伝統食材を訪ねて 約200年続く黒酢の発祥の地、坂元醸造から4月から6月頃まで行われる黒酢の“春仕込み”をご案内します。 「黒酢にんにく」商品担当 有木 久美子

 

渡す限り、あたり一面の黒酢の壺畑に毎回、圧倒されてしまいます。

毎年、この時期になると黒酢の春仕込みのシーズンになり、体はいつも鹿児島に向かってしまいます。雄大な桜島と穏やかな錦江湾が望める霧島市福山町、ここは黒酢の発祥の地です。

坂元醸造に近づくと黒酢の芳醇な香りがまるで包み込むかのように広がり、目の前に立ち並んだ黒酢の壺畑にいつものことながら圧倒されてしまいます。ただ、この壮大な壺畑を見ると今年も美味しい黒酢に出会えると思い、ウキウキします。

今回、黒酢づくりに重要な仕込みの現場を、坂元醸造でこの道35年のベテラン、蔵元醸造技師長と一緒にご案内します。

黒酢の壺が悠然と立ち並ぶ姿はいつ見ても圧巻。壺の蓋に挟まっているのは、茶色い紙や白いビニール。実は、これも黒酢の熟成や発酵の過程に合わせて使い分けているそうです。
いつも相談に乗っていただいている
温和で気さくな技師長。

黒酢は、原料本来のチカラを引き出す、まさに自然のちからの結晶だと痛感しました。

技師長に“米麹”をつくっている麹蔵を案内していただきました。
中へ入ると、どこか懐かしい麹の香りがふんわりと鼻をくすぐります。

米麹は、“混ぜ麹”と“振り麹”の2種類があるということ。どうやって使い分けているのか技師長に尋ねてみました。
「混ぜ麹は蒸し米を発酵させる役割があって、振り麹は外からの雑菌の侵入を防ぐんです。」
同じ麹菌を使ってつくるのに役割が違うんですね!
「そうですね。麹のちからを発揮させるために混ぜ麹は一番下に、振り麹は表面にまくという順番もとても大切なんですよ。」
職人が受け継いだ伝統的な製法で自然の原料が持つ本来のちからを引き出すことが、黒酢づくりには大切なんですね。

麹蔵で米麹を乾燥させている様子。
麹の呼吸音が聞こえてきそうです。

受け継がれた伝統の製法で熟練の職人さんが育む黒酢に感謝!

仕込みの作業で、「振り麹」という工程があります。熟練の勘が頼りになる振り麹は、壺の中に米麹を厚みや広がりなど均一に振りかける難しい作業。技師長も若い頃、先輩の技を盗んで覚えるのが大変だったとか。

仕込み後は発酵が始まります。どのような工程なんでしょうか。
「子どものように成長が早くさまざまに変化する黒酢の発酵状態を、私たち職人は“子どもの顔色”といっています。この顔色は、五感の中でも視覚や嗅覚で判断し管理するから若手の職人には難しいんです。」
何年修行を積めばわかるようになるんですか。
「5、6年はかかりましたね。表情がわかるようになった時には一層、黒酢に愛着がわきました。」
そう語る技師長の表情は父親そのものでした。繊細に育てられる黒酢には、職人さんの愛情がたっぷり詰まっていたんですね。

発酵の過程

①仕込みの後の壺。発酵の準備が整いました。
②早ければ仕込みを終えた翌日から発酵が始まり、振り麹が盛り上がります。
③10日ほど経って発酵が進んだ状態。目で見るだけではなく、香りや発酵の音で黒酢の成長を確認します。

壺に耳を当てると「ボコボコッ」と、小さな太鼓が鳴っているような神秘的な発酵の音が聞こえました。

 

黒酢の壺の蓋に置かれた小石。その意味とは? 発酵過程にある壺を見ていると、黒酢の壺のところどころに小さな石が…。不思議に思ったので、その意味を技師長に尋ねてみました。「職人は感覚の世界、だから若手を育てるにも口では伝えられないことが出てきます。小石は、発酵状態が上手くいっている壺に教科書代わりに置いて、若手の職人が学べるようにしています。私も昔は感覚を研ぎ澄ますのに必死でした。」黒酢づくりの伝統は、製法だけではなく職人に必要な感覚も伝承されることを知り、黒酢づくりの厳しさを改めて痛感しました。

編集後記

伝統的な仕込み方法には、職人さんたちが手を加えることによって自然の力を引き出す工夫が溢れていました。そして、良質な黒酢と黒酢もろみは、職人さんの絶え間のない努力から生まれるということを再確認しました。熟成した黒酢が仕上がる秋に、またレポートしたいと思います。

ご購入はこちら

ページトップへ