適切な睡眠時間はどれくらい?
睡眠不足や過眠が与える悪影響についても解説

現代は労働環境の影響や、インターネットやゲームなどの普及で夜型生活になりやすく、睡眠不足をまねきやすいといえます。

睡眠に問題があると心身にも支障をもたらしやすいため、睡眠について見直すことは大切です。

今回は適切な睡眠時間について、睡眠不足や過眠による影響などと併せて解説します。

1.日本人の睡眠時間は少ない

睡眠には、私たちの体と心の疲労を回復させる役割があります。そのため、睡眠時間が不足したり、質が良くなかったりすると、健康に支障が出やすいのです。

私たち日本人の睡眠時間は、世界で最も短いといわれています。なかでも子どもたちや、働いている人は特に睡眠が少ないようです。

国別で就労者の睡眠時間を比較すると、日本人は一日の平均睡眠時間が8時間に満たないのに対して、他の国の就労者は8時間以上睡眠を取れている人が多いことがわかりました。

日本人の場合、特に女性は男性よりも睡眠時間が短い傾向にあり、慢性的な寝不足状態であるといえるでしょう。

2.適切な睡眠時間はどれくらい?

一日あたりの睡眠時間はどのくらいが適切なのか、疑問に思ったことがある人もいるのではないでしょうか。

適切な睡眠時間は、6~8時間であるといわれています。しかし、体質や生活環境など個人差があるため、日中に眠くなって困らない程度の時間で睡眠を取れるとよいでしょう。

睡眠は必要以上に取っても健康になるわけではありません。また、「最低でもこのくらいの時間は眠らなければならない」と、睡眠時間を気にしすぎると余計に眠れなくなってしまいます。

一般的には、加齢によって適正な睡眠時間が短くなる傾向があります。また、季節によっても適正な睡眠時間は異なり、日の長い夏は短く、日の短い冬は長くなるという変化も見られるのです。

そのため、個人の体質や環境に合った、質の良い適切な睡眠時間を確保することが重要です。

3.適切でない睡眠がおよぼす悪影響

睡眠の時間や質が不足した場合には体にどのような影響が起こりうるのでしょうか。また、十分に寝ていても日中に眠くなる場合は、どのような支障があるのか気になる方もいるかもしれません。以下で、起こりうる影響や支障について解説していきます。

3-1.睡眠不足の場合

睡眠が不足している状態とは、一般的には仕事や活動に支障をきたす場合は睡眠不足と考えます。睡眠不足が続くと、どのような状態になりやすいのでしょうか。

  • 情緒不安定になりやすくなる

    睡眠不足によって、不安や混乱が起こりやすく、抑うつ傾向が強まることがわかっています。そのため、睡眠の不足が続くと、不安障害やうつ病などを発症させるリスクが高まるでしょう。

  • 生活習慣病のリスクが高くなる

    睡眠の質が悪いと、生活習慣病のリスクを高めてしまいます。

    睡眠不足(4時間の睡眠)を2日間続けると食欲を抑えるホルモンが減少し、食欲を高めるホルモンは上昇しやすくなることが知られ、その結果食欲が増大します。慢性的に寝不足状態である人は、糖尿病などの生活習慣病にかかりやすいことがわかっているのです。

  • 意欲や集中力の低下

    睡眠に問題がある状態が続くと、倦怠感や意欲の低下、集中力の低下、食欲の低下などの不調が起こりやすくなります。

3-2.過眠の場合

過眠とは、夜十分に睡眠を取っているにも関わらず、日中に眠気が強く出てしまい、目を覚ましていられない状態を指します。過眠の場合は、以下のような状態が起こりやすくなります。

  • 学業や仕事の能率が落ちる

    健康な人であれば、日中に眠気が起こっても意志の力で目を覚ましていられますが、頑張っても目覚めていられないときには、過眠である可能性があります。

    過眠の場合には仕事中や会議中、試験中などに居眠りをしてしまうこともあるため、学業や仕事の能率が落ち、その後に影響が出てしまうでしょう。

  • 居眠り運転事故を起こす可能性がある

    過眠があると、車の運転中に居眠りをして事故を起こしやすくなります。また、職業運転手や大型機械のオペレーターなどであれば産業事故を引き起こす要因にもなるため、専門機関での検査や治療が必要です。

適切な睡眠時間を確保するよう心がけましょう

適切な睡眠時間は、個人差はありますが一日あたり6時間以上8時間未満といわれています。日中に眠気が起こらなければ、適正な睡眠が取れているといえるでしょう。

睡眠が不足すると、うつ病のような状態になりやすく、生活習慣病のリスクも高まります。

また、十分に睡眠が取れていても、日中に眠気が強くなる「過眠」という症状を起こす場合があります。

睡眠に問題があると感じたら、医療機関に相談して必要な治療を受けることも検討してみてください。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医