1.低体温症とは
低体温症とは、深部体温(体の中心部の温度)が35度を下回ることにより、体の機能を正常に維持できなくなる状態です。
低体温症は温度によって重症度が変わり、深部体温が32~35度の場合は軽症、28~32度では中等症、20~28度になると重症となります。重度の低体温症になると凍死につながるおそれがあり、大変危険です。中等症以上では、死亡率が40%にのぼるというデータも報告されています。
日本における凍死は、熱中症による死亡と発生率があまり変わりません。凍死の75%は家などの屋内で発生し、65歳以上の高齢者が全体の80%を占めています。凍死は熱中症ほど知られていないため、発見されにくく対処が遅れてしまうのが特徴です。
凍死と聞くと、非常に寒いところで起きるものというイメージがあるかもしれません。しかし、真冬だけでなく気温15~19度でも発症することがあるため、暖かくなってきた時期でも注意しましょう。
2.低体温症のおもな症状
低体温症のおもな症状は、体が冷えることによる激しい震えや意識障害などです。症状が進行すると最悪の場合、呼吸や心臓の動きが停止するおそれがあります。低体温症が起きていても、本人は低体温症にかかっていると気付かないケースも少なくありません。
低体温症に気付くポイントは体の震えです。体温が下がると、まず筋肉が震えて体温を上げようとします。しかし、カロリー(エネルギー源)を使い果たしてしまうと体の震えは止まり、その後はわずかな時間でも命を落とす危険性が高まります。そのため、低体温症を防ぐには、体が震えているうちに適切な対処をすることが重要です。
3.低体温症を防ぐ方法
低体温症は、体が冷えることと、体の冷えを補う十分な体温を作り出せなくなることで発症します。体を冷やす大きな要因は次の3つです。
山などでは、標高が1,000m上がるごとに気温はおよそ6度下がるため、標高が高い山へ行く際は気温の低下に注意しましょう。
風の強さも体温の低下に大きな影響を与える要因です。風速が1m強くなると、周りの気温がおよそ1度下がったように感じます。風を防げる服を着て、風に直接当たらないようにするなどを心がけましょう。
体温がより奪われやすくなる原因には、雨や汗によって体が濡れている状態にあることが挙げられます。体温の低下を防ぐためにも、雨が降っていたらレインウェアなどで濡れないようにするほか、濡れた服を早めに取り換えることが重要です。
低体温症を防ぐためには、熱を作り出すために食べ物を食べてカロリーを摂取することも大切です。カロリー摂取のためには、炭水化物をこまめに摂るのがよいでしょう。
体の冷えを防ぎ、体温を作り出すための方法を行なうことで、低体温症を防いで命を守ることにつながります。夏山登山であっても、決して油断せず十分な準備で臨みましょう。
低体温症の症状や対応法を知って身を守ろう
低体温症が起こると、体は正常に機能できなくなってしまいます。症状が進むと命に関わることもあるため、早めの対処が欠かせません。
低体温症を招く3つの要因は、低い気温と風の影響、濡れた状態です。登山などの際は、雨や風を防ぐレインウェアを着用し、エネルギー源となる炭水化物をこまめに摂りましょう。
いざというときに身を守れるよう、低体温症の症状や対策を覚えておくことをおすすめします。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。