1.老化とは
老化のおもな原因は、体の錆び(酸化)と体の焦げ(糖化)の2種類があります。それぞれ体に与える影響について説明します。
1-1.体の酸化とは
老化を招く原因の一つは活性酸素による「酸化」です。私たちは日々呼吸をしており、呼吸から取りこまれた酸素の一部が、活性化した状態のものを「活性酸素」といいます。
活性酸素は、細菌やウイルスなどの外敵から体を守る大切な働きをしてくれます。しかし、活性酸素が増えすぎてしまうと細胞障害を引き起こし、酸化ストレスによる老化、悪玉コレステロールの増加や生活習慣病を招く原因となります。
1-2.体の糖化とは
体の「糖化」とは、糖が体内でたんぱく質と結びつき、「終末糖化産物」とよばれる悪玉物質に変化することです。この糖化が、老化の原因の一つとして注目されています。
血糖値が高い状態が続くと、糖尿病などの生活習慣病を引き起こし様々な組織で糖化が進むといわれています。
2.老化予防のポイント
老化のおもな原因が、酸化と糖化であるということを解説しました。では、これらを予防するにはどうすればよいのでしょうか。それぞれ解説していきます。
2-1.体の酸化を防ぐ方法
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酸化ストレスを招く原因と予防策
普段私たちの体内では、活性酸素が常につくられていますが、活性酸素から体を守る「抗酸化酵素」の働きのおかげで、活性酸素とのバランスを保つことができています。
しかし、現代人は活性酸素が増えやすい環境にさらされています。紫外線・大気汚染・タバコ・酸化された物質の摂取・偏った食事・ストレスの多い生活などは、活性酸素を増やす原因となります。
また、適度なウォーキングなどは健康維持に効果的ですが、激しい運動は活性酸素を大量に発生させるため、体に良いとされる運動も注意が必要です。
体の酸化を予防するためには、もともと備わっている抗酸化酵素が働きやすいようなバランスの良い食事・適度な運動・十分な睡眠などが重要となります。
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抗酸化作用のある成分を食品から補おう
私たちが持つ抗酸化能力は、もとから体に備わっている抗酸化酵素と、食品から摂る抗酸化物質の2種類から成り立っています。
抗酸化酵素をつくりだす力は40歳を過ぎると減少しやすいため、外側から抗酸化作用のある成分を補うことが大切です。
具体的な抗酸化成分として挙げられるのは、ビタミンCやビタミンEのほか、緑茶に含まれるカテキン、ポリフェノールやカロテノイドなどです。
ポリフェノールは3つの種類にわけることができ、ブルーベリーに含まれるアントシアニン、大豆に含まれるイソフラボン、ゴマの成分が変化してつくられるセサミノールなどがあります。
カロテノイドは緑黄色野菜や果物に含まれるβ-カロテンやリコピンなどがあり、えび・かに・さけ・ますなどにはアスタキサンチンといった成分が含まれています。
2-2.体の糖化を防ぐ方法
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血糖値を上げにくい食事を心がける
高血糖状態が続くと、糖化が進みやすくなるため、普段からなるべく血糖値が上がりにくい食品を選ぶことが大事です。
血糖値を上げやすい食品は、糖質を多く含むものです。甘い飲み物や砂糖がたっぷり入ったお菓子類はほどほどにしましょう。主食のなかでは、パンやパスタなどの小麦でできている食品は血糖値を上げやすいため、なるべく控えめにし、食物繊維が多い玄米や十割そばなどを食べることをおすすめします。
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極端な食事制限に注意
糖化とは別に注意が必要なのが、「低栄養状態」になることです。
加齢により食が細くなったり、減量のために食事を減らしたりすると栄養不足に陥りやすくなります。その結果血管の壁がもろくなり、免疫力が低下し、老化を早めてしまいます。
脳の老化予防には、たんぱく質と脂質を十分に摂ることを意識してください。たんぱく質は神経細胞の材料となり、脂質も脳にとって重要な栄養素です。青魚には認知機能に関わるDHA・EPAが含まれ、肉や卵には記憶や学習能力に関係するアラキドン酸(ARA)が含まれます。
年齢を重ねると食が細くなる方もいるかもしれませんが、ぜひ肉や魚などの動物性たんぱく質も積極的に摂りましょう。
老化の原因と対策を知って生活習慣を見直そう
老化のおもな原因は「酸化」と「糖化」であり、それぞれを防ぐための生活習慣や食事の工夫についてお伝えしました。酸化や糖化を防ぐには、抗酸化作用のある食品や、血糖値が上がりにくい食品を積極的に摂ることが大切です。
また、極端に食事を制限すると、体だけでなく脳の老化を早めてしまいます。しっかりとバランスの良い食事を心掛けることは、脳を若く保つためにも重要です。ぜひ今回お伝えしたことを意識して、若々しい体をキープしていきましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。