1.眼精疲労の原因
眼精疲労とは、継続的な視作業によりさまざまな症状をきたし、眼を休めても十分に回復しない状態のことです。眼に出る症状としてはおもに、眼の痛み・眩しさ・かすみ・充血などで、身体症状では肩こり・頭痛・吐き気などが現れます。
眼精疲労をきたす原因はさまざまです。例えば、メガネやコンタクトレンズの度が合っていない・ドライアイ・白内障・緑内障・眼瞼下垂・斜位・斜視などが挙げられます。また眼の酷使によることも多く、最近では長時間のパソコンやスマートフォンの操作が原因となる人が増えている傾向です。
また、更年期障害・自律神経失調症・アレルギー性鼻炎・歯周病・風邪・精神的ストレスなども眼精疲労と関係が深いとされています。
2.眼精疲労の改善方法
ここからは、原因別に眼精疲労への対策についてお伝えします。
2-1.矯正不良の場合
視力に合っていないメガネやコンタクトレンズを使い続けていると、焦点が合わないため眼に負担がかかります。また、老眼は40歳頃から60歳頃まで進むため、これまで使ってきたメガネやコンタクトレンズが合わなくなる可能性もあることから、日常的に使用している場合は定期的な視力検査が大切です。
2-2.白内障や緑内障など病気が原因の場合
白内障とは、眼の水晶体が濁る病気です。視力の低下をまねき、眩しく見えたり、疲れやすかったりすることから、眼精疲労の要因となります。加齢にともない誰にでも起こりうるものですが、糖尿病の合併症で白内障の症状が現れることもあるでしょう。
初期の治療としては、点眼薬で進行を遅らせる方法が選択されます。しかし、一度濁った水晶体はもとに戻りません。進行した場合には手術で水晶体を摘出し、眼内レンズを使用する方法がとられるでしょう。
緑内障は、眼圧が高くなり眼の神経を圧迫する病気です。視野に対して狭窄や欠損を生じます。多くの場合は初期段階では気付きにくいものですが、急に眼圧が上昇すると眼の痛みや頭痛などの自覚症状が現れる場合もあります(急性緑内障発作)。そのため、異変を感じたら早めに受診をしましょう。
眼圧を下げるための治療が行なわれますが、一度障害された視神経はもとに戻らないため、進行を遅らせることが目的です。方法としては点眼薬を使った治療、レーザー治療、手術があります。
2-3.ドライアイが原因の場合
ドライアイはその名のとおり眼が乾きやすいことから、眼がかすむ・眼が疲れる・眼が痛い・涙や目やにが出るなどさまざまな症状をまねきます。
ドライアイのおもな要因は、パソコンやスマートフォンの長時間利用、コンタクトレンズの使用、エアコンの長時間使用などです。いずれも眼の乾燥につながります。
軽い症状であれば市販の目薬でも改善が期待できますが、眼科では蒸発した涙の成分を補ったり、眼の炎症を抑えたりする目薬を処方することもあります。
日常生活においてはコンタクトレンズの使用頻度を減らしたり、加湿器を使ったりして、極力眼の乾燥を防ぐ工夫をすることが大切です。
2-4.VDT(画像情報端末)作業が原因の場合
VDTとはパソコンやタブレットなどのことを指し、VDTの使用は眼精疲労と深い関わりがあります。対策としてはパソコンなどを使わないことですが、今の時代では現実的ではない人も多いでしょう。パソコンなどを使用しつつ、眼精疲労をまねきにくくするには、作業環境を整えることが大切です。
具体的には室内の照明で眩しさを感じないようにする、連続しての作業時間は1時間を超えないようにし、合間に休憩をとるなどで眼精疲労への予防が期待できます。
また、ディスプレイは画面の上部が眼の高さと同じか、やや下になる高さにすることもよいでしょう。
3.眼精疲労の改善に役立つ日常のケア
スマートフォンを見るときは、眼と首に負担が少ない姿勢を意識しましょう。また眼の疲れを癒したいと思ったら、温かいタオルで眼を温めるとすっきりしやすくなります。
パソコンやスマートフォン、テレビなどの液晶画面は寝る2時間前には消すことが大切です。起床後は日光を浴びてウォーキングをすることで、体内時計がリセットされやすく、生活のリズムが整いやすいといわれています。
また、眼のためにも体の健康を保つことと同様に、栄養バランスの良い食事を摂りましょう。眼の疲れが気になる人はビタミンも豊富なブルーベリーやかぼちゃ・にんじん・青魚・ほうれん草やブロッコリーなどがおすすめです。
眼の疲れを感じたら早めの対策を
現代の生活においては、パソコンやスマートフォンの普及により、ブルーライトを浴びたり、近いものを見ることが多くなり、眼精疲労に陥りやすい状況です。パソコンやスマートフォンの使用を抑えるのはなかなか難しいものですが、こまめに休憩を入れるなど少しの工夫で、眼精疲労の抑制に効果が期待できます。
また、更年期障害・自律神経失調症・アレルギー性鼻炎・歯周病など、おおよそ眼とは無関係とも思える症状が、眼精疲労と関与している場合もあります。
さらには、眼精疲労をともなう眼の疾患のなかには、気が付かないうちに進行するものもあるため、いつもとは違うと違和感を覚えたら、早めに受診をするのがおすすめです。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。