気になる「老化症状」
気になる「老化症状」
監修:ナビタスクリニック新宿院長
濱木珠恵
「何となく体が重い」「疲れやすい」「頭が痛い」…といった不調を、年齢や体質のせいだと思ってあきらめていませんか? ところが「鉄不足」を解消することで、これらの不調が改善し、日中のパフォーマンスがぐんとアップする可能性も。特に女性なら誰にでも起こる可能性のある「鉄欠乏性貧血」の原因と対策について、解説していきます。
まずは自分の体調を振り返ってみましょう。
次の項目のうち2つ以上当てはまる場合は、貧血の可能性があります。
貧血にはさまざまな種類がありますが、なかでも最も多いのが、体内の鉄不足による「鉄欠乏性貧血」。特に、月経や出産で血液が失われる女性は貧血になりやすく、2015年厚生労働省の調査によると、成人女性の約10人に1人が貧血です。50歳未満に限ると約5人に1人ともいわれる、とても身近な病気。偏った食生活や、ダイエット目的の極端な食事制限も、鉄不足に拍車をかけます。
50代、60代になると貧血患者数は半減しますが、貧血の原因として、痔、胃腸の潰瘍やがんなどの病気による出血の可能性があるため、めまいや立ちくらみなどの気になる症状があれば、セルフケアを始める前に、まず受診して原因を確かめましょう。
体内の鉄は、血中ヘモグロビンの材料となる大事な栄養素。ヘモグロビンは"体中に酸素を届ける"という大切な役目を果たしていますが、材料となる"鉄"が不足するとヘモグロビン量が減少して体中が酸欠状態に。すると、めまいや、目の前が急に暗くなるような立ちくらみといった貧血症状のほか、新陳代謝が低下して、だるさや疲れ、息切れ、頭痛、肩こり、イライラ、肌荒れ、髪のパサつき…など体中にさまざまな不調が現れます。がんばれば何となくやり過ごせてしまうレベルのため、気づかなかったり、放置してしまったりしている人も多いようです。
一方で男性は、男性ホルモンの働きによってヘモグロビンをつくることができるため、鉄欠乏性貧血は多くありませんが、ランニングやサッカーなどの走り回る運動をする人や、筋肉量が多い人は、多くの鉄を必要とするため鉄不足になりやすい傾向があります。
また男性も50歳を過ぎたころからは貧血が増加します。男性の貧血の背景には、胃腸の粘膜異常やピロリ菌、痔、胃腸の潰瘍・がんなどの病気が隠れているケースが多いため、めまいが気になるなどの不調があったら、"たかが立ちくらみ"で片づけずに受診しましょう。
貧血かどうかは一般的な血液検査の「ヘモグロビン値」で確認できますが、検査では見つからない"隠れ貧血"にも注意が必要です。
体内にある鉄の一部は"貯蔵鉄"として肝臓に蓄えられ、ヘモグロビンの材料となる"血清鉄"が不足したときのバックアップとして使われます。ところが不足分を補い続けて、貯蔵鉄が底をつく寸前の人がいます。これが、貧血一歩手前の"隠れ貧血"です。成人女性は1日10.5mgの鉄摂取が必要とされますが、国民健康・栄養調査によると実際の摂取量は7.5mgとまったく足りていません。生理がある女性は常に貧血とつき合っているという意識をもち、日頃から対策をする必要があります。
貧血対策の基本は、不足している"鉄"を食事で補うことです。健康診断で貧血と診断された人はもちろんのこと、診断されなくても、だるさや疲れなどの不調が続く人は、まず食事を見直してみましょう。
不調のほとんどは貧血の改善とともに和らぎ、集中力が高まるなど日常のパフォーマンスもアップするはず。鉄は吸収力が低く、一度に多量にとっても排出されてしまうため、毎日コツコツとるのがポイントです。ヘモグロビンの鉄を補給するだけでなく貯蔵鉄もしっかり蓄えるつもりで、まずは半年間、鉄を多く含む食材を積極的に摂取しましょう。
それでも改善されない場合は、貧血以外の別の病気が考えられるので、受診が必要です。ほかにも心配なことがあれば、気軽に内科や貧血外来を受診してください。
だるい、疲れがとれない、肌荒れしている、爪が割れる…などは貧血が原因かも
女性には体内の鉄不足による「鉄欠乏性貧血」が多い
検査では見つからない「隠れ貧血」の人もいる
鉄を補うには食事が大切
取材・文 FYTTE 編集部
COPYRIGHT © SUNTORY HOLDINGS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED