1.サルコペニアのおもな症状
サルコペニアとは、年齢を重ねるにつれて筋肉が減っていく老化現象のことです。2016年には国際疾病分類に登録され、現在は疾患として認識されています。
筋肉量の減少は20代半ばから始まるとされ、それ以降は進行し続けます。実際には、40歳頃から減少して、70歳あたりから衰えを実感する方が多いでしょう。
サルコペニアの症状が現れると、立ったり歩いたりといった日常の動作がうまく行なえなくなります。放置すると歩行困難にもなってしまうので、老人の活動能力の低下の大きな原因となっています。サルコペニアの原因については活動量の低下、栄養状態の悪化などさまざまな要因が関連すると考えられていますが、詳細なメカニズムはまだ解明されていません。
日常の動作が難しくなることはQOL(生活の質)に強く影響するため、日頃から筋力トレーニングを行なったり、日常から活発的に過ごしたりしてサルコペニアを予防することが大切だと考えられています。
2.サルコペニアの症状が現れやすい部位
サルコペニアによる筋力の低下は「抗重力筋」という筋肉において、多くみられます。
抗重力筋は「姿勢維持筋」とも呼ばれ、重力に対して姿勢を保つ役割を持つ筋肉です。具体的には、太ももの前部分にある大腿四頭筋やお尻の筋肉である大臀筋、お腹の腹筋や背中に存在する背筋群が抗重力筋です。
抗重力筋はサルコペニアにより衰えやすい筋肉ですが、高齢であっても運動をすることで鍛えることができます。
サルコペニア対策のために、運動に慣れていない方はウォーキングやジョギングなどの比較的負荷の小さいものから始めるとよいでしょう。
軽い運動に慣れている方で、よりしっかりとサルコペニア対策を行ないたい方には、レジスタンス運動がおすすめです。
レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗をかける運動のことであり、スクワット・腹筋運動・腕立て伏せなどが該当します。
実際に行なうときは、無理のない範囲で10~15回ほどを、1~3セットを目安にするとよいでしょう。レジスタンス運動は筋肉に強い負荷をかける運動なので、一度行なったら2~3日は回復期間を設けることが必要です。
また、スロートレーニングといって、力を入れた状態でゆっくりとレジスタンス運動を行なう方法もあります。軽い負荷であっても、十分な筋肉増強効果を得られるため、関節への負荷は抑えられるといった点がメリットです。
筋力トレーニングをするときは無理をせず、自分に合った負荷で継続的に行なうようにしましょう。
3.サルコペニアの症状が進行するとどうなる?
サルコペニアの対策をせずに症状が進行した場合、どのような症状が現れるのかを見ていきましょう。
サルコペニアが進行すると、つまずきやすくなったり、立つときに手をつかなければならなかったりします。
つまずくことが増えても、本人や友人・家族は注意力不足が原因だと思うことが多く、サルコペニアの症状であることには気付かれにくいため、注意が必要です。
外見では手足が細くなったり、日常生活では重い荷物を持ち上げられなくなったりするような症状もみられます。人によっては転倒して怪我したり、介護が必要になったりすることもあるでしょう。
体の活動量が少なくなるとエネルギーの消費もされにくくなるため、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることも考えられます。
また、立ち上がるために必要な筋肉である大腿四頭筋の平均筋肉量は、80歳代と30歳代で比較すると倍近く差があります。日常生活が送りにくくなることから、QOL(生活の質)の低下にも影響する可能性があるでしょう。
運動やトレーニングでサルコペニアの対策をしましょう
サルコペニアの症状、症状が現れやすい部位、症状が進行するとどうなるかを説明しました。
サルコペニアは筋肉が衰えていく老化現象の一つであり、現在では疾患として分類されています。
症状は、抗重力筋と呼ばれる姿勢の維持に必要な筋肉に現れやすく、症状が進行すると、立つことや歩行が困難になるだけでなく、QOL(生活の質)の低下や生活習慣病のリスクを高める可能性もあります。
日頃から運動やトレーニングなどに取り組み、サルコペニアの予防を行なうことが大切です。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。