気管支や胸のあたりが苦しい・痛い場合に考えられる
病気やおもな症状を解説

「咳が止まらず、気管支のあたりが痛む」など、呼吸器の症状や気管支の痛みで悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

気管支は空気の通り道であり、鼻や口から吸い込まれた空気が肺へと至るまでに通過する部分です。気管支がさまざまな原因により傷害されると、炎症が起こって痛みにつながる可能性があります。

今回は、気管支の概要と気管支に痛みを感じるときに注意すべき病気を解説します。

1.気管支について

気管や気管支は、空気の通り道です。鼻腔や口腔から吸い込まれた空気は、咽頭・喉頭の先にある気管、気管支、細気管支を通り抜け、肺へと至ります。

のど(咽頭・喉頭)の先には太い気管が存在し、気管が分岐して気管支になり、さらに細かい分岐を繰り返して気管支はどんどん細くなっていきます。内径1~2mmの細い気管支は、細気管支という部分です。細気管支は、気管支から肺に移行する箇所となっています。

2.気管支や胸のあたりが苦しい・痛い場合に考えられる病気とおもな症状

気管支や胸のあたりに苦しさや痛みを感じる場合には、以下のような呼吸器疾患に罹患している可能性があります。診断の際には自覚症状だけでなく、胸部X線写真や痰の培養検査なども必要となるため、気になる症状がある方は呼吸器科を受診しましょう。

2-1.慢性気管支炎

慢性気管支炎とは、気管や気管支の粘膜に慢性的な炎症が起きている病態のことです。原因を特定できない咳や痰が長期間続いて、気道が狭くなり息を吐き出しづらくなる「気流制限」という症状が起こります。気流制限は、肺の病気である「肺気腫」でも起こるもので、慢性気管支炎と肺気腫はまとめて「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」と呼ばれています。

慢性気管支炎や肺気腫の最大の要因は、喫煙です。受動喫煙の健康被害は喫煙者を上回るともいわれているため、喫煙者本人だけでなく家族や周囲の方も慢性気管支炎などの疾患リスクを抱えます。慢性気管支炎の予防と症状軽減には、禁煙や受動喫煙対策が重要です。

2-2.気管支拡張症

気管支拡張症とは、何らかの原因によって気管支が拡張し、もとに戻らなくなる状態のことです。気管支が広がった箇所には分泌物が溜まりやすくなるため、カビや細菌が繁殖します。感染が繰り返し起こり、炎症が悪化していくのが特徴です。

気管支拡張症では慢性の咳と痰が見られ、感染したら血痰や喀血が起こる場合もあります。また、慢性副鼻腔炎を併発するケースもしばしば見られます。気管支拡張症のおもな原因は、気道感染症や先天性疾患などです。

2-3.気管支喘息

気管支喘息とは、気管支がアレルギーなどによって慢性的な炎症を起こして過敏になり、気道が狭くなる病気です。何らかの刺激をきっかけに、喉がぜいぜいする「喘鳴(ぜんめい)」や咳、痰などの症状が出て呼吸が苦しくなります。

気管支喘息は治療が可能ですが、きちんと治療や予防をしないと発作を繰り返すため、注意が必要です。気道の炎症が持続すると、気道粘膜が損傷を受けて、気道構造の変化が起こる場合があります。

子供の喘息の原因はダニやカビなどのアレルギー物質へのアトピー反応によるものが多く、適切な治療によっておよそ半数の患者が成人までに治癒するといわれています。

一方で、成人の喘息は非アトピー性の割合が高く、慢性化や気道障害による気道組織の構造変化をともなう重症例が多いのが特徴です。成人してから初めて喘息を発症する患者も多く、小児期に喘息の既往歴がない方も注意が必要です。喘息が重篤化すると、呼吸が困難になることもあるため、きちんと治療してコントロールすることが大切です。

気管支の痛みがある場合は医療機関へ

息苦しさや咳、痰など、呼吸器症状にともなって気管支の痛みや苦しさを感じる場合には、さまざまな呼吸器疾患が関連している可能性があります。適切な診断を受けるには、医療機関への受診が欠かせません。

たばこの煙に含まれる有害物質は呼吸器にも悪影響をおよぼすため、気管支が痛い方や苦しい方は積極的に禁煙を検討することをおすすめします。気管支や胸当たりの苦しさや痛みを放置せず、受診や禁煙など、適切な対処をしましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。