1.睡眠時無呼吸症候群(SAS)について
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)について、まずは概要や分類を見てみましょう。
1-1.睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸しない、または呼吸できない状態が断続的に繰り返される病気です。
医学的には、呼吸が10秒以上停止する状態が睡眠中に30回以上生じるケースや、無呼吸の状態が睡眠1時間あたり5回以上生じるケースを、睡眠時無呼吸症候群と呼びます。
浅く質の悪い睡眠によって脳が慢性的な熟睡不足となるため、日中に強い眠気が生じたり、記憶力や集中力を欠いたりするでしょう。結果として、居眠り運転や業務効率の低下を招き、社会的な問題となるケースもあります。
1-2.睡眠時無呼吸症候群には2つのタイプがある
睡眠時無呼吸症候群は、「閉塞型」と「中枢型」の2つのタイプに分けられます。
多く見られる閉塞型は、声帯までの空気の通り道が塞がって無呼吸状態になるタイプです。一方の中枢型は、脳の呼吸中枢の働きに異常が生じ、脳から呼吸の指令が届かず無呼吸状態になるタイプを指します。
2.睡眠時無呼吸症候群が引き起こすおもな症状
睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まることで空気中の酸素を血液に取り込めず、酸欠状態になります。一方、脳は筋肉を動かして酸素を取り込もうとするため、そのたびに目が覚めます。これを一晩中繰り返すことで、熟睡感が得られず、昼間に強い眠気を感じるでしょう。
眠っている間は、大きないびきをかいたり、尿量が増えて何度もトイレに行きたくなったりすることがあります。
また、記憶力や集中力の低下、起床時の頭痛・頭重感・喉の渇き、肥満、気分の落ち込みなども、睡眠時無呼吸症候群により引き起こされる症状です。
3.睡眠時無呼吸症候群の原因とは?
睡眠時無呼吸症候群は、おもに声帯までの空気の通り道が塞がることで起こります。その原因として最も多いのが、肥満にともなう首・顎・舌周辺への脂肪の蓄積です。
ただし、日本人は欧米人と比べて顎が小さいため、やせている方でも睡眠時無呼吸症候群になりやすいとされています。
また、舌が大きい・鼻が曲がっている・扁桃腺が肥大している・上気道を広げる筋力が低下しているといったことも、睡眠時無呼吸症候群の原因となるでしょう。
4.睡眠時無呼吸症候群の予防方法
睡眠時無呼吸症候群の原因の大半は肥満であることから、まずは肥満を避けるのが重要です。
食べすぎや運動不足といった生活習慣を見直し、適正体重を目指して減量すると、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されることが多くあります。
また、就寝前のアルコールの摂取は、喉の筋力を弱めて気道を塞ぎやすくしてしまうため、節度ある適度な量にするようにしましょう。
睡眠時無呼吸症候群の予防には生活習慣の改善が大切
昼間の強い眠気や記憶力・集中力の低下、起床時の頭痛など、さまざまな症状を引き起こす睡眠時無呼吸症候群は、肥満がおもな原因です。
したがって、肥満を解消することが、睡眠時無呼吸症候群の予防・改善につながります。
適正体重を目指し、食事の量・時間・回数を見直すとともに、継続的な運動習慣を身につけましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。