ハイムリッヒ法とは?手順や注意点について解説

高齢者や乳幼児が起こりやすい事故の一つに、食べ物の誤嚥(ごえん)などによる窒息があります。

これは、食べ物などが誤って気道内に入り、呼吸ができなくなる状態のことです。高齢者は噛む力や飲み込む力などの低下による窒息リスクが高く、生後5~6カ月以降の子どもはおもちゃや食べ物による窒息リスクがあります。

この記事では、誤嚥により窒息を起こした場合に応急措置として行なう「ハイムリッヒ法」を解説します。

1.ハイムリッヒ法とは?

気道異物による窒息が起きた場合に、異物除去法として行なう救急蘇生法の一つに、ハイムリッヒ法があります。まずは、どのようなケースで誤嚥・窒息が起こりやすいのかを見てみましょう。

1-1.誤嚥・窒息の原因

家庭内で起きやすい誤嚥・窒息の原因としては、次のようなものが挙げられます。

  • 高齢者の場合

    高齢者では、餅や肉のかたまりといった、食物での誤嚥・窒息が少なくありません。その他、義歯や入れ歯、薬のシートなどによる誤嚥も多発しています。神経疾患などにより、飲み込みにくくなっていることで、誤嚥・窒息が起きる場合もあります。

  • 乳幼児の場合

    生後5~6カ月くらいから、なんでも口に持っていくようになるため、幅20mmくらいまでの小さいおもちゃは特に注意が必要です。こんにゃくゼリーやあめ玉、ナッツ類などの食物、ボタン、硬貨などの小さなものでも、窒息事故の原因になります。

1-2.窒息のサインとは?

のどの辺りを、親指と人差し指でつかむようなしぐさが見られたら、それが窒息のサインです。

異物が誤嚥により気道に入って窒息すると、短時間で命に関わる危険性があります。激しい咳やむせ、呼吸困難が見られる場合や、顔色が赤や紫になっている場合は、窒息を疑いましょう。

1-3.ハイムリッヒ法は窒息時の応急措置

ハイムリッヒ法は、窒息時に腹部を急激に圧迫して、胸部と気管内の圧を上げることで異物の除去を行なう方法です。

「ハイムリッヒ法」は「腹部突き上げ法」「腹部圧迫法」という呼び方をする場合もあります。

2.ハイムリッヒ法の手順

まず、窒息のサインが見られたら速やかに救急(119番)に通報し、異物除去の応急措置を行ないます。救護者が1名しかいない場合は、救急の通報の前に異物除去の処置をしてください。

その際、患者の反応がある場合は以下のようにハイムリッヒ法を実施します。

  • 後ろからウエスト付近に手を回す

    窒息した人の後ろから、ウエスト付近に手を回します。

    片方の手でへその位置を確認し、こぶしの親指側をへその上方(みぞおちよりは十分に下側)に当てます。

    もう片方の手で、へそに当てたこぶしの手首を握ります。

  • 斜め上にこぶしを突き上げるように圧迫する

    こぶしを手前上方に、素早く突き上げて腹部を圧迫します。

    ハイムリッヒ法は異物が取れるまで行ないますが、途中で窒息した人がぐったりして意識がなくなった場合は中止し、心肺蘇生法を開始します。

3.ハイムリッヒ法の注意点

ハイムリッヒ法は腹部を強く圧迫するため、妊婦や乳児には実施しません。その場合は、胸部を圧迫する「胸部突き上げ法」や、背中を叩く「背部叩打法(はいぶこうだほう)」など、ハイムリッヒ法以外の方法で応急措置を行ないましょう。

また、ハイムリッヒ法で異物が取り除かれて窒息状態が解除されたとしても、内臓を痛めてしまっている可能性があります。そのため、ハイムリッヒ法を実施した場合は救急隊に伝え、速やかに医療機関を受診しましょう。

突然起こる誤嚥・窒息に備え「ハイムリッヒ法」を知っておこう

高齢者や乳幼児がいるご家庭では、「食べ物を細かく刻む」「誤嚥しそうなものを乳幼児の周りに置かない」など、あらかじめ誤嚥が起こらないような対策をしておくことが大切です。

誤嚥リスクの高い家族がいる場合は万が一の場合に備えて、応急措置の一つであるハイムリッヒ法の手順について知っておきましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。