1.日本人の平均寿命と健康寿命
平均寿命とは「0歳における平均余命」を指し、健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指します。
2019年における平均寿命は、男性の81.41歳に対して女性は87.45歳でした。一方で、健康寿命を見てみると男性72.68歳・女性75.38歳となり、男性8.73年・女性12.07年とそれぞれ平均寿命と差が生じています。この差は、日常生活を送るうえで健康上に何らかの問題がある期間を指します。
平均寿命が延びても不健康な期間が長くなれば、健康問題だけでなく医療費・介護費などの金銭的な悩みにもつながりかねません。日本の高齢化は急速に進んでいますが、ただ長生きするのではなく健康に年をとること(健康長寿)が重要です。
生活習慣は健康長寿に関係しています。食事・運動・休養などに関する悪い習慣はさまざまな病気を招くきっかけになるため、健康長寿を目指すならば、生活習慣の改善が必要です。
2.健康で長生きする人の特徴
健康を保ちつつ長生きする人たちには、どのような特徴があるのでしょうか。現在、日本には6万人を超える100歳以上の方(百長寿者)がいると推測されています。
このような百長寿者の特徴を、生活習慣にスポットを当てて見ていきましょう。
まず、食習慣を見てみると食事は一日3食の人が9割以上ですが、間食するのは男女とも半分に満たないという調査が発表されています。主食を毎食摂取する人が9割以上で、魚・野菜・果実・乳製品をほぼ毎日食べているという人が多く、栄養バランスの良い食生活を送っていると考えられます。
魚や豆腐・納豆などの摂取量が多いのに対し、肉は週1~2回程度の摂取という人が多いことも特徴です。
また、洋食より低カロリーである和食も、長寿に関わっていると考えられています。実際に、カロリー制限が長寿につながるという研究結果も報告されています。
次に、百長寿者では無理しない程度の運動習慣を持つ人も少なくありません。男性の5割、女性の4割が継続して運動を行なっています。なお、無理しない程度の運動の例として、自宅の階段を上り下り、散歩や洗濯など自分でできる範囲で行なうという運動になります。そのため年を重ねても、健康のために体を動かす習慣を持つことが重要です。
睡眠については、男女ともにしっかり睡眠を取れている人が8割という調査結果が発表されています。また、平均睡眠時間は男女ともに9時間前後で、5~6割の人が毎日同じ時間に起床しています。
そして、百長寿者ではもともと喫煙習慣のない人が多く、現在も喫煙する人はわずか1~2%です。
3.長生きする人はどのような生活を送っているのか?
長寿の人の多くは、高齢になる前から生活習慣を整え、健康を意識しています。健康長寿を意識した生活習慣のポイントは、次の4つです。
-
・食生活に注意する
-
・生活リズムを整える
-
・体をしっかり休める
-
・運動習慣を身に付ける
食生活については、40代の頃からすでに意識していたという人が少なくありません。具体的には、毎日3食規則正しく食べる、腹八分目に留める、さまざまな食材をバランス良く摂取する、などです。
また、健康長寿を目指すには、フレイルにならないように注意しましょう。フレイルとは、筋力が低下して関節や骨に異常が出るなど、体が老化している状態を指します。
フレイルを予防するには、筋肉を維持するためにタンパク質を摂取して運動することが大切です。食事から十分量のタンパク質を摂取するのが難しい場合は、サプリメントなどでアミノ酸を補うのもよいでしょう。
ウォーキングや体操などで、適度な運動を続けることも大切です。百長寿者の多くは、何かしらの運動を毎日継続していたとされています。趣味や仕事に生きがいを持ち、精力的に活動している人も少なくありません。なかには、100歳を超えても仕事を続けている人もいます。
これらの生活習慣に加え、小さなことにこだわらず、ゆったりとした気持ちで前向きに日々を過ごすことも大切です。
長生きする人の特徴を参考に生活習慣を見直しましょう
日本は超高齢社会といわれていますが、大切なのはただ年を重ねるのではなく、自立した生活が可能な健康長寿を目指すことです。
健康長寿の人を見てみると、整った生活習慣を送る人が多い傾向にあります。また、高齢になったときの健康を維持するには、若いうちからの取り組みが大切です。
将来のためにも、今から食事・運動・休養といった習慣を整え、規則正しい生活を意識しましょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医