
金目鯛は日本では茨城県以南の太平洋側に分布し、水深200m以上の深海にすむ魚で、先祖は約1億年前から地球に生存していたともいわれる原始的な魚です。
深海魚はわずかな太陽光をとらえるために網膜が特殊な構造になっていますが、金目鯛も例外でなく、金色の大きな目が特徴。また、鮮やかな赤色で美しい魚であり、尾頭つきにして真鯛の代わりに祝儀用に使われることから、鯛の仲間ではない魚なのですが“金目鯛”と呼ばれるようになりました。
体長は大きいものでは50cmほどにもなり、14年~15年と長寿のものも珍しくないといわれます。夜になると海底から100mほど浮上し、イカや小魚などを捕食します。下層から餌を狙うため、大きな受け口が金目鯛のもう一つの特徴で、一度にたくさんの餌をため込めるように胃も大きく発達しています。
今回は、寒い冬になると脂ののりが増す旬の金目鯛を、東伊豆町稲取で取材しました。

東伊豆町稲取は東伊豆温泉郷の一つで、伊東と下田のほぼ中間、相模灘に突き出した半島・稲取岬にわく稲取温泉でも知られる温泉地。冬でも温暖な気候から、みかんの産地としても知られ、伊豆七島の展望が良い場所でもあります。
太古より漁港として栄えた稲取漁港は海の幸で定評があり、日本有数の金目鯛の水揚げ高を誇ります。“稲取金目”といえば、他の産地よりも脂ののりが非常に良いことで市場でも評価が高く、そのおいしさから、稲取は“金目鯛の町”として全国的に知られるほどです。
また、稲取には弥生時代から続く子孫繁栄を願う「どんつく祭」があり、桃の節句のひな壇の両脇に独特のお飾りをつるす「雛のつるし飾りまつり」も、子供の幸せを祈る伝統行事として江戸時代から受け継がれてきました。
温泉情緒、伊豆大島を望む絶景、みかん狩り、伝統行事など、楽しみ方いろいろの伊豆稲取で、旬の金目鯛を味わい心身ともにリフレッシュする旅もいいですね。

金目鯛は質の良いタンパク質と脂質が多く、特に、肌の健康に不可欠なタンパク質の一種であるコラーゲンと、注目の健康成分DHAやEPAなどが豊富です。また、鮮やかな赤色はアスタキサンチンによるもの。緑黄色野菜や根菜類、柑橘系の果物、植物油などをプラスすれば、不足しているビタミン類が補え、栄養レベルがアップします。
金目鯛は一年中市場に出回っていますが、最も脂がのるのは冬。目は金色に光り白目が澄んでいるものが新鮮です。鱗にツヤがあり、赤色が鮮やかなものを選びましょう。
小骨の少ない肉厚な身は、脂肪が多い割にさっぱりしているので、新鮮なものは刺身やあらいにしてコリコリとした歯ざわりを楽しみます。十分にコラーゲンを摂取するには、頭もアラも一緒に煮つけにするのが一番。焼き魚やフライのほか、しゃぶしゃぶや味噌漬、特有のだしが出る鍋物や味噌汁もおすすめです。旬の金目鯛を、さまざまに味わってみましょう。
写真・資料提供:旅館「はまべ荘」