1.「抜け毛」とはどのようなものか
抜け毛とは、もう伸びることがなくなって頭皮から抜け落ちた毛のことです。物理的な力が加わってちぎれたり抜けたりしたものは抜け毛とはいいません。
髪の毛の生え変わりには毛周期と呼ばれる周期があり、そのなかには成長期や休止期といった期間があります。この毛周期はある程度の髪の束ごとに別々に進み、割合として、全体の8~9割の髪が成長期、1割近くの髪が休止期のものです。
そのため、毎日100本近く、秋は200本近くが休止期にさしかかって頭皮から自然と抜け落ちますが、抜けた本数に近い数の新しい髪の毛がまた生えてくることにより全体の数が保たれています。
2.抜け毛が増える原因
抜け毛が増えるおもな原因は、直射日光を浴びたときの紫外線による頭皮へのダメージに加え、加齢やホルモンバランスの影響、精神的なストレスなどが重なったり、身体的な疾患などが挙げられます。
2-1.ホルモンバランスの影響による原因
ホルモンバランスの影響は髪の成長にも関与します。代表される疾患は、男性型脱毛症であるAGA、女性の場合は分娩後脱毛症などです。
男性型脱毛症は遺伝性であることが考えられており、男性ホルモンが過剰なことが原因で髪の毛が薄くなります。
分娩後脱毛症は、エストロゲンが関与する、出産後に抜け毛が一時的に多くなる脱毛症です。分娩前は成長期の髪の毛の割合が全体の9割以上に増えることで抜け毛が減少しますが、分娩後に7割くらいまで下がることから抜け毛の量が増加します。一時的な症状であることが多く、治療の必要は基本的にないと考えられています。
2-2.心身の疾患による原因
円形脱毛症は往々にして精神的なストレスがきっかけで発症すると思われがちです。しかし、それ以外にも、遺伝やアレルギー、甲状腺疾患のような自己免疫に関連する疾患が原因と考えられる場合もあります。
上記以外では、副腎機能の異常にともなう抜け毛、抗がん剤など薬剤の副作用による抜け毛、神経症や欲求不満により自分で髪の毛を抜いてしまうトリコチロマニアと呼ばれる抜毛症があります。
3.抜け毛を改善する方法
ここでは抜け毛の改善のためにできることを紹介します。
3-1.頭皮へのアプローチ
頭皮の健康のためには、頭皮の血行を良好な状態にしておくことが大切です。血行が悪くなると毛根の毛細血管に栄養が届かなくなってしまい、髪の毛が育ちにくくなります。
頭皮へのアプローチとしては、正しいシャンプー方法で毛穴の汚れや頭皮へのダメージをケアしておくことが大切です。髪の毛は事前にブラッシングしてからシャワーですすいで皮脂や汗を落としましょう。
シャンプー中は指の腹を使って頭皮を優しくマッサージするように洗い、洗ったあとはシャンプーが残らないように十分にすすいで、頭皮を清潔な状態に保ちましょう。
なお、シャンプーは頭皮で泡立てる過程で強く指を動かすと、髪の毛が頭皮に擦れて頭皮が荒れる原因になってしまうため、泡立てる際も指の腹を使い、優しく泡立ててください。
3-2.生活習慣からのアプローチ
頭皮は健康な髪を育てる土台です。頭皮をすこやかに保てば、薄毛や抜け毛を抑えることが期待できます。そのためには、生活習慣を今一度見直してみることが大切です。
具体的には、心からリラックスできる時間を作る、適度な運動を行なう、バランスの良い食事をとる、質の良い睡眠をとるなど、毎日の積み重ねが重要になります。規則正しい健康的な生活習慣を心がけましょう。
ウォーキングやストレッチなど、運動は末梢の血流を良くするため頭皮に栄養を届けやすくなります。
また、睡眠は体のメンテナンスが行なわれる時間であり、生活リズムを整えるためにも日頃から質の良い睡眠をとることが大切です。
3-3.医師に相談する
抜け毛の原因にはさまざまなものがあり、原因や治療法もそれぞれ異なります。
インターネットでは安全性や品質が定かではない内服薬の類似品が売られていることもありますので、抜け毛の悩みにしっかり向き合いたい方は一度医師に相談しましょう。
頭皮のために健康的な生活を送りましょう
抜け毛自体は自然なことです。季節によって前後しますが、一日あたりおおむね100本ほどの抜け毛があるとされています。毛周期にともない、100本が抜けたとしても、同程度の本数が再び生えてくるため、基本的には髪の本数は保たれているのです。
しかし、ホルモンバランスの影響や心身の疾患などにともない、自然な本数以上の抜け毛が生じることもあります。過剰な抜け毛を改善するためには、頭皮の健康を維持することが大切です。シャンプーの仕方の工夫や、運動や食事など生活習慣の見直しと改善などが、抜け毛を抑える第一歩です。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。