• メールで送る

食のちから 体を養い心を磨く 第32回:じゃっぱ汁

食のちから 体を養い心を磨く

監修

千葉彩子(ちばさいこ)先生

郷土料理研究家、栄養士。昭和7年生まれ。青森県立中央病院運営審議会委員、青森市社会教育委員などを歴任。料理教室講師の傍ら、テレビの料理番組や新聞、雑誌、料理コンクールの審査員、講演などで活躍中。著書に『あおもりの春夏秋冬 郷土の料理』(東奥日報社)などがある。

旬の真鱈を余すところなく食べ尽くす

「じゃっぱ」とは、残り物の雑端を意味する
津軽弁です。
じゃっぱ汁は、冬に獲れる真鱈の頭部や中骨、
内臓などをぶつ切りにして、野菜とともに
味噌仕立てにしたものです。
煮込むほど、大量のじゃっぱから
濃厚な旨みがしみ出し、栄養もたっぷり。
凍(し)ばれる夜には
特にうれしい郷土料理について、
料理研究家の千葉彩子先生に伺いました。

陸奥(むつ)湾に揚がる真鱈は庶民の冬のごちそう

 魚偏に雪と書いて鱈(たら)。文字通り雪とともに津軽海峡に回遊してくる真鱈は、古くから冬の青森を代表する味覚です。特に、陸奥湾に面した脇野沢(わきのさわ)の港に揚がる真鱈は上物とされ、江戸時代には毎年一万本以上も揚がったとも伝えられています。
 津軽海峡の荒波にもまれて身が締まり、脂が乗った真鱈は、昆布でしめて刺身にしたり、塩焼きにしたり、味噌漬にして焼いても美味。
 「一般の家庭でも、大きな真鱈を一本丸ごと買ってさばき、正月の料理一式を作るという習慣が残っている地域も多くあります」(千葉先生)

新鮮なアラと内臓からしみ出る深い滋味

 真鱈の身をおろした後には、頭、えら、中骨など大量の「じゃっぱ」が出ます。これらを煮込んだ「じゃっぱ汁」は、いわゆるアラ汁ですが、鍋からあふれんばかりの量のアラからは豊かなコクと旨みが溶け出し、地元では身肉を使った鍋より旨いといわれています。
 「じゃっぱ汁の美味しさを決めるのは、一にも二にも魚の鮮度。特に重要なのが鱈の肝で、味わいにコクと厚みを加えます。津軽には“雪道と鱈汁は、後ほどいい”ということわざがあり、ゆっくりと煮込むほど美味しくなります。
 こうして昔から津軽の人たちは、頭も骨も内臓も、一本を丸ごと食べ尽くすことで、真鱈の生命力や栄養まですべてを体におさめて、冬を乗りきるエネルギーにしてきたのでしょう」(千葉先生)

凍ばれる夜に欠かせないスタミナ鍋

 魚と野菜の栄養とエキスがたっぷり溶け込んだ「じゃっぱ汁」は、見た目にもスタミナ満点。あつあつをふうふう吹きながら食べれば、体の芯から温まってきます。津軽の冬に欠かせない郷土の味ですが、海に囲まれた日本にはそれぞれの土地で獲れる美味しい冬の魚がたくさんあります。真鱈以外でも新鮮な魚のアラが手に入った時は「じゃっぱ汁」をぜひ作ってみませんか。

津軽の冬に欠かせない 鱈のじゃっぱ汁

材料(4人分)

鱈のアラ ・・・1kg~
鱈の肝 ・・・50g~
・・・大さじ2
だし汁 ・・・10カップ
大根 ・・・1/3本(約600g)
にんじん ・・・1本(約200g)
長ねぎ ・・・1本
赤味噌 ・・・適宜

作り方

  • 1新鮮な鱈のアラは大きめに切り、塩を振り混ぜたら、ざるに入れて約1時間冷蔵庫に入れる。肝は一口大に切り、湯通ししておく。
  • 2大根とにんじんは皮をむいて大きめのそぎ切りにして、堅めに茹で、たっぷりのだし汁と煮る。
  • 31のアラを流水で洗い、熱湯を通し、色が変わったらすぐにあげる。
  • 4アラと肝を2の鍋に入れて強火にかけ、煮立ったら中火以下で静かにゆっくりと煮る。
  • 5赤味噌を溶かして加え、味噌汁ほどの味に仕立て、斜め切りにした長ねぎを加える。

※ お好みで酒粕や、鱈の白子を加えると、よりコクが増します。
※ 野菜は、じゃがいもや白菜を加える家庭や地域もあります。

冬の鱈のもう一つの楽しみ「白子」

鱈の内臓で比較的手に入りやすいのが白子。クリーミーなコクと食感は、寒の時季ならではの楽しみです。鍋物に入れたり、茹でてポン酢でいただくのが定番ですが、軽くソテーするとまた新しい美味しさに。白ワインにもぴったりの一品をご紹介します。

白子のカレーバター焼き

白子(約150g)は一口大に切り、水気をペーパータオルでふき、塩とおろしにんにく少々、カレー粉小さじ1をかけたら、全体に小麦粉をまぶす。フライパンに油小さじ1とバター大さじ2を溶かし、白子を入れて両面をこんがりと焼く。レモン汁としょうゆ少々をかけて、あつあつをいただく。