ビタミンB6を過剰摂取した際のリスクとは?
耐容上限量についても解説

ビタミンは、私たちの体の機能を正常に保つために欠かせない栄養素です。
その性質から、水溶性と脂溶性に分けられますが、水溶性ビタミンの一つにビタミンB6があり、体内のさまざまな代謝のサポートとして重要な役割を担っています。

しかし、日頃からビタミンB6の摂取量を意識している方はそう多くはいらっしゃらないでしょう。

今回は、ビタミンB6を過剰に摂った場合のリスク、耐容上限量を解説します。

1.ビタミンB6について

まずは、ビタミンB6の概要や体内での働きについて解説します。

1-1.ビタミンB6とは

ビタミンB6は水溶性ビタミンの一種です。

ビタミンB6の活性を有する化合物には、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサールの3つが存在します。

ビタミンB6は、生鮮食品の中ではリン酸やタンパク質と結合している状態にあります。消化の過程でピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサールに分解され、体内に吸収されるのです。

また、ビタミンB6は、光に対して安定していない、分解されやすいなどの特徴があります。

1-2.ビタミンB6の働き

ビタミンB6は、体内でどのような働きをしているのでしょうか。

ビタミンB6は、アミノ酸の代謝に関わる栄養素です。補酵素としてあらゆるアミノ酸代謝のサポートをしています。

また、免疫機能の維持、皮膚の抵抗力増加、赤血球のヘモグロビン合成、神経伝達物質の生理活性アミン代謝の補酵素としても働きます。ラセミ化や脱水素反応時の補酵素として作用するほか、ホルモン作用の調整にも関与しています。

このようにビタミンB6は体内で重要な役割を担っていますが、不足した場合は以下のようなリスクが高まるとされています。

  • ・貧血

  • ・免疫力の低下 など

2.ビタミンB6を過剰摂取した際のリスクについて

ビタミンB6を過剰に摂取した場合、以下のようなリスクの可能性が示唆されています。

  • ・骨の疼痛

  • ・筋肉の脆弱

  • ・精巣の萎縮

  • ・精子減少 など

そのため、食事摂取基準において、ビタミン6の耐容上限量が設けられています。

通常の食品をとっていて、ビタミンB6の摂りすぎによる健康障害が現れたという報告はありません。

とはいえ、ビタミンB6は野菜類や穀類、魚介類、種実類など、普段口にするものに多く含まれているため、食事内容は偏りすぎないように気をつけましょう。

3.ビタミンB6の耐容上限量とは?

ビタミン6の耐容上限量は、以下のとおりです。

n-ビタミン6耐容上限量(mg/日)
性別 男性 女性
年齢 耐容上限量(mg/日) 耐容上限量(mg/日)
0〜5カ月
6~11カ月
1〜2歳 10 10
3〜5歳 15 15
6〜7歳 20 20
8〜9歳 25 25
10〜11歳 30 30
12〜14歳 40 40
15〜17歳 50 45
18~29歳 55 45
30~49歳 60 45
50~64歳 55 45
65~74歳 50 40
75歳以上 50 40
妊婦(付加量)
授乳婦(付加量)


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が一日の必要量を満たすと推定される一日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

ビタミンB6の過剰摂取にならないように適切な量を守ろう

ビタミンB6は水溶性ビタミンの一つです。体内ではエネルギー産生栄養素であるタンパク質・脂質・炭水化物の代謝をサポートする補酵素として働くなど、さまざまな役割を担う重要な栄養素です。

過剰に摂りすぎた場合のリスクは報告されているため、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」でも耐容上限量が設けられています。

ただし、通常の食事を摂っていれば過剰症のリスクは少ないといわれています。

とはいえ、ビタミンB6は野菜・魚介・種実類や穀類などに多く含まれているため、栄養の偏りには注意してバランスの良い食事を心がけましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。