1.ポリアミンとは
ポリアミンは、アミノ基を分子内に2つ以上持つ炭化水素の総称です。全生物種の細胞に含まれており、細胞の成長や増殖を始め、細胞の生命活動に関与している物質です。生命活動の維持には欠くことのできない重要な存在ですが、その生成は加齢とともに減少していきます。
1-1.適度な運動
哺乳類の細胞内には複数のポリアミンが存在するといわれています。なかでも、代表的なポリアミンとして知られているのが「プトレシン」「スペルミン」「スペルミジン」です。
3種類のポリアミンは酵素により相互変換して至適濃度が生体内で調整されています。特に生体において、膵臓、前立腺、顎下腺などタンパク質の合成の盛んな組織、肝臓など細胞増殖の盛んな組織に多く含まれることが知られています。
2.ポリアミンのおもな働き
ほぼすべての生物内に存在するポリアミンは、生体内ではどのような働きをするのでしょうか。
2-1.細胞の成長
細胞が分裂して増殖する一連の流れを細胞周期といいます。この細胞周期を正常に進行させるためには、ポリアミンが必要不可欠です。生命維持活動に必須の成分といえるでしょう。
2-2.細胞の生命活動
ポリアミンは多くの細胞機能に関わっており、その役割はさまざまです。
細胞膜の安定や細胞内シグナルの発現、タンパク質の合成、遺伝子発現にも関与しているといわれています。その他にも、抗炎症作用や抗酸化作用、放射線などの有害な刺激から遺伝子を保護する作用などが確認されています。
2-3.オートファジーの促進効果
ポリアミンの一種であるスペルミンには、飢餓状態の細胞が自ら栄養素を生み出すオートファジーを促進させる作用があると考えられています。間接的に免疫細胞の機能に影響をおよぼすことで、長寿を引き起こすメカニズムに良い影響を与えることが示唆されています。
3.ポリアミンを効率的に摂取する方法
ポリアミンはヒトだけでなく、動物や植物にも存在する成分です。これらに関連する物質からつくられた食品にはポリアミンが含まれているため、私たちは普段の食事からポリアミンを補給できます。
ただし、ポリアミンの濃度は食品によりさまざまなので、濃度の高い食品と低い食品を把握しておきましょう。
3-1.ポリアミン濃度の高い食品
ポリアミンが豊富に含まれている食品は、精製していない穀物に含まれる胚芽や大豆などの豆類、魚介類です。これらは、カロリー当たりのポリアミン濃度が高くなっています。
また、食材の部位によってもポリアミン濃度は変わり、例えば魚介類は肉や身よりも、内臓のほうが高濃度となるようです。
つまり、伝統的な和食は、大豆や魚介類などポリアミン濃度の高い食品を多く摂取しやすい食事だといえるでしょう。
3-2.ポリアミン濃度の低い食品
洋菓子などに多く使われている牛乳、バター、砂糖などには、ポリアミンがあまり含まれていません。なお、これらの食品は、生活習慣病の促進と関連のある食品ともいわれています。
ただし、健康に関連深いとされる食品のなかにも、ポリアミン濃度の低いものがあります。代表的なのがワインやオリーブオイルです。いずれも、ポリアミンをまったく含まないことがわかっています。
一方で、ワインやオリーブオイルを好む人は、ポリアミン濃度の高い食品を好むということもわかっています。これらを好む人は、他の高濃度ポリアミン食品を積極的に摂取する傾向にあるようです。
ポリアミンで若々しい日々を
私たちの生命維持活動においてポリアミンは重要な役割を担います。ポリアミンが高濃度で含まれている食品を積極的に摂取する習慣は、細胞を若く保ち老化を防ぎ長寿へつながることが知られるようになってきました。
一方、生体でのポリアミンの生成は老化とともに減少するため、アンチエイジングや健康寿命を長くするうえで「ポリアミン」への意識を持つことが大切です。
監修者情報
氏名:吉川 博昭(よしかわ・ひろあき)
資格は医師・ペインクリニック専門医・日本医師会認定産業医。専門領域は痛み診療・予防医学・内科疾患。