1.筋力低下を引き起こすおもな原因とは?
筋力低下のおもな原因は加齢や病気が挙げられます。
人間の運動機能は加齢にともなって低下することが多く、そこから筋力低下につながります。実際、20歳と70歳では筋肉の重量が約4分の1にもなるといわれているのです。
また、高齢者の場合は「フレイル」も問題になっています。フレイルとは、加齢によって心身の働きが虚弱になることを指し、低栄養が筋力低下の原因となることもあります。
病気による筋力低下については、おもにサルコペニアなどが考えられています。
2.筋力低下を引き起こすおもな病気
筋力低下を起こす病気として、ここではサルコペニアについて紹介します。
2-1.サルコペニア
サルコペニアとは年齢が上がるにつれて筋肉が減っていく老化現象のことですが、現在では疾患として扱われています。
サルコペニアによって減りやすい筋肉は、腹筋や膝伸筋群、お尻周りの大臀筋や肩甲骨の下あたりにある広背筋など、どれも姿勢を保つために使われる抗重力筋と呼ばれる筋肉です。はじめは歩くのも立ち上がるのも「億劫だな」と思う程度だったのが、サルコペニアが進行すると歩行に困難をきたし、活動範囲を狭めQOL(生活の質)が低下する原因につながります。
サルコペニアの対策には筋力トレーニングをすることが大切です。サルコペニアを進行させないために日頃からある程度の負荷がかかる運動をしておきましょう。
3.筋力低下を予防する筋力トレーニング
正しい方法で運動をすれば、年齢を重ねていても筋力を回復させることは可能です。
特に、サルコペニア対策のためには、歩いたり軽く走ったりすることのほか、立ち上がる動作の際に使うようなQOL(生活の質)と関係の深い筋肉を鍛えることや、レジスタンス運動と呼ばれる腕立て伏せやスクワットなどの負荷の高い運動が効果的と考えられています。
3-1.椅子を使ったスクワット
膝を伸ばす筋肉で太ももの前側にある大腿四頭筋や、足を後ろに上げる時に使う筋肉で太ももからお尻にある大臀筋を鍛えることができる方法です。
椅子を使ったスクワットは、両足を肩幅に開いて視線は前のまま、ゆっくりと椅子に座ったり立ち上がったりを10回ほど繰り返します。
3-2.踵上げ
大臀筋や、つま先の上げ下げを行なう下腿三頭筋を鍛えるトレーニングです。
踵上げは、肩幅の広さで両足を開き、膝が真っ直ぐの状態で踵を上げ、5秒止まったら踵を下ろします。
ふらついてしまう場合は椅子や机などに手をつけられるようにしておきましょう。
3-3.上体起こし
腹筋だけでなく体の前側の筋肉を鍛えることができるトレーニングです。
仰向けの状態で膝を曲げて、視線がおへそに向くように肩甲骨から上体を起こします。10秒止まったら、少しずつ上体を戻します。
筋力低下の原因を把握してより健康的に過ごしましょう
筋力が低下する原因や筋力低下を起こす病気、筋力低下を予防するトレーニングを紹介しました。
筋力低下は加齢や病気などにより引き起こされ、日常生活やQOL(生活の質)の低下に関係しますが、筋力は何歳になってもトレーニングで回復させることが可能です。
加齢にともなって下半身の筋力が落ちてきたり、サルコペニアなどによって歩く力が弱くなったりしてきた場合には、レジスタンス運動が推奨されているので、今回紹介したトレーニングをこまめに行なうとよいでしょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。