1.HDL(善玉)コレステロールを増やさなければならない理由
コレステロールは水に溶けない脂質の一種で、血液中ではタンパク質とくっついたリポタンパク質として存在しています。
リポタンパク質は大きく分けると、HDLコレステロール(高密度リポタンパク、high density lipoprotein)とLDLコレステロール(低密度リポタンパク、low density lipoprotein)の2種類があります。
HDLコレステロールは血管に溜まっているコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きがあるため、善玉コレステロールともいわれています。一方、LDLコレステロールは肝臓に溜まっているコレステロールを体中に運ぶため、別名・悪玉コレステロールと呼ばれます。
健康のためには、余ったコレステロールを回収するHDLコレステロールが体内に一定量必要です。そのため、HDLコレステロールが40 mg/dLを下回ると、低HDLコレステロール血症とされ、脂質異常症と診断されます。
脂質異常症とは、中性脂肪やコレステロールなど脂質代謝が正常に機能しない状態をいい、血管が詰まる危険因子となります。
2.HDL(善玉)コレステロールを増やすために心がけたい生活のポイント
健康のためには、HDLコレステロールを一定以上に保つことが重要です。ここでは、自分でできるHDLコレステロールを増やすための生活習慣を4つ紹介します。
2-1.禁煙する
喫煙は、HDLコレステロールを減らす原因の一つと考えられています。たばこを吸っている人は内臓脂肪の量に関わらず、HDLコレステロール値が低い傾向があるという研究報告があります。禁煙することでHDLコレステロールを増やせると見込めるため、喫煙している方は、健康のためにも禁煙しましょう。
2-2.運動をする
運動習慣は、脂質異常症の人だけでなく健常者でもHDLコレステロールを増やす効果が期待できます。おすすめは、ふつうのウォーキングくらいの強度の有酸素運動です。
忙しくてなかなか運動時間をつくれない場合は、短時間の運動を数回に分けても大丈夫です。一日合計30分以上の運動を、毎日続けてください。難しい場合は、最低でも週3日以上続けるとよいでしょう。
2-3.標準体重を維持する
HDLコレステロール値が低いときは、トリグリセライド値が高いことが少なくありません。この場合は、肥満や喫煙、運動不足などが関係していると考えられています。肥満タイプの人は、体重を減らすとHDLコレステロールが増える可能性があります。健康のためにも、標準体重キープを心がけましょう。
2-4.食事の内容に配慮する
HDLコレステロール値を増やすには、食生活の見直しも大切です。豆腐や納豆など大豆製品に含まれる大豆タンパクには、コレステロールを体に取り込むのを抑える作用があります。また、不飽和脂肪酸はHDLコレステロールを保ったまま、LDLコレステロールを下げてくれます。
不飽和脂肪酸は体内で合成できない必須脂肪酸で、オリーブ油に含まれるオレイン酸や、あじやさんまなど青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などがあります。これらの食品を積極的に食生活に取り入れましょう。
トリグリセライド高値も、HDLコレステロール低値につながる原因です。甘いものや油っこいもの、糖質の摂りすぎを避けましょう。
HDLコレステロールを増やすため生活習慣を改善しましょう
善玉コレステロールであるHDLコレステロールは、血管内に溜まった余分なコレステロールを回収する働きがあります。
40 mg/dL以下では低HDLコレステロール血症となり、脂質異常症と診断されます。HDLコレステロールを上げるためには、禁煙のほか、運動習慣を身に付けることが大切です。
また、標準体重の維持にも努め、食生活を見直してください。生活習慣を整えることでHDLコレステロール値を増やし、健康へとつなげましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。