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食のちから 体を養い心を磨く 第19回:かぶらずし

食のちから 体を養い心を磨く

監修

新澤祥恵(にいざわよしえ)先生[北陸学院大学短期大学部教授]

専門は調理学、調理学実習、基礎栄養学、健康と食生活、食文化と郷土食など。管理栄養士、健康運動指導士の資格をもち、いしかわ食育推進委員会委員、いしかわ健康学講座企画推進委員、金沢市の農産物加工調理研究会会長、農林振興協議会委員としても活躍中。

協力/石川県農業総合センター 石川県東京事務所

麹が引き出す、旨みと栄養

加賀地方の正月に欠かせない「かぶらずし」。
寒さとともに旨みを増した
蕪(かぶら)と寒鰤(かんぶり)が
麹(こうじ)の乳酸発酵によって
まろやかに溶け合い、
独特の風味を醸します。
その一切れには、旨みと栄養をさらに高める
先人の知恵と歴史が込められています。

麹が醸し出す蕪と鰤の芳醇な風味

 かぶらずしは、「食べないと正月が来た気がしない」と言われるほど、石川県で親しまれる伝統料理です。
 塩漬けにした蕪の間に鰤をはさみ、発酵した麹とごはんとを一緒に漬け込む「本漬け」作業は、年の暮れの風物詩。重石(おもし)をして1週間から2週間発酵させると、真っ白な霰(あられ)のような麹をまとった蕪の間から、ほんのりと薄桃色の鰤が溶けのぞき、正月にふさわしい彩りに仕上がります。
 かぶらずしの魅力は、麹によって醸される芳醇な味わい。桶の中では、麹が鰤の生臭さを取りながら、身肉のタンパク質をアミノ酸の旨みに変え、麹発酵による乳酸菌が蕪にまろやかな甘みと酸味を加えます。ただし、発酵が足りないと旨みが出ず、進み過ぎるとすっぱくなるため、漬け込みには大変気を配ります。
 その絶妙な味は、家庭によって千差万別。うまくできた時には、大みそかに親せきや隣近所へ配ることも多く、あちこちから寄せられたかぶらずしを食べ比べるのも、楽しみの一つです。

厳しい風土と先人の知恵が育んだ発酵食品の傑作

 かぶらずしが誕生したのは、江戸時代だったといわれます。近海では鰤漁が盛んで、あがった鰤は塩漬けにして運ばれてきました。北陸の冬は深い雪に閉ざされます。その前に、貴重なタンパク源の鰤と、ビタミンを補う地物の蕪を麹と一緒に漬け込み、厳しい季節を乗り切る糧としたのでしょう。海と山の幸に発酵という自然のちからを加えることで、美味しさと保存性を高めたところに、雪国に生きる先人たちの叡智(えいち)がうかがえます。
 栄養面においても、かぶらずしは大変優れた発酵食品です。乳酸菌、アミノ酸、DHA、EPAがしっかり摂れるので、現代の食卓においても見直したい伝統料理の一つといえるでしょう。
 薄桃色になった鰤と真っ白な蕪との華やかな色合いがお祝いの気持ちを込めた一皿に。下準備に少し手間はかかりますが、身近な材料で作ることができますので、この機会にご家庭でお試しになってみてはいかがでしょうか。

加賀伝統の上品な味わい かぶらずしの作り方

美味しいかぶらずしを作るには、本漬け前の下準備が大切です。鰤は脂がのったものを選び、最初にしっかり塩をなじませるのがポイント。約1カ月前後かかりますが、本漬けから逆算し、下準備にとりかかりましょう。

材料(10枚分)

鰤(さく取りしたもの) ・・・500g
天然塩 ・・・適宜
・・・5個
天然塩 ・・・蕪の重量の3~5%
・・・約900g
ごはん ・・・2合分
熱湯 ・・・1カップ

本漬け用

・・・適宜
にんじん ・・・50g
唐辛子 ・・・1~2本
柚子皮(千切り) ・・・適宜
昆布(戻したもの) ・・・適宜

作り方

下準備

  • 1.鰤を塩の中に埋めるようにして2~3週間漬け込む。
  • 2.蕪は横半分に割り、さらに横に7~8分目まで切り目を入れ、重量の3~5%の塩で7~10日漬け込む。
  • 3.炊き上がったごはんに、麹と熱湯を混ぜ合わせ、10時間くらい保温(50度前後)しながら発酵させる。

※塩漬けの期間は、お好みで調整してください。

本漬け

  • 1.塩漬けした鰤を5mmの厚さに切り、下準備で漬けておいた塩に戻し一晩おく。
  • 2.1の鰤をさっと水であらい、酢に1時間くらい漬けておく。
  • 3.水気を切った蕪の切れ目に2の鰤をはさむ。
  • 4.発酵させた麹とごはんを、桶の底に少し敷き、さらに3と交互に重ね、にんじんの千切りと小口切りにした唐辛子、柚子皮の千切りを散らす。これを繰り返し、最後に昆布の細切りをのせる。
  • 5.4に落とし蓋をして重石をし、冷蔵庫か5℃前後の場所で1~2週間漬け込む。

※ 試食して、蕪の塩辛さがなくなれば、できあがりの目安です。
※ 本漬けは、漬物容器などでも可能です。