1.血管迷走神経反射とは?
ここでは、血管迷走神経反射の仕組みや症状について解説します。
1-1.血管迷走神経反射の仕組み
血管迷走神経反射とは、緊張やストレスなどが原因で血圧の低下や脈拍の減少などを起こし失神することです。
血管迷走神経反射が発症するきっかけには、自律神経の反射が関係しています。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、それぞれ異なる役割を持っているのが特徴です。
交感神経は、おもにストレスを受けたときや緊急事態が起こったときに優位になります。血圧や心拍数を上昇させるのが交感神経の働きです。
一方で副交感神経は、血圧や心拍数を下げ、体を回復させる役割があります。さらに消化管の機能を助け、健やかな体に導くための重要な神経です。
このように交感神経と副交感神経のバランスが良いと、健康的な状態が続きます。
しかし、さまざまなことが原因で交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、交感神経の働きが抑制され副交感神経である迷走神経が緊張状態になります。
その結果、血圧と心拍数が極端に減少し、失神するのが血管迷走神経反射です。
1-2.血管迷走神経反射の症状
血管迷走神経反射は、突然失神することもある一方で、失神前に前駆症状を自覚する方もいます。特徴的な前駆症状は次のとおりです。
2.血管迷走神経反射が起こるおもな原因
血管迷走神経反射は、おもに身体・精神要因・環境要因が原因となって起こります。
身体・精神要因としては、長時間同じ姿勢でいることや疲労、睡眠不足などが考えられるでしょう。例えば、立ったままや座ったままの状態が長時間続くと、血管迷走神経反射が起こりやすくなり、痛みや緊張、恐怖なども要因になります。
環境要因としては、人混みや閉鎖された空間などにいることでも血管迷走神経反射が起こりやすくなります。
血管迷走神経反射は、ほとんどの場合で後遺症は残りません。しかし、失神した際に転倒して怪我をするケースもあるため、注意が必要です。また、血管迷走神経反射を含む神経調節性失神を起こした方の約3人に1人が2~3年間で再発してしまう傾向があります。
それでは、血管迷走神経反射はどのようにすれば予防できるのでしょうか。次からは、血管迷走神経反射を予防する方法について解説していきます。
3.血管迷走神経反射の予防方法
血管迷走神経反射が起こるおもな原因には、睡眠不足や疲労があるため、十分に睡眠を取りストレスを抱え込まないようにすることが大切です。
また、長時間立っていたり座っていたりして、同じ体勢を維持することも良くありません。そのため適度に体を動かし、同じ体勢を取り続けないようにしましょう。
万が一、血管迷走神経反射の前兆が現われたら、その場でしゃがんだり、横になったりすることが重要です。もしくは、次のように体を動かしてみてください。
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・ 立っている場合は足だけを動かす
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・ 座っている場合は足を交差させて組む
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・ お腹を抱えるようにして、しゃがむ
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・ 両腕を組んでから引っ張り合う
血管迷走神経反射の前駆症状を感じたら、このような行動を取って身を守りましょう。
十分に休息を取って血管迷走神経反射を予防しよう
血管迷走神経反射は、ほとんどのケースで後遺症も残らず、失神から数分で回復するタイプの失神です。しかし、失神の際に転倒すると、外傷を負う可能性があります。そこで、血管迷走神経反射が起こる直前の前駆症状が起こったら、すぐにしゃがんだり横になったりしましょう。
また血管迷走神経反射を予防するためには、同じ姿勢でいることを避けて、しっかり休養を取りストレスを溜めないことが大切です。過去に血管迷走神経反射になった方の約3人に1人は2~3年以内で再発するため、発症したことがある場合は日常生活の過ごし方などには十分に注意しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。