
黄金色にその名を由来する金柑。中国原産の最も小さい柑橘系果物で、生活の豊かさを祈って食べたといわれます。日本に伝わったのは江戸時代とされ、現在その多くが宮崎県で生産されています。
一般的な金柑は皮に少し苦味があることから、砂糖煮やお菓子の材料などに使われていますが、県南の串間市を発祥とする「完熟きんかん」は、実が大ぶりで甘味が強く、生のままでも美味しく食べられるのが大きな特徴です。
品種としては、「完熟きんかん」も、普通の金柑も同じもの。その違いは、独特の栽培法にあります。金柑は6~7月頃花が咲き、暖かい時期に成長し、甘味の元になるクエン酸がどんどんつくられます。そして、寒くなると、皮がきれいに色付きはじめ、酸味がだんだんと甘味に変わっていきます。
加工用の金柑は、果実の成長が止まる11月頃に収穫しますが、「完熟きんかん」は、さらに数カ月間ビニールハウスの中でじっくりと完熟させていきます。こうして越冬した金柑は、1月~3月の収穫期には、直径2.8cm以上、糖度16度以上の甘い果実になるのです。

皮ごと食べられる「完熟きんかん」の美味しさは、実は果肉よりも皮で決まります。厚くて甘い皮に育てるコツは、微妙な温度管理と水加減。気温が下がる11月頃からハウスにビニールをかけて保温することで、皮がいっそう厚く甘くなり、その後は水分を少なくすることにより、果皮も果汁も糖度が高まるといいます。
また、皮ごと食べられる果実なので、農薬はほとんど使っておらず、宮崎県では、大きさや糖度などの基準に加え、出荷時の残留農薬検査をクリアしたものだけを、「完熟きんかん」として認証しています。

金柑は、柑橘類の中でも特に栄養価が高い、優れた健康果実です。ビタミンCの含有量はみかんの約2倍、β-カロテンやビタミンB1、B2、Eも豊富で、果物としては珍しくカルシウムも含まれています。
金色の皮に包まれた、旬の「完熟きんかん」には、1年でいちばん寒い季節を乗り切るための自然の恵みがいっぱい。そのすがすがしい香りと上質の甘さを、味わってみませんか。