1.膝を支える関節軟骨の構造と変形性膝関節症について
膝を支える関節軟骨は水分をたっぷり含んだスポンジのようなもので、膝の関節の表面を覆っている組織です。厚さは3~5mmと薄いですが、骨が受ける衝撃を和らげたり、関節を曲げたり伸ばしたりするときに骨が摩擦で削れるのを防ぐ働きをしています。
関節軟骨が衝撃を和らげているため、痛みが出ることなくジャンプをしたり走ったりすることができるのです。
関節軟骨は、コラーゲン線維の束が網目状の骨組みを作っている構造からできています。コラーゲン線維の束のなかには、ヒアルロン酸を中心にたんぱく質などを含んだプロテオグリカンという成分が絡みついているのです。
1-1.膝が痛む理由
膝が痛む理由はさまざまですが、加齢にともなって軟骨がすり減り痛みが出ることもあります。若い人の場合、過剰な運動が原因で痛むことがあるほか、靭帯や半月板損傷が原因となって痛みが出ることもあります。
加齢に関係なく、軟骨がすり減って膝の骨が変形する「変形性膝関節症」も痛みをともないます。
1-2.変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は中高年の方に多く見られますが、老化ではなく膝の間違った使い方により起こります。下記にあてはまる方は、変形性膝関節症になりやすいといわれているため注意してください。
変形性膝関節症は、前期・初期・進行期・末期の4つの進行段階があります。関節軟骨の衝撃を吸収する力の低下は前期で見られるものです。初期の段階になると軟骨がすり減っていきます。進行期は初期よりもさらに軟骨がすり減った状態となり、末期は常に膝の痛みを感じます。
変形性膝関節症の原因である関節軟骨の傷や変形をなくすのは困難ですが、生活習慣の改善などで早めに対処をしたり、トレーニングなどで痛みを減らしたりすることができます。
2.軟骨の保護や膝の痛み対策のためにできること
膝を守るためにできることをご紹介します。
2-1.適度な運動をする
継続的な筋力トレーニングやストレッチで、膝の動きが鈍らないようメンテナンスをすることが重要です。
例えば筋力トレーニングでは、太ももを鍛えるのがよいでしょう。太ももの前にある大腿四頭筋が、関節軟骨の負担を軽くする働きを担っているためです。鍛えるのにトレーニング器具などは特に必要なく、浅いスクワットなどでも十分です。
また、ウォーキングもおすすめです。一日8,000歩を目安にウォーキングを習慣にしてみましょう。安全な運動とはいえ、痛みが発生するなど、無理はしないように注意してください。
2-2.食生活を整える
食生活では、食べすぎないようにすることが大切です。体重が増加すると膝に負担がかかり、軟骨のすり減りを早めることがあります。
下記の関節軟骨にと良いといわれている栄養素を、毎日3回の食事から摂るようにしましょう。
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・たんぱく質
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・ビタミンD
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・ビタミンC
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・ビタミンB群
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・ビタミンA
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・ビタミンE
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・ミネラル
グルコサミンとコンドロイチンは、関節軟骨の主要なプロテオグリカンを構成する成分となります。健康維持のためにグルコサミンとコンドロイチンを摂取しつつ運動と併用することでより良い効果が期待できます。
2-3.サポーターや温湿布を使う
発症してしまった関節の痛みに対しては、サポーターや温湿布を使用しましょう。
サポーターは、関節を固定するだけでなく、保温効果によって慢性的な炎症を抑える効果も期待できます。使うサポーターは、市販の安価な保温用サポーターでも十分です。なお、血流を妨げないよう、就寝時にはサポーターは外すようにしましょう。
また、温湿布も関節の痛みに有効です。打撲や捻挫などの急性炎症には冷湿布がよく用いられます。特に膝の変形による慢性的な炎症に使用すると、効果を実感できる可能性が高いでしょう。ただし、刺激が強いため敏感肌の方は注意してください。
関節軟骨はトレーニングとストレッチ、日頃の食生活に気をつける
膝の痛み対策としてできることは、適度な運動や食生活の改善が挙げられます。運動は太ももを鍛える筋力トレーニングが有効です。浅いスクワットでも十分効果があるので、実践してみてください。また、ウォーキングもおすすめの運動です。
食事は栄養バランスを考慮し、食べすぎに気をつけましょう。体が重くなると膝に負担がかかります。たんぱく質、ビタミン、ミネラルとバランス良く摂るようにしましょう。
痛みが出てしまうときは、本記事で解説した注意点を参考にサポーターや温湿布を利用して膝をいたわってください。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。