1.心臓の構造と働き
心臓のサイズは、およそ握りこぶし大であり、心筋と呼ばれる筋肉で構成されています。
心臓は体中に血液を送る働きを担う循環器の一種で、おもに右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部位に分けられます。それぞれの部位は、弁と呼ばれる組織で区切られており、弁によって血流が調整されています。弁は、心臓の動きに連動して開いたり閉まったりして、血液を一定の方向へ押し出し、逆流を防いでいます。
血液が全身を流れる順番は決まっています。まず血液は、左心室から全身へ流れ酸素を届け、右心房から右心室へ向かい肺で酸素を取り込み、左心房から左心室へ戻ります。
また、心臓は右心房から電気信号を送り、心臓全体が一定のリズムで収縮するように命令を出しています。その電気信号によって、成人の場合は1分間に50~100回、一日約10万回の拍動を行なっているのです。
全身には、動脈・静脈・毛細血管がまんべんなく張り巡らされています。動脈は酸素を豊富に含んだ心臓からの血液を送り出すための血管で、静脈は酸素が少なく老廃物を含んだ血液を心臓へ送り返すための血管です。
血液の流れによって、必要な栄養や酸素が全身へ届けられ、不要な二酸化炭素や老廃物は回収されています。
2.心臓の異常にはどのようなタイプがあるのか
心臓の異常は、発生する部位ごとにタイプを分けられます。各部位に起こる心臓の異常を、タイプ別に見ていきましょう。
2-1.心臓の筋肉に異常が起きるタイプ
まず紹介するのは、心臓の筋肉に異常が起こるタイプです。心筋では、おもに次のような3つの異常が起こります。
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・心臓の動きが部分的に悪くなるもの
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・心筋が通常より厚くなり血流障害が現れるもの
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・心筋に炎症が起こるもの
心臓の動きが部分的に悪くなるケースでは、何も兆候がなく急に息切れや胸の痛みなどの症状が現れることもあります。このケースでは、心臓が収縮するのを妨げることがあるため注意が必要です。
心筋の厚さが数倍に肥大する異常では、心臓の内部で血液が十分に移動できなくなり、血流障害を引き起こします。初期では、心臓そのものの大きさは変わらずに、心筋の厚みが増すだけです。しかし、症状が進みさらに肥大すると、心臓のサイズも大きくなります。
また心臓の筋肉が、何らかの原因で炎症を起こすことがあります。症状が悪化すると心臓の収縮機能が衰えて、心臓が拡張するのが特徴です。
2-2.弁に異常が起きるタイプ
次に紹介するのは、心臓にある弁に異常が出るタイプです。心臓には大動脈弁・僧帽弁・三尖弁・肺動脈弁の4つの弁があります。
弁の役割は、血液を取り込む際に開き、それ以外では閉じて逆流しないようにすることです。弁に異常が起こると、弁が閉じにくくなって血流が逆流したり、開きにくくなったりします。
心臓の弁が正常に機能しなくなる原因には、おもに次の4つが考えられます。
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・加齢
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・感染症
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・外傷
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・先天的(生まれつき)な異常
2-3.心臓の血管に異常が起きるタイプ
心臓の表面には冠動脈の太い枝が3本あり、心臓を動かすために必要な栄養や酸素などを心筋へ運ぶ役割があります。そのため、これらの冠動脈が狭くなったり詰まったりすると、心臓へ酸素や栄養が運ばれなくなり、心臓の機能が低下してしまうのです。
2-4.伝達回路に異常が起きるタイプ
心臓は、電気信号によって決まったリズムを刻みながら動いています。しかし、何らかのトラブルでこの電気の伝達回路に乱れが起こると、脈が速くなったり遅くなったり、不規則になってしまうのです。
このような脈の乱れは、重症な場合は意識消失につながるケースもあります。
心臓について理解を深めよう
心臓は、握りこぶしサイズほどの大きさですが、人間の生命に直結する重要の器官です。
心臓には4つの部屋があり、弁によって隔てることで血液の逆流を防いでいます。また、一定の脈拍をキープしながら、全身に栄養や酸素の豊富な血液を届ける一方で、不要な二酸化炭素や老廃物を体中から回収しているのです。
心臓は絶え間なく働き続けていますが、筋肉・弁・血管・伝達回路に異常が出ることがあります。それぞれ異常が出る場所によって、症状が異なるのが特徴です。
何かしらの異変を感じたら、医療機関を早めに受診しましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。