抗重力筋とは?筋肉の役割・鍛え方について紹介

私たちの体には、多くの種類の筋肉があります。なかでも、姿勢の維持・立つ・歩くといった動きの基礎となる筋肉を「抗重力筋」といいます。

抗重力筋は加齢により衰えていき、放置するといずれは歩行困難などを引き起こすおそれがあるため、普段から積極的に運動を行なうようにしましょう。

今回は、抗重力筋の役割や衰えを予防する方法などをお伝えします。

1.抗重力筋とは?

ここでは、抗重力筋とはどのような筋肉かを紹介します。

1-1.抗重力筋の役割

人体には、大小合わせておよそ400個もの筋肉があり、そのなかでも重力に対する姿勢の維持をサポートしているのが「抗重力筋」です。その他、「姿勢維持筋」と呼ばれることもあります。

普段から悪い姿勢を続けていると、腰痛や肩こりの原因となりますが、抗重力筋が正しく機能していれば、抗重力筋が全身のバランスを調節して体の歪みが解消されます。このことから、抗重力筋は生活の質に関わる重要な筋肉といえるでしょう。

1-2.抗重力筋がある体の部位

抗重力筋が存在するのは、以下の部位です。

  • ・首

  • ・背中

  • ・胸部

  • ・腹部

  • ・下肢

抗重力筋は上記部位の前後に張り巡らされ、脊髄や脳からの命令を受けてバランスを取っています。

筋肉は年を重ねるにつれて衰えていきますが、抗重力筋が衰えてしまうと体にどのような影響が起こるのでしょうか。次章で解説していきます。

2.抗重力筋が衰えるとどうなる?

抗重力筋は、普段の生活で座っているときや、立っているときにも常に働いています。そのため、縮こまったままになりやすく、疲労しやすい筋肉です。

特に、デスクワークなどのように長時間同じ姿勢をとることが多いと、抗重力筋が疲労してバランスをとれなくなり、姿勢が崩れやすくなるので注意しましょう。姿勢の悪い状態が続いて体が歪むと、慢性的な腰痛や肩こりの要因となりえるため危険です。

また、抗重力筋は普段から人体の動きを支えているため、加齢によって衰えやすい傾向にあります。このような加齢による筋肉量の減少は「サルコペニア」と呼ばれ、高齢者の活動力低下に大きく影響しています。

つまり、抗重力筋の衰えを予防し、しっかり鍛えることは、QOL(生活の質)の向上において重要だといえるでしょう。

健康な若年層の場合、筋力不足が普段の生活に支障をきたすことはありません。しかし、高齢者が抗重力筋の衰えを放置すると、サルコペニアが進行して立ったり歩いたりするのが困難になることもあるため、早めの対策が求められます。

3.抗重力筋を鍛える方法

抗重力筋を鍛えるためには、普段から活発に動き、運動を継続することが大切です。

効果的な運動を以下で紹介するので、ぜひ参考にしてください。

  • ストレッチ

    前述したように、長く同じ姿勢を続けていると抗重力筋の疲労につながります。抗重力筋を疲労させないためには、ストレッチを行ない、筋肉の緊張をほぐすことが大切です。

  • ウォーキングなどの運動

    デスクワークなどで歩かない時間が長いと、下肢の抗重力筋の低下を招き、姿勢が崩れやすくなります。

    これを予防するには、ウォーキングやジョギングなどの実践が有効です。また、普段から活動的に動くことを意識してみましょう。

  • 筋力トレーニング(レジスタンス運動)

    サルコペニアによる筋肉量低下を防ぐには、レジスタンス運動が有効とされています。

    レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗をかける動きを繰り返す運動のことです。例えば、腹筋運動・スクワット・腕立て伏せなどが該当します。

    また、「自重トレーニング」という自分の体重を使って行なう運動も、継続することで効果を期待できます。

運動を続けて抗重力筋を鍛えれば、姿勢をしっかりと維持できるだけでなく、転倒の予防などにもつながるため、特に高齢者は適度な運動を習慣化できるとよいでしょう。

筋力維持のために、適度な運動を心がけよう

抗重力筋とは、立ったり姿勢をキープしたりと、日常的な活動における動作のベースとなる筋肉のことです。

同じような姿勢を長く続けるといった、抗重力筋が疲労しやすい生活をしていると、体が歪みやすく腰痛や肩こりなどを引き起こす要因となります。

加齢によって抗重力筋は衰えやすいため、今回紹介したような運動を行なってサルコペニア対策をしましょう。

また、日常生活でも活発に動き、筋肉をしっかり使うことが大切です。いつまでも健康的に過ごすために、なるべく歩くなど小さなことから運動を始めてみてください。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。