肝臓に違和感がある場合に考えられる病気やおもな症状とは?
肝臓の特徴について紹介

「肝臓あたりに違和感がある。何かの病気なのだろうか……」
肝臓付近に違和感があり、不安になったことのある方もいらっしゃるかもしれません。

肝臓はさまざまな栄養素の代謝や有害成分の分解など、重要な役割を果たす臓器です。
「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、病気になっても自覚症状を感じにくい臓器であり、かなり病状が悪化してから初めて不調が出る場合があるため注意が必要です。

今回は肝臓の特徴や、おもな肝臓疾患の症状などを解説します。

1.肝臓は「沈黙の臓器」

肝臓は有害成分の分解や、胆汁の産生・分泌による脂肪の消化吸収など、数百種類以上の代謝に関与する重要な臓器です。肝臓には痛みを感じる神経がなく、障害を受けても自覚症状はほとんどありません。

予備能力が高いため、よほど深刻な障害を受けない限りは正常に働き続けることができ、沈黙の臓器とも呼ばれています。

無自覚のうちに肝臓疾患が進行していき、不調を自覚し始めた頃にはすでに深刻な状態に陥っているケースもあるため、注意が必要です。肝臓の病気が悪化すると長期間の治療が必要となることもあります。

2.肝臓に違和感がある場合に考えられる病気とおもな症状

肝臓あたりに違和感のある方は、次のような肝臓疾患を理解しておくと安心です。気になる不調がある場合には、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。

2-1.急性肝炎

急性肝炎は、肝炎ウイルスや薬剤などによって急激に肝細胞が破壊され、肝機能障害が起こる病態です。発熱や倦怠感、頭痛などが初期症状です。初期症状が出ない方もいますが、進行すると右上腹部痛や黄疸、食欲不振や吐き気などが出現します。黄疸が悪化した際には、尿が濃い褐色になったり、腹や白目が黄色くなったりします。

急性肝炎は自然治癒しやすい病気ですが、まれに劇症肝炎などの重篤な状態に陥るため、注意が必要です。

2-2.慢性肝炎

慢性肝炎はB型、C型肝炎ウイルスや長期常用中の薬剤などが持続的に肝細胞を破壊することで発症する肝炎です。代表的な自覚症状は微熱や倦怠感などですが、無症状のケースもあり、血液検査で慢性肝炎を指摘される方もいます。肝硬変などにつながるリスクがあるため、定期的な経過観察が必要です。

2-3.肝硬変

肝硬変はさまざまな肝臓疾患が悪化した際の最終的な病状であり、肝細胞が破壊されて肝臓の表面が硬くなります。

残存した肝細胞が機能できる「代償期」と呼ばれる段階では、自覚症状はほとんど見られません。しかし、肝硬変が非常に悪化して「非代償期」と呼ばれる状態になると、黄疸や腹水貯留、異常行動、肝性昏睡、食道静脈瘤破裂などが出現します。非代償期には、手掌紅斑(掌が赤くなる)や女性化乳房(男性の乳房が女性のようにふくらむ)などの身体所見も見られます。

肝臓に違和感がある方は医療機関へ早めの相談を

肝臓は痛みを感じる神経がなく、予備能力の高さから深刻な障害が起こらない限りほぼ正常に働き続けるため、「沈黙の臓器」と呼ばれています。

無自覚のまま病状が進行してしまい、気付いたときには重篤な状態に陥っている場合もあるため、注意が必要です。

定期健診などにより肝機能の悪化を早期に発見できれば、適切な治療を開始できます。気になる不調がある方は、まずは医療機関へ相談しましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。