1.肝機能は生活習慣の影響を受けやすい
ここでは肝機能の働きや肝臓と生活習慣の関係性について解説します。
1-1.肝臓の働き
肝臓は、私たちの体のなかでも一番大きい臓器といわれています。
肝臓の働きには、栄養素を体内で利用しやすい物質にして蓄える「代謝」、有害物質を分解して無毒化する「解毒」、脂質の消化吸収をサポートする「胆汁の生成と分泌」などがあります。
肝臓は日々の生活習慣に影響されやすいものの、痛みなどを感じる神経がありません。また、肝臓は予備能力が高く、ダメージを受けていても正常に機能し続け、自覚症状がなかなか現れにくいことから、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。
何かしらの症状が現れたときにはかなり病状が進んでいる可能性が高く、治療には長い時間がかかります。
1-2.肝臓と生活習慣
健康診断で見つかる肝機能異常のおもな原因は、脂肪肝といわれています。
脂肪肝とは、肝臓内の細胞に中性脂肪が溜まることで肝機能の低下をまねく疾患です。食事でエネルギーを過剰摂取すると、肝臓で中性脂肪が多く作られ、脂肪肝の要因となります。
肝機能の低下を予防するためには、暴飲暴食や運動不足など肥満につながるような習慣を改善しましょう。
また、喫煙や過労、ストレス、睡眠不足などの不健康な生活習慣は肝臓に負担がかかります。規則正しい生活を心がけましょう。
2.肝機能改善に効果が期待できる栄養素と食べ物
ここでは、肝機能をサポートする効果が期待できる栄養素や食べ物を紹介します。
2-1.タンパク質
タンパク質は、肝細胞の修復や機能の回復に必要な栄養素です。エネルギーの過剰摂取を防ぐため、鶏ささみや青魚、豆腐、卵などを適量摂りましょう。
2-2.ミネラル
ミネラルは、肝臓の代謝や解毒、胆汁の生成や分泌などの働きをする過程で欠かせません。野菜や海草類、きのこ類から摂取できます。
2-3.抗酸化ビタミン(ビタミンA・C・E)
肝臓内で活性酸素が増えると、肝機能の低下をまねく恐れがあります。
活性酸素は、呼吸によって取り込む酸素から作られます。人間には本来、酵素によって活性酸素を抑える働きが備わっていますが、年齢とともに体内で生成される酵素の量は減っていきます。
そこで、日常生活で活性酸素の害を最小限に抑える工夫が必要です。なかでも重要なのは、毎日の食事です。バランスの良い食事を心がけ、活性酸素から肝臓を守るために抗酸化成分を含む食品も意識して摂りましょう。
活性酸素の働きを抑える作用がある「抗酸化ビタミン」には、ビタミンAやビタミンC、ビタミンEなどがあります。それぞれのビタミンを多く含んでいる食品は、以下のとおりです。
ビタミンA
緑黄色野菜・ウナギなど
ビタミンC
レモン・パセリ・みかん・ブロッコリーなど
ビタミンE
アーモンド・大豆類・青魚・ブロッコリーなど
2-4.タウリン
タウリンは肝臓の解毒作用を高め、肝機能をサポートします。貝類やタコ・エビなどの魚介類に多く含まれているため、積極的に摂るとよいでしょう。
肝機能を改善するために食生活を見直しましょう
肝臓は、毎日の生活習慣による影響を受けやすいですが、痛みなどの自覚症状が現れにくいため、気付かないうちにダメージが蓄積される可能性があります。
日頃から適度な運動や休息を心がけるなど規則正しい生活を意識すれば、肝臓をいたわることができます。
肝臓に良いとされる栄養素は、タンパク質やビタミン、ミネラル、タウリンなどです。偏らずにさまざまな食品をバランス良く食べて、肝臓の健康を維持しましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。