気になる「老化症状」
気になる「老化症状」
監修:
医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木理事
大川匡子
高齢になると、体内時計の変調や生活リズムの変化から、寝付きが悪くなったり、夜中に目が覚めやすくなるなど、不眠の症状を感じやすくなります。快眠のためには、寝室の環境づくりも大切です。今日から見直してみませんか。
寝室の環境づくりのポイントは、「光」「温度」「湿度」「音」のコントロールです。一つずつ紹介していきましょう。
日本は季節により、温度や湿度が変わりますが、寝室が蒸し暑くても、寒すぎても、寝付きが悪くなったり、途中覚醒が増えるなど、睡眠に影響します。
寝室の理想的な環境は、気温は20~26℃、湿度は50~60%、布団の中の温度は28~32℃といわれています。
冬場に、布団やシーツのひんやりした感触や、足先の冷えで、なかなか寝付けないという経験をしたことのある人も多いのではないでしょうか。それは、手足などの末端の血管が収縮することで、うまく熱が放散されず、体温が下がりにくくなるためです。
寝る前に、エアコンで部屋全体を温めたり、電気毛布や湯たんぽで寝具を温めておくといいでしょう。足先が冷たいときは、足湯もおすすめです。
また、寝具は、保温性の高いガーゼ素材や起毛素材などを使うと、布団に入ったときのひんやり感を軽減できます。寝具の保温性が高ければ、たとえ寝室の気温が低くても、睡眠にはさほど影響がないとされています。
一方、夏場の蒸し暑い夜は、気温が高いため、汗はかくものの、体の放熱がうまくいかず、体温が下がりにくくなることで、やはり寝付きが悪くなります。寝室においては、特に湿度の高さには注意が必要です。同じ気温でも、湿度が70%超えると、人は不快に感じて、寝付きが悪くなり、途中覚醒もしやすくなります。逆に、50~60%の湿度であれば、28℃ぐらいでも快適に眠ることができます。
近頃は、ひんやりとした触感の冷感寝具などもいろいろ出ていますが、自分に合うものを取り入れてもいいでしょう。しかし、寝具を変えるだけで、蒸し暑さを解消するのは、なかなか難しいものです。熱中症対策のためにも、エアコンを上手に使いましょう。寝室の気温は26℃ぐらいを目安にします。
寝室の明るさは、暗ければ暗いほどいいのですが、高齢になると夜中にトイレに起きることも多くなり、真っ暗では不安だという人もいるでしょう。豆電球ひとつ程度の明るさであれば、睡眠にもさほど影響はありません。足元を照らすフットライトがおすすめです。
寝る前には、明るい光を浴びすぎないように注意します。一般的な照明の明るさの90~180ルクスで、眠気をもたらす脳内ホルモンのメラトニンが減ってしまい、寝付きが悪くなる原因になります。スマートフォンに使われるブルーライトも同様です。就寝の1時間前ぐらいから、スマートフォンの使用は控え、部屋はオレンジ色系の照明を使うようにします。夜にコンビニなど明るい場所へ行くことも控えましょう。
朝早く目覚めて困っている場合は、厚手のカーテンで光を遮ると、起きる時間を後ろにずらすことができます。起床後は、明るい光を浴びると、すっきりと目が覚められます。
騒音も、睡眠に影響します。40デシベル以上になると、寝付きが悪くなります。40デシベルは図書館の静けさのイメージです。また、50デシベルには、エアコンの室外機の音があります。起きているときは気にならない音でも、眠るときには耳障りに感じるかもしれません。
屋外の車が通る音、足音、話し声、エアコンの室外機などが気になる場合は、窓をきちんと閉めて、厚手のカーテンをかけることで、ある程度は軽減できます。
睡眠の環境が気になる人ほど、旅先で眠れないことも多いようです。寝具の寝心地が変わることも一因で、「枕が変わると眠れない」という人もいるのではないでしょうか。枕の簡単な調節の方法として、枕が高すぎる場合は、バスタオルを好みの高さに折って代用する、低すぎる場合は、枕にバスタオルを足すというやり方があります。
旅館の浴衣などは、前がはだけて気になるなど、慣れない寝間着が睡眠を妨げることもあります。旅先には自分の寝間着を持参することも、快眠のコツといえます。
寝る前には、交感神経から副交感神経へと切り替わるように、リラックスして過ごすことも大切です。
寝る前に音楽をかけるなら、ゆったりとしたリズムの曲にします。呼吸は音楽のリズムに同調するので、ゆったりしたリズムの曲なら、呼吸もゆっくりと腹式呼吸となり、リラックスした状態になります。
歌詞の内容を考えて、頭が冴えてしまうこともあるので、歌詞のない曲のほうがおすすめです。
アロマオイルの中には、快眠にいいとされるものがあります。代表的なものは、ラベンダー、ヒノキ、カモミール、サンダルウッドです。副交感神経を優位にして、リラックス効果があるようです。
寝る前に、アロマオイルを使う場合は、ティッシュに数滴含ませて、枕元に置くといいでしょう。入浴剤にラベンダーやヒノキの香りを取り入れるのも、手軽な方法です。自分の好みの香りを選ぶのがよいでしょう。
夕方以降にお茶を飲むなら、ノンカフェイン飲料にします。リラックスに有効なのは、カモミールなどのハーブティーです。また、麦茶やそば茶もノンカフェインなので、気兼ねなく飲めます。
紹介したのは、ほんの一例です。「入眠の儀式」にこだわりすぎても、眠れなかったときに、不安やストレスになることもあります。リラックスできる方法は、自分に合ったものを、気軽な気持ちで取り入れてみましょう。
寝室の理想的な環境は、気温20~26℃、湿度50~60%、布団の中の温度28~32℃
冬は寝具や足先を温めてから布団に入る
夏はエアコンで室内の温度、湿度を管理
睡眠時の照明は、豆電球1つ程度に
厚手のカーテンで、屋外の騒音を軽減
旅先では、寝間着を持参すれば、眠りやすい
寝る前には、リラックスできることを
取材・文 FYTTE 編集部
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