1.寝不足が体におよぼす影響
寝不足は日中の眠気以外にも、意欲低下や記憶力減退などの精神的な機能の低下を引き起こします。
また、ホルモン分泌や自律神経機能にも悪影響をおよぼし、あらゆる不調や疾患につながるのです。
例えば、健康な人であっても、一日10時間しっかりと睡眠をとった日と比較して、4時間睡眠の寝不足状態を2日間続けただけで、食欲を抑えるホルモンであるレプチンの分泌量が低下します。それと同時に、食欲を高めるグレリンと呼ばれるホルモンの分泌が亢進するため、食欲が増大するといわれています。
慢性的な寝不足状態にある人は、糖尿病など生活習慣病にもかかりやすいため注意が必要です。
さらに、寝不足は免疫力を低下させることもわかっています。睡眠時間が7時間未満の人は8時間以上の人に比べて、約3倍も風邪にかかりやすいようです。
2.寝不足による吐き気にはこんな原因が
寝不足のときに生じる吐き気の原因はいったい何なのでしょうか。
私たちの体には、感触に関わる「感覚神経」、手足を動かすことに関わる「運動神経」、そして血圧の調整や消化管の動きに関わる「自律神経」が備わっています。
神経は体内でさまざまな働きをしているため、何らかの理由で障害された場合、あらゆる症状が現れるのです。
前述した3つの神経のなかで吐き気につながるのは、自律神経の乱れです。
寝不足などによって自律神経の働きが乱れると、胃や腸が正常に動かなくなり、胃もたれ、胃痛、便秘、下痢など生活の質と落としかねないほどの不快な症状が出現することがあります。
このような自律神経の不調が原因で起きる胃腸障害が続く場合、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群という病気も疑われます。
3.寝不足で吐き気があるときの対処法
それでは、寝不足で自律神経が乱れ、吐き気を感じるときはどのように対処していけば良いのでしょうか。
自律神経は交感神経と副交感神経に分けられます。交感神経は体を活発に動かすときに、副交感神経は体を休めるときに働く神経です。
この2つのバランスが崩れることにより不調が生じるため、バランスを正常に保つような対処をしていきましょう。
寝不足による吐き気が続いている場合、規則正しい生活をすることが大切です。不規則な生活は、自律神経に異常をきたす原因となります。
なかなか眠れないと悩んでいる方は、自分なりのリラックス法を見つけましょう。軽い読書や好きな音楽・香りを楽しんだり、ストレッチをしたりするのが効果的です。
眠ろうと意気込んでしまうと、かえって頭をさえさせることがあるため、自分にあった方法で行なうようにしてください。
胃腸に良い食生活を心がけることも重要です。欠食などにより長時間空腹の状態が続くと、胃の粘膜に障害を起こしやすくなってしまいます。一方で、過食や間食のしすぎは、胃での消化吸収力を低下させ、不調の原因となるため控えるようにしてください。
大根や玉ねぎ、魚の白身、豆腐、牛乳、ヨーグルトは胃腸にやさしい消化の良い食材としておすすめです。
食べ物はよく噛むことで唾液とよく混ざり、消化されやすくなります。よく噛んで食べるためにも、「〜しながら」の食事は避けるように意識しましょう。
自律神経を乱さないように生活しよう
寝不足のときに起こる吐き気の原因と対処法についてお伝えしました。
大きな原因一つとして、自律神経の乱れによるものが挙げられます。吐き気と同時に寝不足にもなっていると感じていたら、まずは自律神経の働きを整えることが大切です。そのためには自分なりのリラックス方法を見つけるなど、寝不足の解消に努めましょう。
人によってリラックスできる方法は異なるので、自分が普段癒されるのはどのようなときか考えてみてください。
今回紹介したリラックス方法のほかにも快適な睡眠環境を整えることもおすすめです。寝室の温度は20度前後、湿度は40~70%ほどが快適な睡眠に適しているとされています。
日々の生活のなかで睡眠時間は削られがちです。しかし、長期間寝不足の状態が続くと、大きな健康問題に発展してしまいます。
今までの悪い習慣や不調を放置せず、睡眠について見直す機会を設けるとよいでしょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医