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気になる「老化症状」

実は病気が隠れているかも!? 放置してはいけないキケンなむくみ

監修:お茶の水血管外科クリニック院長
広川雅之

同じ姿勢で長時間過ごしたり、体が冷えていたりすると、血液の循環が悪化するので誰でもむくみやすくなります。立ちっぱなしや座りっぱなしでいると、夕方には靴がきつくなったり、靴下のあとがくっきりつくというのも、言わば普通の状態。ひと晩寝れば、翌朝にはまた脚が軽くなるという人は、心配はいりません。普段の生活でこまめに動くことを心がけたり、冷えないように気をつければ、症状は改善するはずです。
しかし、中には病気が隠れているキケンなむくみもあります。その見極め方を知って、病気が疑われる場合には早期に対処しましょう。

すぐに病院に行くべきキケンなむくみの3大兆候

むくみは、医学用語では「浮腫(ふしゅ)」といいます。すねを指で数秒押してみて、指を離したときにへこんだまましばらく指のあとが残るのが「圧痕性(あっこんせい)」、すぐに元に戻ってあとが残らないむくみは「非圧痕性(ひあっこんせい)」。そのどちらであっても、病気が隠れている場合があるので注意が必要です。

急にむくみが出た

第一に気をつけるべきは、急にむくみが出た場合です。これまではむくみを感じたことがなかった人が、突然むくみを感じた場合には、体で何らかの異常が起こったサインです。
飛行機などに乗って長時間同じ姿勢でいた後などに足がむくんだ場合、深部静脈血栓症(エコノミー症候群)が疑われます。重い痛みがあり片足だけがむくむのが特徴です。足の静脈にできた血栓が、肺や脳などの血管に詰まると命に関わる場合もあるので、すぐに病院を受診しましょう。薬の服用直後にむくみを感じた場合も、副作用の可能性があるので注意が必要です。

むくみの状態が左右で異なる

二番目に気をつけるべきは、足の左右のどちらかだけにむくみが出ている場合です。体の両側に症状が起こる場合を「両側性(りょうそくせい)」、体の片側だけに起きる場合を「片側性(へんそくせい)」と呼びますが、片側性のむくみでは、下肢静脈瘤やリンパ浮腫、深部静脈血栓症が疑われます。
下肢静脈瘤の場合には、急いで病院を受診する必要はありませんが、放置するとうっ滞性皮膚炎ができるなど重症化することもあります。
リンパ浮腫はほとんどの場合、乳がんや子宮がんなどのがんの手術後に起こり、何の理由もなく起こることはほとんどありません。マッサージ店などでリンパの流れが悪いと言われたことがある人もいらっしゃるかもしれませんが、それとは全く違うものです。

むくみ以外の症状も併発している

むくみに加えて、体重の増加や、常に眠気やだるさを感じる、寒がりになる、汗をかきにくくなるなどの症状がある場合には、甲状腺機能の低下が疑われるので病院を受診しましょう。足だけではなく、全身がむくみ、特に顔のむくみが目立ちます。むくみが非圧痕性なことも特徴です。

臓器の機能低下が原因のキケンなむくみ

体のさまざまな臓器の不調が、むくみを引き起こしている場合もあります。症状は徐々に進行するので見逃さないようにしましょう。症状がある場合には、病院を受診してください。

腎臓が原因で起こるむくみ

むくみが起こると、まず疑われるのが腎臓の病気です。さまざまな原因で腎臓の機能が低下すると、本来は尿として排泄されるべき不要な水分や老廃物が体に溜まってしまい、むくみが発生するのです。
腎不全、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症の初期は、まず顔がむくみ、まぶたが腫れぼったくなります。そのほか、全身のむくみや吐き気、食欲不振、高血圧なども起こります。重症になると、けいれんや意識障害が起きる場合もあります。

肝臓が原因で起こるむくみ

肝炎ウイルスへの感染や、アルコールの飲みすぎなどで長期にわたって肝臓がダメージを受けると、肝炎や肝硬変になります。初期は自覚症状が少ないですが、全身のむくみや白目や皮膚が黄色くなる黄疸、体のだるさなどが現れる場合があります。

心臓が原因で起こるむくみ

心臓の働きが低下すると、全身へうまく血液が送れなくなり、全身がむくみます。むくみに加えて、疲れやすさや呼吸の苦しさ、ちょっとした動作で息切れがする場合には、心不全が疑われます。

病気かどうかの判断の目安と注意点

完全に病気ではないと断定することはできませんが、一般的に考えて、かなり前から長期にわたってむくんでいて、その程度があまり変わらないのであれば、病気ではない可能性が高いといえます。急にむくむようになった、片足だけむくむというのが病院を受診する目安です。

むくみに対する認識は男女で大きく異なる

私のクリニックにかかる患者さんの場合、下肢静脈瘤によるむくみの人も一部いらっしゃいますが、多くは病的ではないむくみに悩む方です。
皮下脂肪が多い人は基本的にむくみやすいので、必然的に女性の患者さんが多いのですが、男女の体への意識の違いも感じます。ちょっとした変化を気にしやすい女性に対し、男性では見た目に明らかにむくんでいるのに気にならないという人もいます。また、むくみを招く塩分の多い食事に偏りがちなのも男性です。
むくみを過度に気にする必要はありませんが、普段から自分の体の変化に気をつけておくことが大切です。

まとめ

すぐに病院に行くべき、キケンなむくみもある

キケンなむくみの特徴は、急に・片側だけ発生すること

むくみに加えて、痛みやだるさ、発熱がある場合は要注意

心臓や腎臓の疾患が原因でむくむ場合もある

むくみに無頓着な男性は、病気を見逃しがちなので要注意

取材・文 FYTTE 編集部

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