なぜ老化するの?
なぜ老化するの?
監修:愛知学院大学
心身科学部 健康栄養学科 客員教授
農学博士
大澤 俊彦
「体が重い」
「思い通りに動けない」
「昨日の疲れが残っている」
40歳を過ぎたあたりから、年齢を感じるシーンが徐々に増えていきます。
「年だから仕方ない」
そう思いますか? 果たして、老化は抗えないものなのでしょうか?
そもそも老化とは何か、なぜ老化するのか……老化について、きちんと知れば、老化を遅らせる方法が見えてくるかもしれません。
「年を取れば、誰でも老化する」
そんなふうに「加齢」と「老化」をイコールで考えてはいませんか?
しかし、この二つは別々のものなのです。
「加齢」は誕生から、どれだけの時間が経ったかを示すものです。同じ年の同じ日に生まれた二人は、40年後、共に40歳になっています。
一方、「老化」とは、大人になって以降、加齢に伴い、カラダの機能が衰えていくことです。
「加齢に伴って老化するのだから、加齢も老化も結果は同じ」と思いますか? しかし同期の人や、同窓会で久しぶりに会う同級生を見ても、「老けたな」と思う人もいれば、「若々しいな」と感じる人もいます。
つまり、加齢は平等ですが、老化には個人差があるのです。持って生まれたものも多少はありますが、双子のように遺伝要因が同じ二人でも、その後の生活習慣や環境によって、老化に大きな差が出ます。それはいったい、なぜなのでしょう? 老化の原因にその謎が隠れています。
人間のカラダは酸素なしでは生きられません。大気中に含まれる21%程度の酸素が人の命綱です。酸素の割合が18%を切ると、もう酸欠で息苦しくなります。
呼吸によって体内に取り込まれた酸素は、肺から血液に乗って、カラダの隅々にまで送り込まれ、それぞれの場所でエネルギーを作り、体温を上げたり、筋肉を動かします。このエネルギーを作る際に、副産物として生まれるのが「活性酸素」です。活性酸素に変わるのは、酸素のうちのわずか数%ですが、これが体に大きな問題をもたらします。
活性酸素は酸化力が非常に強いことが特徴で、さまざまなものを酸化させます。切ったリンゴが空気に触れると変色するように、人のカラダも酸化して、サビてしまいます。ただし、活性酸素は決して、ただの悪者ではありません。体内に侵入してきたウイルスや細菌をやっつけるなど、カラダを守る武器としても役立ってくれます。
問題は増えすぎた場合であり、増えすぎると、その刃は人体に向けられ、組織を傷つけてしまうのです。
ある程度は必要なものの、増えてしまうと体にとって毒となる活性酸素。
では、どんな場合に、活性酸素は増えてしまうのでしょうか。
実は現代生活には活性酸素を増やす要因がたくさんあります。
代表的なものが紫外線です。オゾン層の破壊などにより、紫外線は年々強まっています。ダイオキシンや排気ガスなどの大気汚染も活性酸素の発生を増やします。放射線も同様です。
老化に個人差が出るのは、活性酸素の増え方が人によって違うからですが、それには日常の生活習慣の差が関わっています。
まずストレス。現代生活においてストレスと無縁でいることはできませんが、社会的な役割の違いや、生活スタイル、人間関係などによって、ストレスの量は異なります。また、同じストレスにさらされても、それを感じやすい人と、あまり感じずにいられる人がいます。さらにストレスをうまく発散できる人と、できない人がいます。
また、タバコはさまざまな害が言われていますが、活性酸素を増やす要因としても大きいものです。他人が吸うタバコの煙による受動喫煙でも活性酸素が増えます。加えて老化防止に役立つビタミンCを壊してしまいます。
さらに、睡眠不足はことに問題です。多忙な日々を送る現代の日本人は、世界の中でも睡眠時間が短い国民といわれています。つまり睡眠時間と共に、若さを削ってしまっているのです。
運動も内容によって、老化を防ぐものと増進するものがあります。自動車に乗らずになるべく歩く、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を上り下りするといった適度な運動は健康をもたらします。しかし、他人と競うスポーツなど、激しい運動は逆効果です。呼吸量が大幅に増え、多くの酸素を燃焼させてエネルギーを生み出すため、活性酸素が大量発生します。
特に人によって違いが大きく、活性酸素の増え方に大きな影響をもたらすのが、食事の摂り方や、お酒の飲み方です。
食べ物は、酸化した食べ物がいけません。油は酸化しやすい食品です。未使用の油を使用した揚げたてならいいのですが、お弁当の揚げ物やスナック菓子などは、揚げてから時間が経つことにより酸化が進んでいます。
また、お酒の飲みすぎは若さの敵です。なかなか量を減らすのは難しいことですが、できるだけ適量を心がけましょう。
口から酸化したものを入れることで、さらにカラダの酸化が進行、健康に良いといわれているDHAなどの魚油も、酸化しやすいという弱点を持っています。たとえオリーブオイルのような酸化しづらい油であっても、熱や光、時間経過によって酸化してきます。身近な食生活に潜む酸化要因に注意しましょう。
体内に侵入してきた細菌などと戦ってくれるものの、返す刃で人のカラダも傷つけてしまう活性酸素。当然、人のカラダには活性酸素が増えすぎないように、活性酸素と戦う仕組みが用意されています。それが抗酸化力です。
活性酸素の発生を抑えたり、活性酸素の酸化力を抑えたり、活性酸素によって受けた被害を修復したり……抗酸化力はさまざまなやりかたで、活性酸素による酸化のダメージを防いでいます。
抗酸化力は、抗酸化酵素など体内に仕組みとして用意されているもののほか、食べ物など外部からの支援でも高められます。
カラダには、抗酸化作用を持ち、活性酸素を抑え込んで、老化を防止してくれる抗酸化酵素を作る仕組みがあります。しかし、抗酸化酵素を作り出す力のピークは20歳代。そこからジワジワと低下していき、40歳を過ぎた頃から、急激に減少していきます。それまではたとえ活性酸素が作られても、それを抑え込めていたのが、このあたりから、活性酸素の力が、抗酸化力を上回り、老化が進み始めます。
「若いときのようにはいかなくなったなあ」と、老化を実感し始めます。そろそろ、自らのカラダの力にだけ任せていては、老化が加速していってしまいます。
40代以降は、意識的に抗酸化力を補っていくことも必要になってくる年代です。若さを保ちたい、老けたくないと思うなら、食事をはじめとする抗酸化力アップに努めていきましょう。ゴマや玄米、緑茶といった、抗酸化パワーを持つ食品をとるなど、手軽に行えることから始めてみませんか。
取材・文 GOOD AGING LABO 編集部
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