1.骨密度と骨強度とは?
骨密度と骨強度、似たような単語ですがそれぞれ異なる意味があります。ここでは、骨密度と骨強度の違いについて解説しましょう。
1-1.骨密度
骨密度とは、骨を構成するカルシウムなどのミネラル成分が、骨のなかにどれほど詰まっているかを示す密度のことです。骨の単位面積に対する骨塩量をもとに算出します。
骨は、吸収と形成のサイクルを常に繰り返しており、約10年ですべて新しい骨に入れ替わるとされています。しかし、骨の形成よりも吸収する割合が増えてしまうと、骨が十分に作られません。その結果、骨の密度が低下してしまいます。
さらに骨を構成するカルシウムを十分に摂取できていない場合も、骨密度は低下します。血液中に存在するカルシウム量は、ホルモンの働きで常に一定の濃度で保たれているため、カルシウムが不足すると骨を溶かして補給します。骨を溶かすことで骨密度の減少につながるのです。
また、骨密度は男女とも加齢が原因で減少するのが特徴です。減少率は女性のほうが大きく、20歳頃をピークに徐々に骨密度が低下し、閉経する50歳前後では減少速度が増します。
1-2.骨強度
骨強度とは、骨密度と骨質によって決まる骨の強さやしなやかさのことです。骨だけではなく、血管のコラーゲンや内臓などにも深く関連しています。
糖尿病などの疾患に罹患したり、ステロイドを使用したりしている方などは骨が弱い傾向にあるとされており、骨密度が正常でも、骨質が悪ければ骨折しやすい状態にあります。
2.骨密度検査でわかること
骨密度をチェックするためには、骨密度検査を受けることが必要です。骨密度検査では、骨量の減少を早い段階で見つけることができます。
また骨密度検査の測定値では、年齢ごとの平均値が表示されるため、自分の年齢と同年代の平均値を比較したり、骨密度が一番高い年代と比較することができます。骨の状態を具体的に把握することで骨折リスクがわかるため、食生活などの対策を立てやすいでしょう。
3.骨密度の減少を予防する方法
加齢によって起こる骨密度の減少は止められません。しかし、食生活と適度な運動で骨密度の減少を最低限に留められるでしょう。
ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。
3-1.食生活
骨密度を高めるためには、必要なカルシウムをしっかり摂取することが大切です。また、食事は一日3回、バランスのとれたメニューを心がけましょう。
バランスの良い食事とは、ごはんやパンなどの主食・野菜や海藻料理などの副菜・肉や魚などの主菜がそろっている食事を指します。
また、カルシウムを多く摂取するコツとして、大豆製品、海藻類、緑黄色野菜を積極的に取り入れることがおすすめです。さらに適量の牛乳や乳製品を摂るとよいでしょう。
3-2.運動
骨密度の減少を予防するためには、カルシウムの摂取に加えて、日光浴や骨に刺激を与える適度な運動も大切です。骨にある程度負荷がかかると、微弱の電流が骨に伝わり強度が増すといわれています。
しかし、どのような運動でも良いわけではありません。グラウンドや競技場で行なうスポーツの選手は、水泳選手よりも過重負荷が大きいため、骨密度が優れているとされています。そのため、ウォーキングやジョギングなど重力による負荷がかかる運動がおすすめです。
また筋力トレーニングは、ウォーキングなどを行なうだけでは強化が期待できない上半身の骨にも刺激を与えられるため、併せて行なうとよいでしょう。もし骨折経験や腰痛などがある場合は、医師に相談してから運動することが大切です。
自分の骨密度を知って対策を立てよう
骨密度は、加齢や食生活などさまざまな要因で低下します。骨密度が低下して骨がもろくなると、ちょっとした衝撃で骨折してしまいかねません。加齢による骨密度の減少は止められませんが、生活習慣の改善など、日々のちょっとした工夫で骨密度の減少を抑えることは可能です。
骨密度検査を受けて自分の骨の状態を把握したり、食生活や運動習慣を見直したりして、できるだけ骨密度を維持し、いつまでも元気な体で過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。