目次
1.偏食とは?
偏食とは、「ある特定の食品を嫌って食べないこと」といわれています。
偏食がひどく特定のものしか食べられない状態では、成長や発育に欠かせないビタミンやミネラルなどの栄養素が不足してしまうこともあります。
みなさんは、偏食に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。偏った食事をすると、なんとなく体調にも影響をおよぼすと考える方もいるかもしれません。
今回は、偏食が健康に与える影響を栄養素別に解説します。
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偏食とは、「ある特定の食品を嫌って食べないこと」といわれています。
偏食がひどく特定のものしか食べられない状態では、成長や発育に欠かせないビタミンやミネラルなどの栄養素が不足してしまうこともあります。
糖質・脂質・たんぱく質など、特定の栄養素を摂取しすぎると、人間の身体にはどのような影響があるのでしょうか。以下では、栄養素ごとに偏食が健康に与える影響について説明します。
糖質とは、体内におけるエネルギー源の一つです。脳にとっては唯一のエネルギー源となるため、糖質が不足すると疲労感や集中力の低下が表れやすくなります。
糖質不足が続くと、筋肉などのたんぱく質をエネルギー源として使います。そのため、筋肉量が減ることで基礎代謝量も減少し、太りやすくやせにくい体質となってしまうのです。
また、過剰に摂取した糖質は、エネルギーとして消費されずに中性脂肪として蓄積されるため、肥満や生活習慣病の原因にもなりえます。血糖値が急激に上昇しやすい糖質のみの食事をすると、糖をエネルギーに変えるための処理が追いつかなくなり、余った糖は脂肪として蓄積されます。
脂質は、わずかな量からもカロリーを多く摂取できるエネルギー源です。1gあたりのエネルギーで比較すると、糖質・たんぱく質が4kcalに対し、脂質は9kcalと倍以上のエネルギーを持っています。
脂質の一種であるコレステロールは、細胞膜を構成する重要な成分のため、脂質不足は細胞膜や血管壁がもろくなる原因となりえます。
ただし、脂質を過剰摂取すると、身体に悪影響があることも覚えておきましょう。
また、中性脂肪は甘いもの・油ものなどを摂りすぎることで、上がりやすくなります。脂肪肝へとつながる危険もあるので、気を付けてください。
たんぱく質は、糖質や脂質とともにエネルギー源の一つです。糖質が足りないときには、たんぱく質がエネルギーとして消費されます。
たんぱく質は、約20種類のアミノ酸によって構成されています。アミノ酸は細胞を構成する主要な成分です。
たんぱく質が不足すると、体力や免疫機能の低下が起こりやすくなります。高齢者では食事の摂取量が減ってしまうため、良質なたんぱく質を意識して摂ることが大切です。卵や肉・魚・大豆食品はたんぱく質の含有量が多いため、バランス良く組み合わせて摂るとよいでしょう。
ただし、たんぱく質を過剰に摂取すると、老廃物として窒素化合物が増えてしまいます。窒素化合物は肝臓で尿素に変えられて、腎臓を経て尿中に排泄されます。この窒素化合物が増えると腎臓に負担をかけるため、腎疾患の方は特に注意が必要です。
ミネラルは、身体を構成する4元素(酸素・炭素・水素・窒素)以外の総称で、無機質とも呼ばれます。
体内では合成できないため、食事より摂取することが大事です。ミネラルにはさまざまな種類があり、それぞれが吸収や働きに影響を与え合うため、バランス良く摂取するとよいでしょう。
以下のように、ミネラルの種類によって不足・過剰摂取による各症状が異なります。
ミネラル名 | 欠乏症 | 過剰症 |
---|---|---|
ナトリウム | 倦怠感、食欲不振、嘔吐、意識障害など | 血圧が正常よりも高くなるなど |
塩素 | 食欲不振、消化不良 | 特になし |
カリウム | 脱力感、食欲不振など | 血液中のカリウムの濃度が高くなるなど |
カルシウム | 骨がもろくなり骨折しやすくなるなど | 泌尿器系結石、他のミネラルの吸収を阻害するなど |
マグネシウム | 循環器の疾患 | 軟便、下痢など |
リン | 副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される、骨の疾患など | カルシウム吸収阻害 |
イオウ | 特になし(皮膚の炎症・爪や髪に異常が起こる可能性はあり) | 特になし |
鉄 | 鉄欠乏性貧血 | 体内に過剰に鉄が存在する |
亜鉛 | 成長の障害、食欲不振、皮疹、傷の治りが悪くなる、免疫機能低下、味覚障害、生殖能異常など | 胃腸の刺激、血清アミラーゼ値の上昇、膵臓の異常、LDLの増加、HDLの低下、免疫能の低下など |
銅 | 貧血、毛髪異常、白血球の減少、骨の異常、成長の障害など | 銅の代謝障害 |
マンガン | 骨の異常、成長の障害など | 運動失調、ふるえや動作緩慢などを引き起こすなど |
コバルト | 悪性貧血 | 特になし |
クロム | 高血糖状態になる、高コレステロール、血管が硬くなる、角膜の疾患など | 呼吸障害など |
ヨウ素 | 甲状腺が大きくなる | 甲状腺が大きくなるなど |
モリブデン | 成長遅延 | 銅の排出促進による銅欠乏症 |
セレン | 心機能低下など | 疲労感、焦燥感、毛髪の脱落、爪の変化、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、末梢神経障害など |
(出典:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 栄養に関する基礎知識「ミネラルの欠乏症、過剰症」)
ビタミンは、身体の機能を正常に保つために必要な物質で、水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンに分類されます。
水溶性ビタミンは、血液などに溶け込み、さまざまな代謝に必要な酵素の働きを補うビタミンです。余分なものは尿として排出されるため、摂りすぎることはあまりないと考えられています。ただし、不足しないように常に摂取するようにしましょう。
脂溶性ビタミンは、おもに脂肪組織や肝臓に貯蔵され、身体の機能を正常に保つ働きをしているビタミンです。体内に蓄積されやすく、過剰摂取すると頭痛や吐き気などの症状が出る場合があります。
ビタミンは体内でほとんど作ることができないため、食事から摂取する必要があります。
以下のように、ビタミンの種類によって、不足・過剰摂取による症状が異なります。
分類 | ビタミン名 | 欠乏症 | 過剰症 |
---|---|---|---|
脂溶性 ビタミン |
ビタミンA | 皮膚乾燥症、細菌への抵抗力の低下、成長障害など | 脱毛、皮膚の剥離、食欲不振、肝障害、胎児催奇形など |
ビタミンD | 骨や歯の成長障害、骨折しやすくなるなど | 血液中のカリウムの濃度が高くなる、軟組織の石灰化、腎障害、胎児催奇形など | |
ビタミンE | 溶血性貧血、神経障害など | 下痢など | |
ビタミンK | 出血傾向、血液凝固遅延など | 血液のビリルビン濃度が高くなる | |
水溶性 ビタミン |
ビタミンB1 | 神経疾患、末梢神経障害や心機能低下など | - |
ビタミンB2 | 成長障害、口腔内の炎症、皮膚の炎症など | - | |
ナイアシン | 皮膚の炎症、下痢、精神障害など | 皮膚発赤作用、消化管・肝臓の障害など(報告されてはいるが、症例は少なく因果関係は不明) | |
ビタミンB6 | 皮膚の炎症、神経障害、成長停止、体重減少、けいれんなど | 神経障害、シュウ酸腎臓結石など(報告されてはいるが、症例は少なく因果関係は不明) | |
ビタミンB12 | 悪性貧血、末梢神経障害など | - | |
葉酸 | 悪性貧血、妊娠中の欠乏で出産児に神経管閉鎖障害 | - | |
パントテン酸 | 成長停止、皮膚・毛髪の障害、末梢神経障害など(報告されてはいるが、症例は少なく因果関係は不明) | - | |
ビオチン | 皮膚の炎症、脱毛、けいれんなど | - | |
ビタミンC | 皮下出血、歯肉からの出血など | - |
(出典:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 栄養に関する基礎知識「ビタミンの欠乏症、過剰症」)
食物繊維は、整腸作用による便秘予防や、脂質、糖質などを吸着して体外へ排出する働きがあります。そのため、肥満や脂質異常症、糖尿病、高血圧など生活習慣病の予防や改善にも効果が期待できる、第6の栄養素といわれています。食べ物に含まれ、消化酵素で消化できない物質とされています。
一般的な食生活では、食物繊維を摂りすぎることはほとんどないといわれていますが、過剰摂取するとミネラルの吸収を邪魔する可能性もあるので、適量の摂取を意識するようにしましょう。
偏食とは、一般的に「ある特定の食品を嫌って食べないこと」といわれています。
決まった栄養素しか摂取しない偏った食生活を送ると、疲れやすくなったり生活習慣病リスクが高まったりするなど、身体にさまざまな影響が出る恐れがあります。
それぞれの栄養素をバランス良く摂ることで、病気の予防や改善にも効果が期待できます。好きな食品だけでなく、バランスの良い食事を意識しましょう。
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。
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