1.肝臓病について
まずは、肝臓の役割や肝臓病の要因について解説します。
1-1.肝臓とは?
肝臓は、上腹部の右寄りに存在する大きな臓器です。重さはおよそ900~1,300gあります。
肝臓のおもな役割は、以下のとおりです。
肝臓は上記以外にも、日々体調を整えるためのさまざまな働きをしています。
1-2.肝臓病を引き起こすおもな原因
肝臓は前述したようにさまざまな働きを担う臓器ですが、飲食物の影響を受けやすい傾向にあります。
そのため、肝臓の病気のリスク因子には、以下のようなものが挙げられます。
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・節度ある量を超えた飲酒
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・食べすぎ
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・肥満
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・運動不足
上記のような生活習慣に心当たりがある場合は、肝臓病のリスクが高まるため、健康診断などで肝機能の数値に注意してみてください。
2.肝臓病にはどのような種類の病気があるのか
肝臓病には、さまざまな種類が存在します。おもな病気と特徴について見ていきましょう。
2-1.脂肪肝
肝臓に脂肪がたまってしまい、肝機能が低下してしまう状態を「脂肪肝」といいます。
脂肪肝の要因は、過食や多量の飲酒、運動不足、肥満などです。脂肪肝から、肝炎や肝硬変につながるケースもあるため、放置しないことが大切です。
2-2.肝炎
肝炎は、肝臓の代表的な病気です。ウイルスや薬などにより、肝臓の細胞がダメージを受ける状態を指します。
肝炎は病状の進行度によって、急性肝炎と慢性肝炎に分けられます。
また、ウイルスを原因としたウイルス性肝炎には、さまざまな種類が存在していますが、日本で多く見られるのは、B型肝炎とC型肝炎です。どちらも体液や血液が感染源となり、進行して慢性肝炎になることもあります。
B型肝炎は、妊婦から胎児へと感染することもありますが、ワクチン接種での予防が可能です。肝炎ウイルスに感染しているかどうかは血液検査で調べられるため、健康診断で検査できないか、確認してみるとよいでしょう。
2-3.肝硬変
慢性肝炎が長期的に持続し、肝細胞が破壊と再生を繰り返した結果、肝臓が硬くなって正常に機能できなくなる状態を指します。これは肝臓病の末期といえる状態です。
次章では、肝臓病になるとどのような現象が現れるのかを確認していきましょう。
3.肝臓病で現れるおもな現象
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、何らかの障害があっても体に明らかな異常が出にくい臓器です。
肝臓には、痛みを感じる神経が存在しません。そのため、ダメージを受けたとしてもなかなか体に異常が出ず、何らかの現象が現れた際には、かなり病気が進行している可能性が高くなります。
以下のような現象が見られたら、肝臓病のリスクが高いといえます。
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・疲労感がある
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・お腹に水がたまり、張った感じがする
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・足にむくみがある
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・皮膚が黄色っぽくなる
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・原因のわからないかゆみが続く
これらの現象が見られたら、悪化する前に医療機関を早めに受診しましょう。
4.肝臓に負担をかけないようにするためのポイント
肝臓病は、日々の生活習慣を改善することで予防が可能です。ここからは、肝臓の負担を減らすための生活習慣について見ていきましょう。
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栄養バランスの良い食事
一日3食すべて、主食・主菜・副菜をそろえるようにすることで、バランス良く栄養を摂ることができます。
野菜を多めに摂り、主食は摂りすぎないようにすることが大切です。主菜では、肉・魚・大豆製品・卵を、偏らないようにまんべんなく摂りつつも、揚げ物や炒め物などの油が多い料理は食べすぎないようにしましょう。
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食物繊維を多く含む食品を摂る
肝臓に負担をかけないように、便秘を予防する食生活を心がけましょう。
便秘予防におすすめなのは、食物繊維を多く含む食品を摂ることです。食物繊維は、野菜・きのこ・海藻などに多く含まれています。
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標準体重を維持する
肥満は、肝臓病を進行させるため、肥満にならないように食事のコントロールと適度な運動を心がけましょう。
食事においては、バランスが良く適切なエネルギー量の食事にすること、塩分や脂質を控えめにすることが大切です。
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お酒は節度ある適度な量に
過剰なアルコール摂取は肝炎や脂肪肝の要因となります。節度ある適度な飲酒量を心がけましょう。
肝臓病は、生活習慣の改善で予防しましょう
肝臓は、私たちの体にとって欠かせない働きを持つ重要な臓器です。肝臓の病気は、一般的に病気が進行するまでは体に明らかな異常が出にくいため、定期的な健診で肝臓の数値を確認しましょう。
肝臓を守るためには、生活習慣の見直しが大切です。肥満の予防やバランスの良い食事の摂取、運動習慣、節度ある適度な飲酒量を意識すれば、肝臓病の予防につながります。
また、今回紹介したような肝臓病が疑われる現象が現れたら、早めに病院を受診しましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。