食後すぐにお風呂に入らないほうが良い?
安心してお風呂に入るためのポイントとは

お風呂は一日の終わりに、体を清潔にして温めてくれるため、湯船に浸かると一日の疲れが癒される方も少なくないでしょう。

快眠のためには、就寝の1~2時間前の入浴が良いともいわれますが、一方で、食後の入浴には注意が必要ということをご存じでしょうか。

今回は、食後の入浴がおすすめできない理由や、安心して入浴するためのポイントなどを紹介します。

1.食後すぐにお風呂に入らないほうが良い理由

食事をとってすぐに入浴することをおすすめできない理由には、次のような点が挙げられます。

1-1.血圧が下がりやすい

食事をとると、消化のために血液が胃腸に集まり、脳への血流が低下します。そのため、食後30分~1時間前後は、食事性低血圧を起こしやすくなっています。特に高齢者の場合、食後低血圧を起こしやすく、ひどい場合は失神することもあるため、食後すぐの入浴は注意が必要です。

1-2.消化不良を起こしやすい

食後には、本来ならば胃腸に血液が集中し、食べたものを消化します。しかし、食後すぐに入浴すると体の表面に血液が集中して胃腸に十分な血液が回らず、消化不良を起こしやすくなります。

1-3.心臓に負担がかかる

食後すぐに胃腸に血液が集中した状態で入浴すると、心臓に負担がかかりやすい状態になります。また、満腹の状態だと胃が持ち上がり、心臓を圧迫して負担をかけるおそれがあるのです。

2.食後にお風呂に入るならどれくらい時間を空けるべき?

食後すぐに入浴すると、血圧の低下など体に負担がかかります。では、安全な入浴のためには、食後どの程度時間を空けるとよいでしょうか。

目安となるのは「食後1時間」といわれています。食後1時間以内では、血圧が下がりやすいため、湯船での失神など危険な事故につながりかねません。したがって、食後に入浴する場合は、最低でも1時間はゆっくり休んでから、入浴するのがおすすめです。

3.食後でも安心してお風呂に入るためにすべきこと

食事をとったあとにお風呂に入る場合は、血圧の低下や心臓への負担などに注意してください。ここでは、安心してお風呂に入るための注意点を紹介します。

3-1.しっかり水分補給しておく

長い時間入浴していると、汗をかいて体内の水分が失われていきます。脱水症状になると血液がドロドロになり、熱中症や心臓発作、意識障害につながる危険性があります。

予防のためには、お風呂に入る前に十分な水分補給をしておきましょう。

3-2.浴室を適温に調節しておく

急激な血圧の変化を防ぐために、特に寒い時期には、浴室を適温にしておくことが大切です。

例えば、暖かいリビングから寒い脱衣所に移動することで、血管が収縮し、血圧が上がります。裸になって寒い浴室に入るとさらに血圧が上昇し、その後、熱いお湯に浸かって体が温まると血管が広がり、血圧が下がります。このような急激な血圧の変化は、血管に大きな負担となります(ヒートショック)。

したがって、寒い時期には脱衣所や浴室を暖房器具で温めておくと安心です。また、浴室ではシャワーでお湯張りをしたり、お湯張りの間に風呂蓋を開けたりして、湯気で浴室内を温めてもよいでしょう。

3-3.お風呂の温度を41度以下に設定しておく

個人差はありますが、湯船のお湯の温度が42度以上になると、交感神経が刺激されて血圧が上がるなど血圧の変動が大きくなるといわれています。また、42度のお湯に10分浸かると、体温が38度近くまで上がり、意識障害を起こす可能性があります。

お湯の温度は41度以下にし、長風呂は止めて、お湯に浸かる時間は10分までにしましょう。心臓や肺に不安のある方は、38度くらいのお湯にすると体への負担が軽減できます。

3-4.かけ湯をしてからお湯に浸かる

湯船に浸かる前には、血圧の急激な変化を防ぐために、かけ湯をしましょう。かけ湯は心臓から遠い手足の先から始めて、徐々に体の中心部にかけるという順番で行なってください。

食後1時間はお風呂への入浴を避け体への負担をかけないようにしましょう

食後すぐに入浴すると、血圧の低下などを招き、体への負担が大きくなってしまいます。

したがって、食後は1時間程度休んでから入浴すると、安心です。

脱衣所や浴室の保温やお風呂の温度など、体に負荷がかからない安全な入浴方法を取り入れて、日々のお風呂を楽しみましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。