1.内臓脂肪について
内臓脂肪の落とし方の前に、まずは内臓脂肪がどのようなものなのかご説明します。
1-1.そもそも内臓脂肪とは?
内臓脂肪は、体脂肪の一種であり、内臓の周辺につく体脂肪のことです。内臓には、多くの血管が通っており、エネルギーが必要になると血流に乗って分解された内臓脂肪は肝臓に移動します。その後、肝臓から全身に届けられるのです。
内臓脂肪は、腹囲に付きやすい特徴があるため、メタボリックシンドロームの診断基準の一つにウエストのサイズがあります。
1-2.内臓脂肪とメタボリックシンドロームの関係
メタボリックシンドロームは、日本語にすると代謝異常症候群と呼ばれます。内臓脂肪の蓄積に加えて、高血圧や糖尿病など複数の危険因子をともなうと、心臓や脳にダメージをきたし重大な病気に発展しかねません。このように内臓脂肪と複数の危険因子をともなっている状態がメタボリックシンドロームなのです。
日本には、約1,000万人のメタボリックシンドローム患者がいるとされています。
メタボリックシンドロームの具体的な判断基準は、男性の場合ウエストが85cm以上、女性で90cm以上であり、次の項目の2つ以上が当てはまることです。
メタボリックシンドロームになる原因は、食べ過ぎと運動不足によって内臓脂肪が蓄積することです。
そこで内臓脂肪を落とすためには基本的に、食べ過ぎを止めて適度に運動することが必要になります。
2.日常生活でできる内臓脂肪の落とし方
ここでは、日常生活で内臓脂肪を落とす4つの方法について解説します。
2-1.運動習慣を身につける
内臓脂肪を落とすために、日々の生活に運動習慣を取り入れましょう。
運動には、有酸素運動と無酸素運動があります。
有酸素運動は、体にかかる負担が少なく、筋肉を動かすエネルギーとして体内の糖質や脂質、酸素を使用する運動です。一方で無酸素運動は、短時間で大きな負荷を体にかけて筋肉を動かし、酸素をエネルギーとして使用しない運動になります。この両者の違いから、内臓脂肪を減らす運動として適しているのは、エネルギーとして脂肪を使う有酸素運動といえるでしょう。
有酸素運動には、エアロバイク・水泳・ウォーキング・ジョギングなどがあります。脂肪がエネルギーとして使われ始めるのは、運動開始からおよそ20分後以降です。よって、脂肪燃焼を期待する場合は自分が長時間続けられる運動を選ぶとよいでしょう。
2-2.食生活を整える
食事を抜くとかえって太りやすくなるため、食生活を整えることが大切です。食事をとることで胃や腸が動き、エネルギーを消費できます。このエネルギー消費は、朝が特に高く、夜には低下するのが特徴です。そのため、朝食をしっかり食べることによって体温が上がり、代謝アップも狙えるでしょう。一日3食の規則正しい食生活を意識することで、太りにくい体を作ることができます。
2-3.睡眠をしっかりとる
睡眠不足の場合、食欲に関連する「グレリン」というホルモンが多く分泌され、強い空腹感を覚えます。その一方で、満腹感を得られる「レプチン」というホルモンの分泌量は低下するため、いつまでも満腹感を得にくくなるでしょう。実際、一日の睡眠時間が6時間未満の場合、7~9時間の睡眠と比較して、肥満になる確率が30%も高まるという報告があります。
2-4.体を冷やさない
内臓脂肪を減らすためには、基礎代謝を上げて体を冷やさないことも大切です。
基礎代謝は、「太りやすい」「太りにくい」といった体質に大きく影響しています。そのため、基礎代謝を上げることは消費エネルギーのアップにもつながるのです。
また、体温が1度上がると、基礎代謝は13%程度高くなるといわれており、体温を上げることも基礎代謝アップにつながります。
なお、睡眠不足やエアコンの使い過ぎは体を冷えやすくするものです。体の冷えは基礎代謝が低下する原因になるため、体を温める生活を意識しましょう。
内臓脂肪を落とすためには生活習慣を見直しましょう
内臓脂肪は、便利なエネルギー源として重宝されています。しかし、内臓脂肪が多すぎるとメタボリックシンドロームと診断されることもあり、健康に対して悪影響をもたらすこともあるため、注意が必要です。
内臓脂肪を落とすためには、運動習慣・食生活・睡眠の改善、体を冷やさないなどの方法があります。つまりは、普段の生活習慣の見直しと改善が大切です。
内臓脂肪を減らし、健康的な毎日を過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。