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食のちから 体を養い心を磨く 第23回:柏餅

食のちから 体を養い心を磨く

監修

永山久夫(ながやま ひさお)先生

1932年生まれ。食文化史研究家。西武文理大学客員教授、綜合長寿食研究所所長。古代から明治時代までの食事復元に携わる食文化研究の第一人者。長寿食や健脳食の研究者でもあり、長寿村の食生活の調査やテレビ・ラジオ、講演などでも活躍中。著書に『日本人は何を食べてきたのか』(青春出版社)、『長寿食 365日』(角川学芸出版)、『明日はもっと元気 雑穀のちから』(一二三書房)ほか多数。

子孫繁栄と健康増進の願いを込めて

「端午の節句」に欠かせない柏餅。
柏は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから、
子どもの葉が育つまで親の葉は離れず見守る
「子孫繁栄の縁起物」として
広まったといわれます。
柏の葉のすがすがしい香りを
まとった行事食には、
子どもの成長を願う親の愛情と
自然のちからを生かした
食の知恵が詰まっています。

原型は兜(かぶと)形の魔除けの古代菓子

 子どもの成長を祝う「端午の節句」。しかし古代中国では、旧暦の5月は高温多湿の盛夏で、伝染病なども多く、抵抗力の弱い子どもは最も用心しなければならない月でした。そのため、魔除けのちからがあるといわれる菖蒲(しょうぶ)を身につけたり、米の粉を水で練って油で揚げた兜形の菓子を食べて邪気払いをしました。
 兜は戦う時の防具であり、病気を防ぐとか、病気に勝つという意味があり、兜形の菓子はのちに日本に伝わり、柏餅のルーツになったといわれています。

葉に宿る清浄な香りとちからをいただく

 柏の葉で餅を包むというスタイルは、縄文時代以来の日本の伝統的な調理法です。
 ほど良い大きさで殺菌作用もある柏の葉は、食器や蒸す時の器として重宝されました。宮中ではその使い手である料理人は「かしわで(膳夫)」と呼ばれ、また、神社で両手を打つ「柏手」は、清めた手のひらを柏の葉に見立てたともいわれます。柏餅の中身も、両手で包み込むように、あんを生地で挟むのが本来の作り方です。その折り目には、子どもの健康と成長を祈る母親の気持ちが込められています。
 さらに、柏の葉と餅を一緒に蒸すことで、すがすがしい香りが餅に移り、葉はそのまま保湿と防菌を兼ねた天然のラップになります。柏という身近な植物が従来持っているちからを生かした、先人の素晴らしい知恵といえるでしょう。

今こそ見直したい初夏を乗り切る行事食

 栄養学的に見ても、理にかなった食品です。餅は炭水化物が豊富で、あんの小豆には、炭水化物をエネルギーに換える時に必要なビタミンB1が多く含まれています。さらに、小豆にはアントシアニンが豊富に含まれています。
 自家製の柏餅の香りはまた格別。ぜひ、ご家庭で作ってみませんか。

爽やかな葉の香りが初夏を呼ぶ 家庭で作る行事食の定番

柏餅は、かつてはどこの家庭でも自分の家で作る行事食でした。葉を集めるのはおもに子どもの役目。木登りして採った思い出のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

各家庭でそれぞれの味が

生地は上新粉(うるち米の粉)をお湯で練って作りますが、よもぎの葉をすり込んで「草餅」にする家庭もあります。あんは小豆のつぶあんやこしあんのほか、白みそに砂糖を加えたみそあんもよく使われます。生地であんを挟み、柏の葉で包んで蒸せばできあがり。

残った柏餅は焼くと美味

時間が経って硬くなった柏餅は、葉をはがしてオーブントースターであぶると、また格別の美味しさ。はがす時に餅にくっついて残った葉も香ばしいです。

器としても活用したい柏の葉

大きくて香りの良い柏の葉は、殺菌作用がある上に見た目も涼しげ。食器としてホームパーティーなどで使うと、初夏らしい演出になります。

つぶあんで作る「柏餅」

材料(14個分)

上新粉
(お好みで、上新粉ともち米の粉を、3対1でブレンドしてもよい)
・・・400g
お湯 ・・・約250cc
小豆つぶあん ・・・300g
柏の葉 ・・・14枚

作り方

  • 1ボウルに上新粉を入れ、お湯を加えて、耳たぶくらいの柔らかさに練る。
  • 21の生地をちぎって手のひらくらいの楕円形に整える。
  • 3生地の中心にあんをのせ、挟んで編み笠状の形にする。
  • 43を柏の葉で包み、蒸気の上がった蒸し器で20分ほど蒸す。
    葉の色が茶色に退色していれば、葉の爽やかな風味が餅に移った証拠です。