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食のちから 体を養い心を磨く 第12回:鰹のたたき

食のちから 体を養い心を磨く

取材協力/高知県東京事務所

土佐が生んだ知恵と技

江戸っ子が競って食べたという初鰹。
代表的な料理といえば「鰹のたたき」で、
発祥の地にちなみ「土佐造り」とも呼ばれます。
表面だけをさっと焼き上げる独特な手法は、
より安全に、美味しく食べるための知恵。
にんにくなどのスタミナ野菜を
たっぷり添えていただく豪快な料理には、
夏を元気に迎える健康パワーが詰まっています。

きっかけは生食禁止令?土佐人の工夫が生んだ調理法

 一本釣り漁法で知られる高知県土佐湾沖。春と秋には回遊してきた鰹漁で賑わいます。
 4~5月の春鰹はさっぱりとした風味と檜のような香りが特徴。江戸の昔から庶民に人気が高く、初物を食べると寿命が延びるともいわれていたようです。ただ、鰹は鮮度が落ちやすいといわれていますので、当時は刺し身で食中毒になる人が多く、生食が禁止されていました。それでも生の鰹を食べたい土佐の人々は、役人の目をごまかすために表面だけを炙り、焼き魚に見せかけて食べたのが「鰹のたたき」の始まりといわれています。
 ほかにも、漁師が船上で炙って塩や酢をたたきつけて食べた、家のたたき(土間)でワラで焼いたなど、その起源には諸説あるようですが、いずれにしても窮余の策から生まれたこの食べ方は、実に理にかなった調理法であったのです。

表面を炙ることで安全で美味しい料理に

 火力の強いワラの炎で炙ることで、表面が殺菌されるとともに、硬い皮が香ばしく燻されて、独特の風味が生まれます。また熱によって、皮と身との間にある脂が全体に程良くまわり、コクのある美味しさになります。
 鰹は栄養的にも優れた魚で、良質のタンパク質、ビタミンB12や鉄分、ビタミンDやビタミンB1、EPAやDHAなど、健康に大切な栄養成分が多く含まれています。
 さらに、薬味になるにんにくや玉ねぎに含まれるにおい成分にも、健康に大切な栄養成分が含まれていて、夏を待つ体にはうってつけの料理といえるでしょう。
 見た目も豪爽。黒潮の恵みと土佐の人々の知恵が生んだ「鰹のたたき」を味わってみませんか。

今月のレシピ

薬味をたっぷりと添えるのが土佐流 鰹は身の色が鮮やかで弾力があるものを。焼く時は香りのあるワラを使うのが伝統的な方法ですが、ガスの火でも十分です。ここでは土佐に伝わる昔ながらの作り方をご紹介します。

鰹のたたき

材料(4人分)

鰹の身・・・400g
ゆず酢・・・大さじ2
二杯酢・・・大さじ2~3
・・・大さじ1/2
二杯酢(仕上げ用)・・・適量
きゅうり・・・1本
玉ねぎ・・・1/2個
みょうが・・・1本
万能ねぎ・・・5本
にんにく・・・2片
大葉・・・10枚

※ゆず酢はゆずの絞り汁で代用できます。
※二杯酢は、酢3:しょうゆ2の割合が目安です。

作り方

  • 1.きゅうり、玉ねぎは薄切りにして、水洗いする。
  • 2.万能ねぎは小口切りに、大葉は薬味用に6枚を5mm幅に切り、にんにくとみょうがは薄切りにする。
  • 3.鰹の身は金串を刺すか網にのせて、皮の方から強火で三面を焼く。
  • 4.3を平造りにして、ゆず酢と塩を均等にふって包丁の腹か手のひらで軽くたたく。さらに二杯酢を平均にふって軽くたたき、味をなじませる。
  • 5.器にきゅうり、玉ねぎ、残りの大葉を敷いて、4のたたきを盛り、他の薬味を添えて二杯酢をかけまわす。

ポイント

  • 鰹は二分焼きで、八分が生で残る程度に焼きます。皮と血合いの側は少し強めに火を入れます。
  • 昔の作り方は、焼いたあと氷水に入れずにそのまま切ります。
  • お好みで、薬味にしょうが、木の芽、大根、りゅうきゅう(はすいも)などを加えても、美味しくいただけます。

鰹と漁師との真剣勝負!豪快な土佐伝統の一本釣り

 高知県黒潮町佐賀は県内屈指の一本釣り漁の中心地です。近年の鰹漁は網漁が主流ですが、網の中で鰹同士がぶつかり身が崩れやすいため、今でも伝統の一本釣りにこだわります。鰹の群れに竿を投げ入れ、次々に引き上げられた鰹が空に舞い踊る様子はまさに壮観です。
 鰹でも血合いが多いものや小型の宗田鰹は、生食よりも鰹節にすると本領を発揮します。宗田鰹を原料とした宗田節の生産量は土佐清水市が日本一。江戸時代からの節作り加工技術で和食文化を支えています。

©土佐のカツオ漁業史編纂事務局