良質なタンパク質を多く含む食品として、食卓でおなじみの豆腐。もともとは冬の食べ物であることをご存じでしょうか。主に秋から冬にとれる大豆を貯蔵して余分な水分を飛ばした新豆で作る1~2月が豆腐の旬。昔から豆腐が欠かせない精進料理の専門家に、豆腐の美味しいいただき方を伺いました。

豆腐はその昔、中国より僧侶によって日本に伝えられ、お寺で作られていた歴史があります。そのため精進料理においては中心的な食材で、日本の豆腐料理はお寺で発達したといっても過言ではありません。
豆腐は後に作り方を知る人々によって製造・販売されるようになり、庶民に普及したのは江戸時代から。それは、豆腐の淡泊な風味と滑らかな口当たりが日本人の嗜好(しこう)に合っていたことに加え、しょうゆや味噌が流通するようになったことも、豆腐が広く親しまれた大きな理由でしょう。

畑の肉ともいわれる大豆を加工して作る豆腐は、植物由来のタンパク質と脂質を豊かに含む栄養価の高い食品。大豆のタンパク質には、体の中で作り出すことができない必須アミノ酸がバランス良く含まれています。
また、繊維質の少ない豆乳を固めているので消化・吸収が良く、胃腸にやさしい点も見逃せません。カルシウムやカリウム、ビタミンEなども含まれており、豆腐を使った精進料理は、健康づくりを支える理想的な献立の一つといえるかもしれません。

豆腐をそのまま鍋に入れていただく冬の湯豆腐は格別ですが、煮物や焼き物、揚げ物などを作る時、お寺では豆腐をしめて(水気を絞って)から使う伝統があります。崩れにくく、深いコクが出るので、料理の幅が広がり、豆腐とは思えない食感が楽しめます。
この冬、ご家庭でもぜひお試しください。