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食のちから 体を養い心を磨く 第43回:身欠きニシンの三五八(さごはち)漬け

食のちから 体を養い心を磨く

監修

平出 美穂子(ひらいで みほこ)先生

郡山女子大学准教授。管理栄養士。福島県立会津大学短期大学部食物栄養科卒業後、県立会津総合病院勤務、会津大学短期大学部非常勤講師を経て現職。福島の食文化研究家として、『会津の年中行事と食べ物』『会津の郷土料理』(ともに歴史春秋出版)などの著書がある。

かつて春になると、北海道の沿岸に
ニシンの群れが大量に姿を現したことから、
“春告魚(はるつげうお)”とも呼ばれるニシン。
獲れたニシンは、頭と内臓を取り除いて干した
“身欠きニシン”に加工され、
日本各地に出荷されていました。
海から離れた会津地方も身欠きニシンが
もたらされた地域で、
今もニシンを使った郷土料理が
数多く伝えられています。

DHA・EPAを含む北の海からの贈り物

 ニシンは、高脂肪、高タンパクの魚で、DHAやEPAなどの良質なオメガ3系脂肪酸(不飽和脂肪酸)を含んでいます。
 冷蔵技術が発達していない時代には、干して保存性を高めた身欠きニシンが、日本各地にもたらされました。身欠きニシンは生よりも脂質、タンパク質、カルシウム、ビタミンDなども上まわり、貴重な栄養源として重宝されてきました。

食べ物を無駄にしない 米どころならではの知恵

 四方を山に囲まれ、冬は雪に閉ざされる福島県会津地方も、身欠きニシンを日々の食生活に役立ててきた地域の一つです。昔は北の海の産物が、北前船で日本海に面した新潟に渡り、そこからさらに川を上って運ばれてきました。流通網の発達した現在でも、山椒漬けや味噌煮、含め煮、天ぷらなど、身欠きニシンを使った多彩な郷土料理が伝承されています。
 なかでもユニークなのは、塩、麹(こうじ)、米をそれぞれ3対5対8の割合で混ぜ発酵させた漬け床に、身欠きニシンや旬の野菜を漬けて食べる“三五八漬け”です。精米時に出るくず米などを美味しく食べる方法はないかと考え、酒造りなどの手法からヒントを得て生まれた麹漬けの一つです。冷害や凶作に備えて食べ物を無駄にせず、一年を通じ賢く利用するための、米どころならではの食の知恵でもありました。

発酵のちからで増す旨みと栄養価

 麹の発酵作用によって醸し出されるまろみと甘みが、三五八漬けの特徴です。栄養価的にも、発酵によって身欠きニシンに含まれているタンパク質は必須アミノ酸に変化して、旨みを増すばかり。米のでんぷんは脳のエネルギー源として欠かせないブドウ糖に、また麹菌が繁殖する際には、ビタミンB1、B2、B3などを作り出します。
 北の海で獲れた青魚の栄養成分に、優れた発酵のちからが加わった身欠きニシンの三五八漬け。漬け床は魚だけでなく野菜も美味しくいただけますので、ご家庭でも試してみませんか。

会津地方の郷土料理 身欠きニシンの三五八漬けの作り方 漬け床は、現代では塩分を少し控えめにして、塩、麹、米を2:5:8くらいの割合で作るとよいでしょう。

材料(4人分)

米(もち米) ・・・2カップ
・・・2カップ
・・・1/2カップ
身欠きニシン
(半生干し)
・・・4本

漬け床を作る

  • 1米は洗い、1.3倍くらいの水(分量外)でやわらかめに炊く。
  • 21を冷まし、人肌くらいになったら、ほぐした麹を加えよくかき混ぜる。
  • 3炊飯器を保温状態にして内釜に2を入れ、内釜の口をぬれ布巾で覆い、蓋はせず6時間くらい置く。
  • 43に塩を入れ混ぜ合わせ、蓋付きの容器に移して冷暗所で1~2日置く。

※麹から作られた市販の甘酒100ccに対し、塩5~9gを混ぜて即席の漬け床を作ることもできます。

※余った漬け床は、冷蔵庫で数カ月から半年程度保存できます。

身欠きニシンを漬ける

  • 1漬け床とは別の容器で、身欠きニシンと漬け床大さじ4程度をよくからめ、軽く重石をして冷暗所で2~3日漬ける。
  • 2ニシンの漬け床をこそげ落とし、網かフライパンで軽く火を通す。

※本干しの身欠きニシンをご使用の場合

・米のとぎ汁に一晩浸し、水気をよく拭き取ってから5日間ほど漬けます。

・そのままでも軽く炙ってもお好みでお召し上がりください。

※塩サバなどでも美味しくいただけますが、生魚を漬けた場合は、必ずよく火を通してお召し上がりください。

お茶請けにもぴったり 野菜の三五八漬け

キャベツやかぶ、大根、にんじん、なす、きゅうりなどの野菜は、あらかじめ食べやすいサイズに切り、漬け床とからめておけば、翌朝には食べることができます。ほのかな甘みで食欲もそそります。