1.起座呼吸とは
起座呼吸とは、病気のときに現れる状態の一つです。横になっていると息苦しく感じるのに、体を起こして座ると楽になる状態を指します。
例えば、ベッドで寝ていると呼吸困難が強まり、ベッドの背などにもたれかかると呼吸が楽になる状態です。ひどい咳などの症状が起こったときも、息苦しさから寝ていられず、起座呼吸をするようになります。
心臓の病気のなかには起座呼吸を含む発作性の呼吸困難が、夜間とりわけ寝入りばなに起こりやすいものがあります。呼吸困難が強い人のなかには、立ちあがって窓を開け、冷たい空気を吸いたくなる人もいます。
一方で、症状が朝方に起こる人は別の病気が隠れている可能性が否定できません。起座呼吸の有無やタイミングは診断の材料となるため、受診する際には必ず医師に伝えましょう。
2.起座呼吸が起こる原因
心臓は血液を送り出すポンプの役割を持つ臓器です。心臓は全身へ血液を送り出す左心系と、心臓へ戻ってきた血液を肺へ送り出す右心系に分かれます。左心系のポンプ機能が低下すると肺にうっ血が生じ、その結果、息苦しさを感じて起座呼吸につながります。
起座呼吸は咳こみや痰による発作でもみられます。起座呼吸の原因が心臓か咳こみや痰による発作かを見極めるためには、起座呼吸の出方などの確認が重要です。例えば、横になると苦しい、息苦しくて眠れない、眠って数時間後に息苦しくて目が覚める、などの症状がある場合は、心臓に原因がある可能性があります。
のどぼとけあたりの粘膜の腫れで起座呼吸が現れるケースもあります。この腫れは、感染症や外傷をきっかけに起こることもありますが、まれに薬による副作用で生じる場合もあります。薬を使った後に、のどが詰まった感じがしたり、息を吸うときにヒューヒューと音がしたりする場合は医師に連絡し、すみやかに受診してください。
ただし、息苦しさを感じて起座呼吸をしても症状が改善しなかったり、悪化したりするような場合は救急車などを利用して受診し、迅速な処置をしてもらいましょう。
3.起座呼吸で楽になる理由
肺は太い血管で心臓とつながれているため、心臓のポンプ機能が低下すると、連動して肺に血液が溜まり、うっ血状態になります。肺がうっ血状態になると、呼吸がしにくくなります。このとき、体を起こして座ると心臓に戻ってくる血液量が減り、心臓への負荷が軽減することで呼吸が楽になるのです。
呼吸困難はつらい症状です。横になっていることで息苦しさを感じる場合は、体を起こして呼吸しやすい安楽な姿勢を取りましょう。
起座呼吸が続く場合は早めに病院の受診を
息苦しくて横になれず体を起こすと呼吸が楽になる、という症状がある方は、起座呼吸のおそれがあります。
起座呼吸が起こる原因には、心臓の病気や咳こみや痰など、ときに命に関わる病気が潜んでいる可能性もあります。
早めに受診をすることで早期治療につながります。起座呼吸の自覚症状がある方は、我慢せずに医師に相談してみましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。