1.カリウムとは
カリウムは細胞の中に多く含まれるミネラルで、ナトリウムを排出する役割を持ち、細胞の浸透圧を維持して細胞の機能を調整している、生命維持に欠かせない栄養素です。元素記号では、Kと表される金属元素です。
細胞の外側に多く含まれるナトリウムと対照的に、カリウムは細胞の中に含まれています。ナトリウムと相互に作用することで細胞の浸透圧を調整して、細胞が正常に機能するために重要な働きを担っています。塩分過多の調節や、筋肉の伸縮、神経伝達などの役割も担っています。
日本食は塩分が多いことから、日本人のナトリウムの摂取量は多い傾向にあります。そのため、ナトリウムの体外排出をサポートするカリウムの摂取は重要です。
人間の体内には120~200gほどのカリウムが含まれ、正常の血中濃度の基準値は男女とも3.6~4.9mEq/Lです。血液やリンパ液、骨などにあるごく一部を除き、そのほとんどがイオンやタンパク質と結合して細胞内に存在しています。
2.カリウムのおもな働き
カリウムは、過剰な塩分を体外に排出するほか、筋肉の収縮や神経伝達に関わり、細胞内の浸透圧や体内のpHバランスを保つ働きがあります。
3.カリウムの一日の摂取量目安
一日あたりの目安量は、18歳以上の男性で2500mg、目標量は3000mg以上です。
18歳以上の女性の場合は、一日あたり2000mgが目安量、2600mg以上が目標量とされています。
ここで用いる目安量とは、一定の栄養状態を維持するために必要な量であり、目標量は生活習慣病の予防を考慮した場合に摂っておきたい量のことです。
2012年に発表されたWHOのガイドラインでは、生活習慣病の予防を考慮する場合、一日あたり3510mgのカリウム摂取が推奨されています。
過剰摂取については上限量が設定されておらず、腎機能が正常の人ならば、特に心配はないでしょう。サプリメントで摂取する場合は用量を守って利用してください。
4.カリウムを多く含む食品
カリウムは、藻類や果実類、いも・でん粉類、豆類、肉類、魚介類、野菜などの食品や、生鮮食品に多く含まれています。
特に乾燥状態の藻類に多く含まれており、干しひじき(100gあたり6400mg)、乾燥わかめ(100gあたり7400mg)、刻み昆布(100gあたり8200mg)などが代表的です。
野菜類では、乾燥状態の切り干し大根(100gあたり3500mg)などに多く含まれています。
バナナや干しぶどう、アボカド、あんず、干し柿などの果実類、さつまいもやじゃがいもなどの芋類、生ハムなどの肉類、さわらやかんぱちなどの魚介類からも摂取が可能です。
このようにさまざまな食品に含まれますが、加工や精製のたびにカリウムの含有量は減少します。また、カリウムは水に溶ける栄養素のため、煮物や茹で物では水に溶け出します。調理せずに生のサラダや果物などから摂るとよいでしょう。
カリウムは腎機能の低下などに注意して摂取しよう
カリウムは体外にナトリウムを排出する役割や、筋肉の収縮、神経伝達に関係しており、生命維持に欠かせない栄養素です。
カリウムが欠乏することは少ないですが、下痢や汗を多くかいたときや利尿剤を使用しているときは欠乏する可能性があるため、注意が必要です。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。