炭水化物と糖質の違いとは?それぞれの役割について解説

「炭水化物も糖質もよく耳にする言葉だけれど、どう違うのだろう?」

昨今、人気の高まっている「糖質制限」にチャレンジする際に、炭水化物と糖質を同一視して、むやみに炭水化物と糖質をどちらも避けようと考える方もいるかもしれません。

糖質は炭水化物の一種であるものの、厳密にはイコールではありません。過剰な糖質摂取は高血糖や肥満につながりますが、本来、糖質は人体のエネルギー源となる重要な栄養素です。

この記事では、炭水化物と糖質の違いとそれぞれの役割について解説します。

1.炭水化物と糖質の違い

炭水化物と糖質の定義から、この2つの違いを見てみましょう。

1-1.炭水化物

炭水化物とは、炭素と水素からできている物質のことです。「三大栄養素」の一つであり、脂質やタンパク質と合わせて「エネルギー産生栄養素」と呼ばれることもあります。

炭水化物は、ブドウ糖やガラクトース、果糖といった「単糖」と呼ばれる最小単位の糖質が、単体または複数つながった構造をしています。

また炭水化物は、ヒトの消化酵素で消化できるか否かによって「糖質」と「食物繊維」に分類が可能です。

1-2.糖質

糖質とは、炭水化物のうち消化してエネルギー源にできるもののことです。炭水化物のなかから、食物繊維を除外したものの総称ともいえるでしょう。糖質は分子構造によって、単糖類、少糖類、多糖類に細分化が可能です。

1つの単糖からなる糖質を単糖類、2~10個程度の単糖が結合するものを少糖類、多くの単糖が結合する糖質を多糖類といいます。なお、特定保健用食品やサプリメントなどに用いられる「オリゴ糖」は、少糖類の仲間です。

2.炭水化物と糖質の役割

炭水化物と糖質の役割について、それぞれ詳しく解説します。

2-1.炭水化物の役割

先述したように、炭水化物は糖質と食物繊維に分類されるため、炭水化物の役割は糖質と食物繊維に分けて解説します。

炭水化物のうち、糖質の役割はエネルギーを産生して人体の機能を維持することです。炭水化物から摂取されるエネルギーの大半は、糖質由来とされています。消化吸収された糖質は血液中のブドウ糖として存在し、エネルギー源として脳をはじめ全身に供給されていきます。

一方、炭水化物のうち、食物繊維は大腸まで未消化で到達し、整腸作用を発揮します。血糖値の上昇を緩やかにしたり、血中コレステロール濃度を低下させたりするのも食物繊維の働きです。食物繊維も腸内細菌によってわずかにエネルギーを産生すると考えられていますが、食物繊維の役割としては、整腸作用などで生活習慣病を予防する部分が注目されています。

2-2.糖質の役割

糖質の役割は、1gあたり約4kcal/gのエネルギーを生み出すことです。摂取された炭水化物の多くはブドウ糖として血中に存在しています。

赤血球や脳、神経、腎臓の尿細管などは、原則的にはブドウ糖以外の糖質をエネルギー源にできないため、ブドウ糖の役割は非常に重要です。特に脳は、体重の2%ほどの重量しかないにもかかわらず、総基礎代謝量の約20%というたくさんのエネルギーを消費します。そのため、脳をしっかり働かせるには、一日120g程度のブドウ糖が欠かせません。

血液中のブドウ糖濃度を血糖値と呼び、血糖値はヒトの体内で分泌されるインスリンやグルカゴンなどのホルモンの影響を受け、一定範囲内に調整されています。体内で過剰となった糖質の大半は中性脂肪に変換されて蓄積され、残りは多糖類のグリコーゲンとして筋肉や肝臓に蓄えられます。

また、糖質の一種であるオリゴ糖には、大腸で善玉菌のエサとなって善玉菌を増殖させる働きがあります。

炭水化物と糖質の関係性を理解し、バランスの良い食生活を心がけましょう

糖質とは、炭水化物のうち食物繊維以外のものの総称であり、エネルギーを生み出して人体に供給するための重要な物質です。

糖質は、構造によって単糖類、少糖類、多糖類などの種類に分けられますが、いずれも食品から摂取されると消化・吸収され、多くは血液中のブドウ糖になります。ブドウ糖は、脳をはじめとした全身のエネルギー源として、極めて重要な役割を担う物質です。

糖質を摂りすぎると高血糖や肥満につながりますが、糖質は人体の機能を正常に維持するうえで欠かせません。バランスの良い食生活を送り、糖質を適切に補っていきましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医