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食のちから 体を養い心を磨く 第31回:海老芋と棒鱈を炊く

食のちから 体を養い心を磨く

監修

杉本節子(すぎもとせつこ)先生

料理研究家、エッセイスト、(財)奈良屋記念杉本家保存会事務局長。テレビの料理番組や新聞・雑誌の連載、講演などで活躍中。平成21年京都府あけぼの賞受賞。平成23年1~3月京都造形芸術大学東京芸術学舎「京都杉本家の暮らしと食」特別講座講師。著書に『京町家・杉本家の献立帖』(小学館)、『京のおばんざいと野菜料理』(学研パブリッシング)など多数。

海老芋と棒鱈の炊き合わせは、
京都では昔からお馴染みのご馳走。
北海の乾物と京野菜が互いの持ち味を相乗させた
独特の美味しさは、まさに“出会いもん”の妙味。
京都の知恵と技術が生んだこのお料理の魅力を、
京町家の食文化に詳しい
杉本節子先生に伺いました。

北の乾物と京の伝統野菜 古都ならではの出会いの妙

 棒鱈(ぼうだら)とは、真鱈を三枚におろし塩をしない状態で固く乾燥させた乾物のこと。北海道の名産品ですが、最大の消費地は京都。江戸時代には北前船で運ばれてきました。
 「京都は海から遠く、かつては鮮魚に恵まれん土地でした。そうした歴史的な背景から、棒鱈に代表される魚介の乾物を使うた料理は、京都らしい調理法として今日まで伝えられてきました。中でも、京都人に身近な伝統野菜の海老芋と棒鱈の炊き合わせは、冬を代表するご馳走の定番です。」(杉本先生)

棒鱈はじっくり戻し、臭みを消し旨みを引き出す

 かちんかちんに乾し上げた棒鱈は、炊く前に1週間から10日ほどかけて水でじっくり戻します。戻し水が生臭いにおいを放ちますが、それもほっくりとした美味しさを、家族やお客様に味わってほしいからこそのひと手間です。
 師走になると乾物屋さんの店先に積まれる棒鱈は、京都の冬の風物詩。近年は、現代の台所事情を考慮し、水戻しした棒鱈を使いやすい大きさに切って売るお店もあります。

海老芋と炊くことで花開く 棒鱈の奥深い滋味

 海老芋と戻した棒鱈は、たっぷりの煮汁でゆるゆると煮含ませます。棒鱈から出る膠(にかわ)質が海老芋の煮崩れを防ぎ、海老芋から出る灰汁(あく)には棒鱈を柔らかくする性質があり、その相乗効果がほかにない絶妙の滋味を醸し出してくれます。
 「炊いて冷まし、また炊いて冷ますことを数日繰り返しながら味を含ませるのが昔ながらの作り方。文字通り棒のように固く乾し上げられた魚は、このくらいじっくりと気長に構えて調理してこそ、封じ込められた奥深い味わいに出会えるものやと思います。」(杉本先生)
 新しい年の良き出会いを願い、「海老芋と棒鱈の炊き合わせ」を、食卓に加えてみませんか。

たっぷりのだしで煮詰めるのがコツ 海老芋と棒鱈の炊き合わせ 棒鱈は、常に煮汁にたっぷりつかる分量のだしで、ゆっくり煮含めましょう。一旦冷ますことで、芯まで旨みがしみ込みます。

材料(4~5人分)

棒鱈(水戻ししたもの)* ・・・約600g
海老芋 ・・・約400g(3~4個)
米のとぎ汁 ・・・適宜
だし ・・・800cc
・・・100cc
砂糖 ・・・大さじ6
みりん ・・・大さじ2
しょうゆ ・・・大さじ3
うす口しょうゆ ・・・大さじ1
柚子の皮 ・・・適宜

*乾物の棒鱈を戻す場合は、たっぷりの水につけ、1週間から10日水を替えながら十分に戻します。食べやすい大きさに切り、番茶で30分下茹でし、水でさらしてうろこなどを取り除いてから使います。

※海老芋は里芋(約240g)を代用しても美味しくできあがります。

作り方

  • 1海老芋は泥を水洗いし、皮をむく。米のとぎ汁で竹串がすっと通るくらいの柔らかさに茹で、水でさっと洗う。
  • 2鍋に、水で戻した棒鱈、酒、だしを入れ中火で煮る。煮立ってきたら灰汁を丁寧に取り除き、棒鱈が踊らないよう弱火で1時間煮る。
  • 3砂糖を加えさらに1時間煮たら、みりん、しょうゆ、うす口しょうゆを加え1時間煮る。途中煮汁が少なくなってきたら水を補う。
  • 4海老芋を加え30分煮る。一旦冷ましてからもう一度弱火で1時間煮るとさらに味が深まる。仕上げにきざんだ柚子の皮を添える。

身欠きニシンの炊き合わせもおすすめ 魚の乾物は海老芋や里芋と相性が良く、棒鱈の代わりに身欠きニシンを使っても、美味しい炊き合わせになります。身欠きニシン(3枚)は、米のとぎ汁に1晩つけて戻し、番茶で30分下茹でします。食べやすい大きさに切り、下茹でした同分量の海老芋(または里芋)、だしと調味料(棒鱈で作る場合の2/3の量)で煮含めるとできあがりです。