
厳冬の頃に旬を迎える鮟鱇(アンコウ)。そのおいしさから「東のアンコウ、西のフグ」ともいわれる関東の冬の味覚の代表です。
大きな顔はひしゃげたように扁平で、胴は細くなりながら尾ビレとなる“アンコウ型”。胸ビレは、両手のように左右に太く伸び、大きな受け口で、上下のアゴには犬歯状の鋭い歯が並んでいます。
アンコウは北海道以南の本州各地に分布し、深さ100~数百メートルの海底に生息しています。海底の砂に身を埋め、顔にある“釣り竿”と呼ばれる背ビレの第1棘をひらひらと出し、えさと間違えて寄ってきた魚を水ごとひと飲みにしてしまいます。全身胃袋かと思うほど大食漢で、ものぐさな魚です。
春に産卵期を迎えるアンコウは、冬の間に栄養を蓄えて体(特に内臓)に脂がのり、水温の低下で身が引き締まってきます。今月は、アンコウの伝統料理が受け継がれている福島県相馬市を取材しました。

相馬市は風光明媚な松川浦県立自然公園をはじめ、豊かな自然環境に恵まれています。農業と漁業が盛んで、アンコウや松葉ガニ、ヒラメ、カレイ、新高梨、相馬牛など多くの特産品があります。
相馬沖のアンコウが上物とされる理由は、黒潮と親潮が入り混じり、プランクトンが豊富な海で育った魚をエサにしているからです。海や山など豊かで元気な自然が、アンコウのおいしさを育んでいるのでしょう。
成長すると1.5メートルにもなるアンコウは、身がぬるぬるして軟らかいので、“吊るし切り”で処理します。金具にアゴを引っ掛けて吊るし、口から水を入れて安定させてからさばくのです。肝(肝臓)、柳肉(身)、ヒレ、卵巣、胃、エラ、皮は「アンコウの7つ道具」と呼ばれ、アンコウは骨と歯以外は全て食べられます。

アンコウの身は脂肪がほとんどなく、タンパク質が豊富で、皮にはコラーゲンが多く含まれます。また、肝(肝臓)はビタミンAに富み、ビタミンD、E、 B12、葉酸などのビタミンや亜鉛や銅などのミネラルが含まれるほか、注目の栄養成分DHAやEPAも多く含まれます。
切り身で買う場合は、身が淡いピンク色で、透明感のあるものほど新鮮です。水分が出ていないものを選びましょう。また、肝は大きくて黄色味が強く、血管がまだ鮮やかな色のものがおすすめです。
アンコウ料理といえば、やはり定番の“アンコウ鍋”。やわらかくて粘りのある身は脂肪が少なく、あっさりしているので鍋物によく合います。皮や内臓類も湯通ししてから使いましょう。東京では割り下(だしと醤油)、常陸・磐城地方では味噌仕立てが一般的ですが、ポン酢だれで食べる水炊きや、大根おろしたっぷりのみぞれ仕立てなども楽しめます。
北風の吹く寒い夜は、アンコウ鍋で体の芯から温まりましょう。
写真資料提供:相馬市役所観光物産課、相馬地方調理師会