その不調、原因はストレスかも?ストレスの基本について理解しよう

過度なストレスは、心身に大きな影響を与えます。多くの人が何らかのストレスを抱えるストレス社会において、心身ともに健康的な毎日を送るためには、ストレスの基本について知っておくことが大切です。

今回は、ストレスの原因とストレスによって引き起こされる病気、知っておきたい対処法についてご紹介します。ストレスの基本を理解して、上手に付き合っていきましょう。

1.そもそもストレスとは

ストレスとは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことをいいます。ストレスを引き起こす原因には、自分にとって嫌なことや不快なこと、不安なことなど負のイメージを想像しがちです。

しかし、実は出産や進学など、うれしいことや楽しいことなども外部からの刺激となり得ます。体が外部から刺激を感じると、心身にひずみやゆがみが生じ、心身のバランスを崩してしまいます。その結果、さまざまな体の不調が生じてしまうのです。

2.ストレスの原因「ストレッサー」の種類

ストレスの原因は外部からの刺激によるもの、と前章でご紹介しましたが、心や体にかかる刺激のことを「ストレッサー」と呼びます。ストレスとストレッサーの関係性を膨らませた風船で例えると、ストレッサーは膨らませた風船を手でギュッと押すときの手の圧力のことであり、ストレスはストレッサーにより風船がゆがんだ状態といえます。

ストレスの原因となるストレッサーには、大きく分けて4つの種類があります。

2-1.物理的ストレッサー

物理的ストレッサーは、自然に代表される外部環境からくる刺激のことです。寒暖の変化や騒音、混雑などがあります。

2-2.化学的ストレッサー

化学的ストレッサーとは、公害物質や薬物、一酸化炭素、酸素欠乏・過剰などのことを指します。

2-3.心理・社会的ストレッサー

心理・社会的ストレッサーは、職場での仕事量や人間関係などによってもたらされます。普段、私たちがストレスと感じることの多くが、この心理・社会的ストレッサーです。

2-4.生理的ストレッサー

病気や飢え、睡眠不足などによって引き起こされるストレスが該当します。

3.ストレスを溜めている人の傾向

同じ状況下においてストレスを感じる人もいれば、ストレスを感じない人もいます。この違いは、その人の考え方や物事の捉え方です。ストレスを溜めている人の傾向として、以下などが挙げられます。

3-1.消極的になりがち

自分の意見や考えなどがあっても、消極的で周囲との交流を避けるような行動を選んでしまうことが多い人は、ストレスを溜めていることが考えられます。

3-2.自分に自信を持ちにくい

自分に対する肯定的な意識のことを、自己肯定感といいます。自己肯定感が低い人は、自分に自信を持ちにくかったり、自分に良いところがあると認識したりすることが少ないため、自己肯定感の高い人と比較するとストレスを溜めている傾向にあります。

3-3. PTSD(心的外傷後ストレス障害)

過去の体験が自分の意志とは関係なく思い出され、悪夢を見たりすることや、不安や緊張が高まったりすることが続く状態です。ストレスが、死の危険に直面した体験など、強い衝撃を受けたことによって生じた精神疾患であることも考えられます。また、自分を責めたり、人間不信になったりすることも考えられます。

4.ストレスが原因で現れる体の不調

人はストレスを受けると、そのストレスの基であるストレッサーから身を守るために、さまざまな対処法を講じます。これをストレスコーピングといいます。ストレスにうまく対処できている場合は、ストレス反応は次第に低下していきますが、過剰なストレスが慢性的にかかると、以下のような不調を引き起こす可能性があるのです。

不調が起こり得る部位 症状の例
呼吸器系 気管支喘息、過喚起症候群
循環器系 本態性高血圧症
消化器系 胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、心因性嘔吐
内分泌・代謝系 単純性肥満症、糖尿病
神経・筋肉系 筋収縮性頭痛、痙性斜頚、書痙
皮膚科領域 慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症
整形外科領域 慢性関節リウマチ、腰痛症
泌尿・生殖器系 夜尿症、心因性インポテンス
眼科領域 眼精疲労、本態性眼瞼痙攣
耳鼻咽喉科領域 メニエール病
歯科・口腔外科領域 顎関節症

参照:厚生労働省「2 ストレスからくる病」


ストレスは心の病気だけではなく、身体面においてもさまざまな病気の原因になるのです。過度のストレスを継続的に受けた場合、発症する可能性がある病気の一例を詳しく見てみましょう。

4-1.パニック障害

パニック障害とは、突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、吐き気、手足の震え、窒息感といった発作が起こり、日常生活に支障をきたす状態のことです。発作は予期せず起こるため、自分では発作をコントロールできないと感じ、発作に対する不安から行動が制限されてしまうことがあります。

4-2.自律神経失調症

自律神経失調症とは、ストレスなどが原因で、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、体に起こるさまざまな症状の総称のことです。主な症状としては、不眠、下痢や便秘、頭痛、動悸、めまい、イライラや不安感などが挙げられます。

4-3.胃・十二指腸潰瘍

胃潰瘍は、胃酸と胃酸から胃壁を守る粘膜の分泌のバランスが崩れることで胃壁が傷つけられ、痛みや出血などの症状が現れます。十二指腸潰瘍は、十二指腸の壁が傷つけられることで、胃潰瘍同様の症状がみられる病気です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、消化性潰瘍と呼ばれることがあります。過度なストレスは、胃などの消化器官の働きに悪影響を及ぼすため、症状の悪化がみられることがあります。

4-4.メニエール病

メニエール病とは、めまいを繰り返し、めまい発作にともなって難聴、耳鳴りなどの聴覚症状が生じる内耳の病気です。メニエール病の原因ははっきりとしていませんが、我慢をする人や、ストレス発散をする機会が少ない人に多くみられるといった報告もあります。

5.ストレスの対処法

ストレスを感じる状況をそのままにしていると、体調を崩してしまい、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。今回ご紹介する対処法を取り入れ、ストレスの軽減に努めることで、ストレスとうまく付き合えるようになります。

5-1.ストレスを感じている環境から距離を置く

ストレスを感じている原因が、自分の置かれている環境にある場合は、自分を取り巻く環境を変えてみることも大切です。周りに改善を求めて対処してもらえれば理想的ですが、改善が見込めない場合には、その環境から距離を置く方法もあります。環境を変えることでストレスの軽減につながります。

5-2.不安や焦燥を周囲の人達に聞いてもらう

自分一人で対処できない不安や焦燥感を感じたときは、周囲の人に話を聞いてもらうだけでもストレス軽減につながります。問題を抱えているときは一人で抱え込まず、周りの人に相談してより良い解決方法を見つけることが効果的です。

5-3.カウンセラーや医師などの専門家に相談する

自ら対策を講じても不安や心配が軽減されない場合は、カウンセラーや医師などの専門家に相談しましょう。専門家に相談することで、短期間で解決策を見出すことができたり、症状が軽減したりする場合があります。

ストレスと上手に付き合い、自分らしい毎日を

誰もが多かれ少なかれストレスを感じているいま、ストレスとうまく付き合っていくことが大切です。過度なストレスは体のさまざまな不調をもたらし、ときには日常生活に支障をきたすこともあります。自分らしく毎日を過ごすためには、自分に合ったストレス解消法を知り、心の休息をすることが重要です。

自分で解決できない悩みを抱えている方は、一人で悩まず周りの人に相談しましょう。

監修者情報

氏名:河村優子(かわむら・ゆうこ)
アンチエイジングをコンセプトに体の中と外から痩身、美容皮膚科をはじめとする様々な治療に取り組む医師。海外の再生医療を積極的に取り入れて、肌質改善などの治療を行ってきたことから、対症療法にとどまらない先端の統合医療を提供している。