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食のちから 体を養い心を磨く 第21回:蕗味噌

食のちから 体を養い心を磨く

指導・監修

西井郁(にしい あや)先生

16歳で渡仏、フランス家庭料理や製菓技術を学ぶ。1983年に帰国後、フランス家庭料理教室を主宰し、料理やハーブ関連の本を執筆。1993年に東京都小金井市の尼寺「三光院」の住職に師事。現在、竹之御所流精進料理の後継者としてテレビや料理教室で精進料理の普及に努めるとともに、フランス料理研究家としても活躍中。

早春の芽吹きのエネルギーを封印

雪解けとともに大地から顔を出す
「蕗の薹(ふきのとう)」。
春一番を告げる薄緑色のうれしい使者です。
その生命力と香りを閉じ込めた「蕗味噌」は、
旬を大切にする精進料理には欠かせない一品。
食卓を彩る“野山の精”が、
春の体を元気に目覚めさせてくれます。

春を連れてくる喜びの食材

 頬にあたる風がやわらかく感じられると、いよいよ春の到来。山野では木々が芽吹き、生命の営みが始まりますが、土の中から真っ先に顔を出すのが「蕗の薹」です。四季折々の野菜や山菜を食材とする精進料理においては、待ちに待った自然からの贈り物。初々しい若緑の蕾(つぼみ)に出会うことは、春一番の喜びです。
 特に摘みたての蕗の薹が放つ独特の香りには、寒さに耐えて土を突き抜けるたくましいエネルギーが感じられ、大地の生命力を体にいただく喜びとありがたさを実感します。

春の体に役立つ独特の香りと苦み

 蕗の薹の魅力といえば、野趣あふれる香りとほろ苦さ。昔から「苦みのある旬の山菜を食べれば、冬の間に溜まった、体に不要なものが出る」ともいわれますが、先人たちはこうした自然がくれる恵みによって健康を養い、季節の体調管理に役立ててきたのでしょう。
 さっと洗い、細かく刻んだものをそのままご飯に散らしたり、味噌汁に放っただけでも、早春の息吹がいっぱいに広がります。また、 山菜独特のえぐみは、油や味噌とよく合います。天ぷらはその代表ですが、手軽に作れて蕗の薹の滋味が存分に味わえるのが「蕗味噌」です。

洋風の料理に使うと力強いアクセントに

 味噌によって蕗の苦みがまろやかになり、ご飯によし、酒肴(しゅこう)によし。焼き味噌にしたり、おにぎりに塗って焼くと、芳醇な香りに食が進みます。
 しばらく保存が利くので、春を演出する薬味としても重宝。精進料理では、おでん豆腐や生湯葉の上にのせて供します。
 また蕗味噌の意外な魅力は、バターやチーズ、オリーブオイルなどにも良く合うことです。チーズと一緒にクラッカーにのせてカナッペにしたり、パスタやステーキのソースなどに使うと、野生の風味がいいアクセントになり、新しい美味しさが発見できるでしょう。この春、ぜひお試しください。

「蕗味噌」の作り方 材料は、蕗の薹、味噌、お酒というシンプルな料理ですが、味噌と酒が蕗の苦みを程良く和らげて、深い味わいです。

材料

蕗の薹 ・・・2~3個 ・・・大さじ2
味噌 ・・・大さじ3 ・・・適宜

作り方

  • 1.鍋にお湯を沸かし、塩(お湯1Lにつき、小さじ2程度)を入れ、蕗の薹をさっと茹でる。鮮やかな緑色になったら 冷水にとり、1~2時間さらす。
  • 2.鍋に味噌と酒を入れて弱火にかけ、アルコール分を飛ばすようにしてよく練り、火からおろす。
  • 3.2が冷めたら、1の水気をしぼり、粗くみじん切りにして加え、よく和える。

※味噌はお好きな種類のもので。辛いタイプの味噌に合わせる場合には、お好みでみりんや砂糖を加えてください。

後をひく芳香は洋風のメニューとも好相性 蕗味噌の簡単オリジナル料理

「蕗味噌パスタ」

  • 1.海水程度の塩加減でスパゲッティ(1人分80~100gが目安)を茹でる。茹で上がったらざるにあげる。
  • 2.水気が若干残る鍋にバターとおろしにんにく少々を加え、強火で軽く炒め、 香りがたったら火を止める。
  • 3.21のスパゲッティ、お好みの分量の蕗味噌を加え、軽く和えたら皿に盛り、あつあつをいただく。

「蕗の薹マッシュポテト」

  • 1.じゃがいもは皮付きのまま茹で、熱いうちに皮をむいて裏ごしする。
  • 2.1に牛乳、バター、お好みの分量の蕗味噌を加え、木べらでよく混ぜ合わせればできあがり。
  • ※分量は、じゃがいも400gに対して牛乳1/2カップ、バター大さじ1/2が目安ですが、お好みでご調整ください。
  • ※茹でたじゃがいもに、十字に切れ目を入れてバターと蕗味噌をのせても、美味しくいただけます。