早食いと肥満の関係性
よく噛むことのメリットや早食い防止の工夫を紹介

忙しい現代人には、ファストフードなど時間をかけずに食べられるものが好まれる傾向にあり、昔に比べて噛む回数が減ってきているとされています。

しかし、早食いをすると肥満を招きやすいため、注意が必要です。

今回は、早食いによって肥満につながる理由やよく噛むことのメリット、自然と早食いを抑える方法を紹介します。

1.早食いをするとなぜ肥満になるといわれているのか?

早食いだと肥満のリスクが上がりやすいといわれていますが、これはなぜなのでしょうか。これには、ヒトの体の仕組みが関係しています。

ヒトは、食事を始めてから満腹感を得るまでに20分以上を要しますが、早食いだと満腹だと感じる前に食べ物を多く摂取してしまいやすいためです。

実際に、2009年に行なわれた国民健康栄養調査では、性別に関わらず、高い肥満度の人ほど食事のスピードが速い傾向にあるという結果が出ています。

以上のように、早食いはメタボリックシンドロームにも関係し、体重の増加やお腹回りのサイズアップにも影響しています。

2.早食いをやめてよく噛むことのメリット

近年は、ファストフードなどの普及により、以前よりも噛む回数や食事にかける時間が減ってきている傾向にあります。しかし、よく噛むことは、私たちの体にたくさんのメリットがあるため、意識して噛むようにする必要があるでしょう。

厚生労働省からは、食事の際の噛む回数を一口あたり30回以上とすることを目標とした「噛ミング30(カミングサンマル)」が掲げられています。

では、よく噛むとどのような健康効果が期待できるのでしょうか。以下に挙げていきます。

  • 肥満を防止する

    よく噛んで食べると、満腹中枢が刺激されて少量でも満腹感を得やすくなるため、食べすぎを防げます。さらに、ゆっくりと時間をかけて食べれば、食後に消費するエネルギー量が増えます。肥満の防止につながり、生活習慣病の予防にも効果的です。

    • 脳の活性化につながる

      よく噛むと脳の血流が良くなり、栄養と酸素が脳に届けられることで、脳の働きが活性化します。その結果、集中力・判断力・記憶力などがアップします。

      • 口内環境を良くする

        よく噛むと、唾液がたくさん出て口内の細菌が洗い流され、歯の表面がきれいになります。その結果、細菌感染を防ぎ、虫歯や歯周病の予防につながります。また、歯ぐきの血行促進も期待できるのです。

        • 発音が明瞭になる

          よく噛むと、口周りの筋肉を使うことになります。その結果、筋肉が鍛えられて発音が明瞭になります。

          • 胃腸の調子が良くなる

            唾液にはアミラーゼという消化酵素が含まれているため、よく噛んで唾液の分泌が促されると、消化吸収のサポートになります。その結果、胃腸の働きが良くなります。

3.早食い防止の工夫

よく噛むことには、さまざまなメリットがあるとわかりましたが、食事のたびに噛む回数を数えるのは面倒だと感じる人も多いでしょう。そこで、自然と早食いを防止できる工夫を紹介します。

  • 食材を大きめに切る

    千切りよりも乱切りにするなど、食材を大きめのサイズに切ることで早食いを防止する方法があります。よく噛まないと飲み込みにくいようなサイズに切りましょう。

    • ながら食いをしない

      テレビやスマートフォンを見ながら食事をすると、噛むことに集中できずに噛む回数が少なくなります。食事のときは食べることに集中しましょう。

      • 噛みごたえのある食材を食べる

        噛みごたえのある食材を食べると、自然と噛む回数を増やせます。
        例えば、野菜は火を通さないほうが噛みごたえがあるため、生のままでも食べやすいものは生野菜として摂るとよいでしょう。このほかには、根菜やきのこ、海藻などの食物繊維が多い食材、たこやいかなどの弾力のあるものもおすすめです。

早食いを防止して、肥満を予防しましょう

ヒトは、食事を始めてから20分以上経たないと、満腹だと感じにくくなっています。これにより、早食いが過剰摂取につながり、肥満を招きやすくなってしまうのです。

よく噛むことは肥満予防につながるだけでなく、脳の働きの活性化、虫歯や歯周病予防、明瞭な発音、胃腸の働きの向上といったメリットも得られます。

噛む回数を増やすためには、食材の大きさや選び方を工夫し、自然と噛む回数が増えるように食事内容を見直してみましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医