形をした筋肉です。下あごを後方に引いたり、口を閉じたりするときに働きます。

1-4.内側翼突筋

内側翼突筋は、下あごの内側にある筋肉です。咬筋や側頭筋とともに働き、口を閉じるときに働きます。

1-5.外側翼突筋

外側翼突筋は、下あごの外側にある筋肉です。咀嚼筋のなかで最も小さく、下あごを前に突き出したり、口を開けたりするときに働きます。

1-6.舌骨上筋

舌骨上筋は、下あごの内側にある筋肉です。口を大きく開けて食べ物を口に入れるときに働きます。

2.咀嚼に関わる筋肉「表情筋」について

表情筋は、頭皮・目・鼻・頬・口の周りの皮膚直下にある、表情を作る薄い筋肉です。皮膚のすぐ下にくっついているため、「皮筋」とも呼ばれます。顔面神経に支配され、頬・上唇・下唇の運動に関わっているのです。

例えば、頬と唇を引き締めて食べ物が口からこぼれないようにしたり、入れ歯を保持したりします。このほかに、口の中の食べ物を奥に押し込む動作も、表情筋の一部の働きによるものです。

3.咀嚼に関わる筋肉を鍛える方法とは?

咀嚼に関わる筋肉を鍛えれば、食べ物が鼻に流れ込んだり、食べこぼしたりするのを防げます。

また、よく噛むことで血流が増加し脳に栄養と酸素が行き届き、脳細胞の活性化にもつながるほか、唾液がよく出るようになり、おいしく安全に食事ができるようになります。

咀嚼筋を鍛える方法を2つ紹介するので、ぜひ実践してみてください。

3-1.咀嚼に関わる筋肉を鍛える食事のポイント

食事の際に以下の点を意識すると、咀嚼に関わる筋肉を鍛えられます。

  • ・一口で30回以上噛む

  • ・一口ごとに箸をおく

  • ・少量ずつ口に入れて噛む

  • ・歯ごたえのある食材を食べる

  • ・食材を少し大きめにカットする

  • ・食材を少し硬めに火を通す

  • ・スマートフォンやテレビを見ながら食事をしない

3-2.ガムを使った咀嚼訓練

咀嚼に関わる筋肉は、ガムを使って鍛えることもできます。ガムを噛む際には、ぜひ以下の3点を意識してみてください。

  • ・姿勢を正す

  • ・唇を閉じたまま、よく噛む

  • ・ずっと同じ部分でガムを噛まず、左右均等に噛む

上記を意識しながら、一定のリズムでまず2分間噛み、その次は自由に3分間噛みましょう。これを、朝・夕の一日2回行ないます。

よく噛んでいつまでもイキイキと食事が楽しめる毎日を

咀嚼に関わる筋肉には、咀嚼筋と表情筋があります。近年は、ファーストフードなどのやわらかく、スピーディーに食べられる食事が好まれる傾向にあることから、昔よりも咀嚼回数は減っているのが現状です。

噛む回数が減ると咀嚼筋や表情筋は衰えてしまい、食事が困難になったり表情が乏しくなったりしてしまいます。その結果、コミュニケーション力が低下して、閉じこもることが増えるケースもあるでしょう。

今回紹介した方法を参考に、咀嚼に関わる筋肉を鍛えて、いつまでも表情豊かに、そして食事を楽しめる自分をキープしていきましょう。

監修者情報

氏名:福田尚美(ふくだ・なおみ)
歯科医師臨床研修終了後、審美歯科・ホワイトニング専門医院に勤務。現在は一般歯科・小児歯科非常勤勤務のかたわら歯科医師としての知識と経験を生かし、歯科医師webライター、歯科企業やオンラインセミナーのサポートなども行なっている。